ネットでつながるサウナ愛 国内初&最大のサウナポータル「サウナイキタイ」はなぜ生まれ、どうサウナ人気を支えていくのか:【特集】ネットと銭湯サウナ(3/3 ページ)
「サウナ」とググると一番上に表示される、国内最大のサウナポータルサイト「サウナイキタイ」。開設1年でここまで愛用されるようになったのはなぜか、運営側の立ち上げに対する思いはどのようなものか。創案者2人への1万字インタビュー。
スマホから断絶されたサウナ室って貴重だと思うんです
――このネット社会において、ネットから遮断されたサウナの人気が高まっているのは興味深い傾向だと思うんです。そしてそのサウナの楽しみ方をまたネットが広げているという意味で、サウナイキタイって面白い存在だなぁと。そこで運営のお二人にサウナとネットのかかわりについていろいろ聞いてみたいのですが、まずは「断絶された空間」というサウナの側面に、何か思うことはありますか?
あり: 現代において、スマホから断絶されたサウナ室って貴重だと思うんです。今は、あらゆるサービスが人の感情をハックしてくれるし、隙間の時間も楽しめるようになっている。豊かであるとは思うんですけど、逆にずっとスマホを触っちゃいますよね。ぼくもTikTokとか好きでついついずっと見ちゃっています。
そうなってくると、スマホから自分を切り離して自分と向き合う時間がほしくなってきます。ぼくの場合は「今何したいんだろう」「何のために会社入っているんだろう」「サウナイキタイでやっていきたいことってなんだろう」とか、心を落ち着けて自分について考えられるのはサウナに入っているときぐらいで。汗の出方などで体調もチェックできるし、いろんな面で自分を見つめることができますね。
かぼちゃ: ぼくもサウナにスマホを持ち込めないのは面白いと思っています。今世の中のインスタ映えするものって、全て動画となってSNSで共有されるじゃないですか。それはそれでいいんですが、サウナ内で起こっていることは撮影できないから、文字や絵ぐらいでしか共有できない。
サウナ室を見て思うことって全員違っていて、文字にするときはついついその考えもアウトプットするものなので、サ活を読んでいて楽しいです。1つの施設にしても、100人いたら100通りの書き方が出る。タイミングによって同じ施設でも顔ぶれが全然違いますし。
――小杉湯の番頭の塩谷歩波さんがいろんな銭湯の内装を俯瞰的に描いている「銭湯図解」も、写真撮影できない銭湯の世界だからこそああいう風にイラスト化されるのが面白かったりするわけで。「スマホNG」がゆえに、銭湯サウナという場がいろんな文化を生んでいくのかもしれませんね。
かぼちゃ: サ活にもさらにユニークな書き手が出てきたりして(笑)。
あり: すでに「サウナ弁護士」という方がいて、毎回1000文字くらいの濃いサ活を投稿してくださっているんですよね。もはやちょっとした小説のような内容で(笑)。
かぼちゃ: 一方で全てのサウナがネットから断絶されていなければいけないかとそういうわけではなく、サウナの楽しみ方って千差万別で。瞑想にふけりたくてテレビがないサウナへ行く日もあれば、逆にテレビを見ながらボーッと考え事したい日もあります。音楽すら無いところにしようとか、もうちょっと暗いところにしようとか。
ネットから断絶されている方がいいのかそうでないかも人それぞれですが、そうしたあらゆる需要、その日の気分に応えられるほど、施設に豊富なバリエーションがあるのがサウナのまたいいところだと思うんです。そうしてその時どきの自分にあったサウナを検索できるプラットフォームとして、サウナイキタイを利用してもらえたらうれしいですね。
ネットでつながり、広げ合う、個々人のサウナライフ
――今度は、ネットとサウナについて「つながり」という側面から考えるとどうでしょう。
あり: やはりサウナに行くにしても一人だけではわからないことってとても多いので、楽しみ方を広げるという意味でネットはすごく大事だと思います。人のサ活を見ていても「ここに着目するん!?」みたいなものがたくさんある。
――印象に残っているサ活って何かありましたか。
かぼちゃ: 青森へ行ったときにとても匂いが気になるサウナ室があって、めちゃくちゃテンション下がったことがあったんです。だから自分のサ活ですごく遠回しに匂いのつらさについて書いたんですけど、1カ月後くらいに他の人がその施設についてサ活で「めっちゃいい匂いでした!」って書き込んでいるのを見つけて、驚いて。よくよく読んでみたら、ぼくが行った後にリニューアルしたみたいで、匂いも一緒に改善されていたみたいなんです。
また青森まで行ってわざわざもう1度入ることは、さすがにないかな……と思っていたんですが、その考えが改まりましたね。遠方のサウナの変化を、こうしてサ活で知れたのはありがたかったです。
あとは溶存酸素量とかpHとか、施設の水風呂のいろいろな数値を調べてひたすらサ活で書いている人とかもいますし、熱波師の作法を全部記録する人もいます。まず2回水をかけてから、2回タオルを回し……とか(笑)。
あり: そもそも「ロウリュであおぐ人のこと、熱波師って言うんだ!」と(笑)。サウナ自体がマニアックなのに、その中にロウリュというのがあり、さらには熱波師、またその中にもいろんなタイプがいて……書き込まれる情報をみて驚かされることはまだまだありますね。
――サウナワールドが、とどまることを知らない、と。
あり: あとは自分の感覚を共有できる喜びってあると思うんです。友達と一緒にサウナに入って感想を言い合うのもいいですが、一人で行ったときもその時の感覚をシェアしたくなるというか。行った後にそこのサ活を読んでみて同じようなこと言っている人がいたら「おおー!」とテンションあがるんですよね。
かぼちゃ: 茨城のちょっと遠いところに、タオルの感触がめっちゃいいサウナがあったんです。ぼくが行ったときはまだサ活がなかったので特に書きとめていなかったんですが、サ活ができたあとに誰かがこの施設について「サウナや水風呂は普通なのだけど、ここは異常にタオルの第一感触がいい」と書き込んでいるのを見つけて、「めっちゃわかるぅぅぅ!!!」と興奮しましたね。そういう細かいところで共感できるサ活を見つけたときはすごくうれしいです。
――そういうつながりを生み出してくれるのは、まさにネットの良さですよね。1年の運営を振り返って、他にもよかったことはありますか?
あり: まずは運営している自分自身が、データベースとしてこのサービスに助けられているところがあります。宮崎のかなり僻地(へきち)へ旅行したとき、サウナイキタイで検索かけてみたらすでに情報を入れてくださっている方がいて。「ここまでやってくれている人がいるんや」と胸にきました。
あとは、サウナイキタイを通して知り合った方もこの1年でかなりいましたね。
かぼちゃ: それはかなりデカいですよね。先日「アドベントカレンダー」という、特定のテーマに沿った記事をバトン形式で1人ずつアップしていく参加型企画をうちでもやったんです。サウナイキタイ自体にはわれわれのサウナ観を広めたい願望は一切ないんですが、いろいろな人のサウナ観やサウナ話が集まるのはうれしいんです。イベント時にいろんな方と知り合って、さまざまなサウナ観と出会えたのはよかったですね。
――公式のサウナ大使であり、サウナーの聖書『サ道』の漫画家である、タナカカツキさんの反応ってあったりしましたか?
あり: なんと、サウナイキタイを漫画に書いてくださったんです。
かぼちゃ: ヤマハのキャンペーンサイトで、サウナメシとバイクみたいなテーマでがっつりサウナの読み切り漫画を書いてらしたのですが、その中で「サウナイキタイで検索だ」みたいに触れてくれてくださって。
――それは熱い……!
あり: めっちゃうれしかったですね。サウナの面白さに気づいたのも『サ道』が大きかったので。
――今後の目標はいかがでしょうか。
あり: 現在有志でやっているので、開発が遅れがちなところが課題になっているんです。サウナ情報やサ活を投稿してくれた人に抽選でグッズをプレゼントしたりする「トントゥ」というサービスを開発中なのですが、9月半ばには始めようと思っていたのにまだ出せていない状況で……。サウナイキタイにもっと時間を割けるようにしたいです。
かぼちゃ: あとは「サウナイキタイマガジン」などサウナ好きのためのサービスを打ち出しているのですが、今のところディープな情報ばかりなんです。サウナサイトなのに、サウナの入り方の例さえ載っていないような状況で(笑)。なのでもっと初心者向け、サウナ人口を増やせるようなコンテンツも充実させていきたいですね。
あり: もちろん並行してサウナ好きの方々にいろんなコンテンツを依頼しながら、深くサウナ愛を掘り下げてもらえるサイトにもしていきたいです。
かぼちゃ: オープンなプラットフォームなのでトラブルも発生する可能性があるのですが、利用者のみなさんが本当に応援してくれるので……モチベーションはいつも最高のまま運営させてもらっています。2年目も多くのサウナーたちのサウナライフを支えていきたいです。<了>
(聞き手・構成:黒木貴啓)
サウナイキタイあり&かぼちゃ 推しサウナ3選
あり 推しサウナ
- 「神戸サウナ&スパ」(兵庫・三宮)
サービスのレベルが異次元。20分に1回のロウリュ、2種類のサウナ・水風呂、異常に充実している使い放題のアメニティー類など挙げればきりがありません。サウナ室にトントゥがいたりサウナ愛もあふれる大好きな施設です。地元なので帰るときは絶対行っています。
- 「タイムズスパ・レスタ」(東京・東池袋)
浴室ゾーンが暗くて落ち着いていて、心を落ち着けてゆったりするのに最高。浴室ゾーンのデッキチェアは座るところが凹んでいて身体をあずけてリラックスするのに最高の形をしてます笑 平日の夜、仕事帰りに寄りたくなるサウナです。
- 「武蔵小山温泉 清水湯」(東京・品川)
銭湯価格で、2種類の温泉、サウナ、黒湯の水風呂、外気浴スペースを楽しめる充実しすぎな銭湯。好きすぎて近くに引っ越しました。2Fに休憩できる畳スペースもありサウナ上がりにゴロゴロするのが最高です。
かぼちゃ 推しサウナ
- 「大垣サウナ」(岐阜・大垣)※男性専用
昭和ストロングな熱いサウナと清涼感のある水風呂は水質抜群で見た目も美しいです。昔から地元の紳士に愛されてきた古き良き空間はとても居心地がよく、雰囲気含めてとても好きな施設なので一生通いたいです。
- 「湯の泉 草加健康センター」(埼玉・草加)
いついっても掃除をしていて清潔感のあるラッコちゃん印の健康センター。サウナ、水風呂、外気浴は全て露天エリアにあり動線が素晴らしいです。爆風ロウリュ、ビンゴゲーム、薬湯など名物もたくさんあり、1日中ダラダラと過ごすのが最高の施設です。
- 「ニュージャパン スパプラザ」(大阪・難波)※男性専用
サウナにハマりたての頃一番カルチャーショックを受けた大人の社交場サウナ。サウナ、アカスリ、マッサージがパッケージされたサービスはここでしか味わえません。ビル老朽化につき2019年3月閉店なので1度は訪れてほしい施設です。
【告知】サウナイキタイのインタビューも収録 ねとらぼ同人誌「ねとらぼん 特集:ネットと銭湯サウナ」配布のお知らせ
ねとらぼでは1月19日に二子玉川ライズで開催される「第4回ウェブメディアびっくりセール」で、初の同人誌「ねとらぼん」を頒布します。
テーマは「ネットと銭湯サウナ」。昨今人気に火がつき始めた銭湯とサウナ、そのブームの広がりにネットがどのように関わっているのか、コラムやエッセイ、インタビューなどさまざまな記事で見つめる一冊となっています。
総括コラムはヨッピーさん、銭湯サウナをテーマにしたエッセイは中川淳一郎さん、姫野桂さん、ちぷたそさんなど、ねとらぼがお世話になってきたライターが寄稿。インタビューには初のサウナポータルサイト「サウナイキタイ」の創始者2人に開設経緯と「ネット×サウナ」について語ってもらいます。
約50〜60ページ(まだ作成中につきアバウト)で、1冊500円。ねとらぼのサイト上でも一部の記事をピックアップして連載形式で掲載中です。
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