「ダウンロード違法化」文化庁資料に「賛成派を水増し」「立法過程で極めて重大な問題」 知財法研究所が批判
自民党に提出した文化庁の資料が、文化審議会で行われた議論の状況を正確に伝えられていないことを検証。レポートが公開されました。
明治大学知的財産法政策研究所が3月3日、違法にアップロードされたものと知りながらコンテンツをダウンロードすることを全面的に違法とする著作権法改正案について、文化庁が自民党の部会で配布した資料に「立法過程における極めて重大な問題をはらんでいる」として内容を批判する検証レポートを公開しました。
検証したのは、2月22日の自民党文部科学部会・知的財産戦略調査会合同会議で配布された資料。文化庁では出版業界の要望や海賊版サイト問題を受け、著作権法における違法ダウンロード(※)の範囲を、現在の音楽と映像のみから漫画や論文など著作物一般に広げる方針で法改正を検討しており、「ネットの利用を萎縮させる」「資料集めが難しくなる」と、ネットユーザーやクリエーターから批判を受けていました。22日の部会では、この改正案を自民党が了承したと報じられていました。
※違法にアップロードされたことを知りながらコンテンツを私的にダウンロードする行為のなかでも、著作権法違反と定められているもの
ワーキンググループは資料について、文化審議会で行われた議論の状況が正確に伝えられていないと非難。(1)慎重派委員4人の意見そのものを省略している、(2)慎重派委員2人の主張の重要部分を省略している、(3)慎重派委員2人の意見の一部だけを切り取り積極派であるかのように誤導している、(4)積極派の人数を「水増し」するなどの処理を行っているなど、主に4つの問題点を指摘しています。
これにより、「実際には無限定な対象拡大に積極的な意見は少数派であるにもかかわらず、これが多数派であったような誤解を誘っている」「議論の状況を正確に把握すべき立場である与党に正確な情報が提供されていない点は、立法過程における極めて重大な問題をはらんでいる」と批判。
今回の文化庁案には、アジアインターネット日本連盟や日本漫画家協会、100人を超える法研究者などから反対・慎重意見が多数表明されていることを踏まえ、「国民の声は説明資料において正確に与党議員に届けられていたのか、疑義がある」と投げかけました。検証レポートでは、実際の議論の内容と配布資料の差異を詳しく解説しています。
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「表現や研究などの萎縮はもとより、人権の制約につながることが決してないように」と十分な審議を求めています。