世界に40ページの本は存在しません。さらにいえば45ページや48ページの本も存在しないのです。
一体どういうことでしょうか。今回は、意外と知らない「『本』の定義」について解説していきます。
本は49ページ以上と決まっている
ユネスコの定義によると「図書」(英文ではbook)とは、
図書及び定期刊行物の出版についての統計の国際化な標準化に関する勧告
図書とは、国内で出版され、かつ、公衆の利用に供される少なくとも49ページ(表紙を除く。)以上の印刷された非定期刊行物をいう。
これとは別に5ページ以上48ページ以下の出版物は小冊子(英文ではpamphlet)と定義されています。したがって、40ページのものは小冊子、つまりパンフレットにあたるわけです。ちなみに4ページ以下のものはただの折られた紙という扱いになります。
しかし、なぜ48と49で区別したのでしょう? 50や100のほうが区切りがいいようにも思えます。ユネスコでの制定の経緯は不明ですが、次のようなことが考えられます。
印刷視点では区切りが良い「48」
本は通常、1ページ単位では印刷しません。1ページずつだと、印刷する回数が増えて効率的でないからです。そこで、大きな紙に何ページかを一度に印刷し、それを折り畳んでページ順にします。この折り畳んだ紙を折丁(おりちょう)といい、表裏に16ページ印刷するものがもっとも一般的です。
48ページはこの折丁がちょうど3つ分です。そしてこの程度のページ数だと背表紙をつける「無線綴じ」よりも、パンフレットのような見た目になる「中綴じ」が丈夫で経済的です。
したがって、48ページ以下の出版物は、本というよりはパンフレットと呼ぶのがふさわしいものが多く、こういった事情を勘案してユネスコは48と49ページの間に境界線を引いたと考えられます。
比較をするには基準が必要
そもそもなぜユネスコがこんな定義をする必要があったのでしょうか? それは、統計を作成するためです。
人によってcm(センチメートル)の長さが違うと身長を比べられないように、国によって1冊の定義が違うと各国の本の数が比べられません。
実際に、ユネスコによる定義がなされる前まではデンマークでは6ページ以上、日本では100ページ以上など、国によって基準が異なり、正確な比較ができない状態でした。正確な国際比較をするためにユネスコによって本の基準が定められたのです。
何気なく手にとっている本ですが、実は基準がありました。本屋さんに行くときはページ数を見て、本かパンフレットなのか考えてみては?
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