関西の企業が作った「マジックふりかけ」が注目されています。学校や職場でおなじみの「マジックペン」そっくりの容器に関西のグルメをイメージしたふりかけが入っているというユニークな商品。2018年8月の誕生以降、予想を上回る反響が寄せられ、第2弾も展開されています。
「マジックふりかけ」を生み出したのは、オリジナル商品の企画・開発を手掛ける「ヘソプロダクション」。実は2017年に「忖度まんじゅう」を世に出し、話題を呼んだ企業でもあります。
マジックふりかけはどのようにして生まれたのか? ヘソプロダクション代表の稲本ミノルさんに聞いてみました。
偶然から生まれた「ペンそっくり」というアイデア
2016年ごろ、食品メーカーからふりかけの商品化の提案をされた稲本さん。種類豊富な味や材料を組み合わせてオリジナルのふりかけが作れるとの話だったのですが……。
「ふつうに容器に入れても面白い商品にはならないと思ったんですよ。商品のビジュアルや見せ方も考えないとって」
なかなかピンとくるアイデアが浮かばず、1年以上が経過。そんな2018年春、稲本さんにある“出会い”が訪れます。
「ホワイトボードのペンを注文しようとして、事務用品のカタログを見ていたら、たまたま『マジックインキ』のページが目に入ったんですよね。そして『どんなものにもよく書ける』というキャッチフレーズが目に止まりました。ふりかけもご飯に掛けますよね。『これだ!』と思って、すぐに製造元の寺西化学工業さんについてスタッフに調べてもらったら、同じ大阪にある会社ってわかって『バッチリやん!』と」
企業のチャレンジ精神で「マジックふりかけ」が実現
稲本さんは早速、マジックインキの製造元寺西化学工業、登録商標を持つ内田洋行に「マジックふりかけ」製作の提案をしました。しかし「文具に食品を入れることは安全面が心配」と、すんなりとは受け入れられませんでした。
「子どもたちがマジックから食品が出ると思ってしまったら、本物のペンをなめたり、口の中に入れてしまったりするかもしれない。もしそれで事故が起こってしまったら……と懸念されていました」
しかし、サクラクレパスのマニキュアなど、さまざまな文具メーカーが今までのブランドイメージを覆すような商品にチャレンジしている現在、どちらの会社も新しいことに挑戦したいという思いはあったそうで、
「絶対に安全面には気を付けると約束して、2カ月掛かって『では、進めてください』って言っていただきました」
リアリティーの追求、気軽に持ち運びできるデザインでクスリと笑えるネタに
2社からコラボの許可を得て、マジックふりかけ作りに取り掛かった稲本さん。容器のデザインには非常にこだわったといいます。
「例えば細書き用のマジックインキには、筆記線幅1ミリから1.5ミリのペンであることを示す『No.500』という番号が書かれているのですが、それをふりかけの具のご当地の市外局番にしたりとか、『インキ補充可能』の表記は『ふりかけ補充可能』にしたりだとか。マジックインキのパロディー商品だけど、リアリティーで説得力を持たせたかったんです」
一方、容器はあえて実物とちがう形にすることで、遊び心をプラスしています。
「本物のマジックインキのふたにはクリップはついてないんです。でも、マジックふりかけは持ち歩けるようにクリップをつけました。クリップがあるとジャケットや上着のポケットに刺しておいて、使う時に出せるじゃないですか。ビジネスマンがネタで、ランチ行くときにスーツのポケットに入れて楽しんでほしいという強い気持ちがありました」
注ぎ口の大きさと価格に悩む
容器作りにはふりかけならではの苦労も。ふりかけの注ぎ口部分の大きさの調節が難しく、口が小さいとふりかけの具材によっては出てこないのですが、逆に大き過ぎるとドバッと一気に出てしまうそう。それについては、具材によって注ぎ口の直径を3ミリタイプと5ミリタイプを作るという方法で解決をはかりました。
また、ひとつひとつ手作業でふりかけを入れる「マジックふりかけ」は、価格を低くすることが難しく、税別680円という価格設定にはかなり迷いがあったと語る稲本さん。
「ふりかけがなくなっても中身を補充して、容器を繰り返し使えるということが伝わらないんじゃないかと思いました。しかし、それを強調し過ぎてもデザインのバランスが悪くなるし、かといって『高い!』と思われるのも嫌だし、かなり悩みましたね」
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