綿密な描写でファンのハートを鷲掴み アニメ「荒野のコトブキ飛行隊」約2分かけて描かれた「隼」発進シーンが凄すぎた(2/2 ページ)
まさかレシプロエンジンの始動がここまで描かれる日が来るとは……。
いよいよエンジン始動
コクピットに座るキリエと整備班長のナツオが互いに声をかけあって、いよいよエンジン始動! この時に注意しなければならないのが前方のプロペラ。始動すると高速で回転する刃と化し、人が巻き込まれようものならあっさりと引き裂きます。
機体が傾いていることもあって、パイロットから完全な死角となっているので、整備員と互いに声を掛け合うのが必須なのです。
キリエが「始動準備!」と声をかけると、ナツオが隼の下部にある「慣性始動機」にクランクを差し込んで回し始めます。これはレシプロエンジンによく見られるもので、エンジンを少し回転させて「弾み」を付けるためにあります。慣性始動機に弾みを付ける作業はかなりの重労働だったそうで、整備員2人がかりでクランクを回すこともあったそうです。それを考えるとナツオは常人離れした腕力を秘めているのかも。あの細腕のどこにそんな力が……怖い。
弾みを付けたらナツオが「点火!」と声をかけ、それを聞いたキリエは点火開閉器を「両」の位置までレバーを動かして、エンジンに火を入れます。点火開閉器はロータリー式(順番に切り替えていくタイプ)になっているため、左右の点火器を個別に経由していくわけですが、もしこの時にエンジンの回転数が落ちた場合は「どちらかに重大な異常が発生している」ということになり、それは航空機にとって致命的な問題であるため発進中止になります。
エンジンが始動したら、パイロットは戦闘機が勝手に進まないように足のブレーキをしっかりと踏み込み、合わせて整備員は体を屈めてプロペラなどに当たらないようにしつつ、機体後方に移動します。
パイロットは油圧やエンジンの回転計器を確認して、問題なく稼働しているかチェック。足元のペダル、操縦桿を前後左右に動かして、機体の進む方向を操作する垂直尾翼の方向舵(ラダー)、機体の高度を操作する水平尾翼の昇降舵(エレベータ)、機体の向きを変更する主翼後ろに付いた補助翼(エルロン)、フラップなどの動作確認も行いますが、これもまたパイロットからは見えない位置にあります。ここでも整備員と声を掛け合って確認することになります。
エンジンの出力を少し上げつつプロペラの角度を調整、点火スイッチを動かして、念入りに動力系の異常がないかを確かめ、機体の配電スイッチをオンにしてランプが正常に表示されているか確認したら、整備員に手で合図を送ります。
これでようやく機体の確認が終わり。整備員がタイヤ止めを外したら、滑走路に入って、いよいよ離陸となります。な、長かった!
知って、改めてみるとわかる「隼」発進シーンの綿密さ
コトブキ飛行隊の少女たちが操る旧日本陸軍の戦闘機「隼」は、太平洋戦争が始まった1941年に登場しました。世界的に知られている「零式戦闘機(ゼロ戦)」などと共に、さまざまな戦地に投入され、終戦まで戦い抜きました。
機体の特徴としては、航続距離の長さや運動性能の高さなどが挙げられ、ことドッグファイトにおいては無類の強さを発揮しました。また整備性も良好で、経験の浅い整備員にも扱いやすい機体だったそうです。それでも空を飛ぶには、こうも念入りな準備が必要だったのです。
今回は作中で描かれた目につきやすいポイントをピックアップしましたが、こうして文字にして読んでみると、あの約2分間に描かれたモノの濃さを改めて実感しますね。こういったシーンを詳細に描くのはとても大変ですし、絵的にも地味になりがちで、描写を理解できる視聴者も限られてきます。しかし、それでも入念に細部までこだわって描写したからこそ、大きな盛り上がりが生まれたのでしょう。
現在「荒野のコトブキ飛行隊」は第5話まで放送中。TV放映は毎週日曜日22時30分からTOKYOMXにて、ネットではAbemaTVで毎週水曜23時から先行配信され、毎週土曜22時からニコニコ動画ほかで配信中です。
上記の発進シーン以外にも、2機で編隊を組んでの戦闘機動など、リアルな描写が続出しているので、興味を持った人は今からでも「荒野のコトブキ飛行隊」をチェックしてみては。
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