夜道で口元をマスクなどで隠し「私……キレイ……?」と聞いてくる女性といえば、口裂け女。昔から語り継がれる恐ろしい存在なはずですが、漫画家・櫻日和鮎実(@ayuneo)さんの描く口裂け女(姐さん)の漫画では、とても親切で頼りになり、みんなのことを癒してくれるまさに姉御のような存在なのです(関連記事)。
いつもの通り夜道に立っている口裂け姐さん。通りがかった女の子を脅かそうと、マスクを取り「こ〜れ〜で〜もぉ〜?」とお決まりのセリフを言うと……「そのリップ新色のやつだ!」と女の子がリップを褒めます。そこ?
同じリップが欲しいという女の子。でも「カワイイ」を追求すると、女友達に「男ウケ狙ってる」と陰口を言われるのでためらってしまうのだとこぼします。すると口裂け姐さんは「カワイイを追求することの何が悪いってのさ! 胸張りな!」とご立腹。さらに「陰口言う奴は友達じゃないよ!」と、女の子にリップをあげるのでした。
こうして「くっちー姐!!」と口裂け姐さんのことを慕う人がまた一人。流行に敏感でカッコイイ……姐さんについて行きます!
また別の日の夜、いつものように道端を通る人に「私…綺麗?」と聞く姐さん。「何十年経っても綺麗ですよ」と答えたのは、久しぶりに会った「トイレの花子さん」でした。姐さんに相談があるという花子さん。その悩みは、最近の若い人たちは怪異を怖がる余裕もないほど切羽詰まっているのでは、というものでした。
飲み会帰りにトイレで吐いている人、ストレスでおなかが痛くなってトイレを使う人……花子さんはそんな人たちを見て若者の余裕のなさを感じていたのです。同じことを思っていたという口裂け姐さん。「景気もライフスタイルも変わったせいか昔とはストレスの量が違うわね」と振り返ります。
もう自分たちは怖がってもらえないのではないかと肩を落とす花子さんに、「時代の変化に怪異も流されて行くときが来たのかもしれない」とどこか達観したような姐さん。でも、切羽詰まった若者にも怖がる余裕ができるよう手助けする怪異がいてもいいのかも……とも優しい目で語るのでした。
その言葉に感動する花子さん。そして「すごい姉御がいる」という評判が流れていることを伝えます。「え! 私そんな広まり方してんの!? ウソでしょ!?」と評判のよさに少し焦る姐さんなのでした。
漫画を読んだ読者からは、姐さんの優しさやかっこよさだけでなく、新色リップを持っているおしゃれさにも感心するコメントが寄せられています。
世の中の不条理に苦しむ人たちの心に寄り添い、時には一緒に悲しみ怒り、そして、最終的にはしっかりと慰め、前を向かせてくれる姐さん。こんな人が近くにいたらいいのに! 他にも思わず姐さんのファンになってしまうようなお話が、Twitterのモーメントにまとめられています。
作者の櫻日和さんは著書に『パニくる!?』『天使と半ズボン』を持つ他、『フラッパー』で「生まれ変わらないでいてくれ」を連載しています。
画像提供:櫻日和鮎実(@ayuneo)さん。
櫻日和鮎実さんの書籍(Kindle Storeで配信中)
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