兵庫県警のWebサイトで、2016年から約3年にわたり、利用者の訪問データを無断で収集していたことが分かりました。インターネット上での指摘がきっかけで発覚したもので、兵庫県警はその後、当該コード部分をサイトから削除しましたが、今のところ告知や謝罪などは行われていません。編集部では兵庫県警にコメントを求めました。
兵庫県警が使用していたのは、Googleが提供しているアクセス解析ツール「Googleアナリティクス」。これ自体は多くのサイトで使われているごく一般的なツールですが、利用規約ではデータ収集のためにCookieを使用していることや、Googleアナリティクスを使用していることなどをサイト訪問者に開示するよう定めており、兵庫県警のサイトではこれを行っていませんでした。
Twitterでは3月5日ごろから“規約違反”を指摘する声があがりはじめ、一部では「兵庫県警、ホントに酷いな」「逮捕しなきゃ」といった批判も。話題になったことを受けてか、翌6日にはサイトから全てのGoogleアナリティクスが削除されていました。
編集部では一連の経緯について、3月12日時点で兵庫県警(県民広報課)に問い合わせていましたが、詳細については調査中との回答だったため、いったん調査の完了を待ち、4月5日になってようやく正式な回答をもらうことができました。
――サイトからGoogleアナリティクスを削除したというのは事実でしょうか。
兵庫県警:3月6日に削除しております。
――削除したのはなぜですか。
兵庫県警:Googleアナリティクスの規約で、導入していることを訪問者に告知している必要がありましたが、これに違反していたことが判明したため削除いたしました。
――なぜ導入について告知していなかったのでしょうか。
兵庫県警:必要事項を認識していなかったためです。
――Googleアナリティクスを設置した目的は?
兵庫県警:県警ホームページの利便性向上のため、平成28年(2016年)4月からGoogleアナリティクスを使用していました。導入したのは当時のホームページ担当者で、現在は異動になっています。現在のホームページ担当者は導入について把握していませんでした。
――担当者が異動になったのいつのことですか。
兵庫県警:移動先や異動の時期についてはお答えできません。
――今回の削除対応にあたり、内部で処分などはありましたか。
兵庫県警:処分についてはお答えしません。
――今回の件について、今後何か対応される予定はありますか。
兵庫県警:今回の件を今後の対応に生かしていきたいと思います。
兵庫県警といえばほぼ同時期、掲示板に“無限アラート”(※1)へのリンクを貼った女子中学生ら(※2)を補導・検挙した件が物議を醸しており、ネット上ではこの件と並べて兵庫県警の対応を批判する声も多くみられました。
ねとらぼ編集部でも「無限アラート」で検挙された男性の1人に取材していますが、男性も兵庫県警サイトの件については把握しており、インタビューの中で次のように語っています。
「書類送検の後に兵庫県警のサイトを確認したところ、利用者には告知せずGoogleアナリティクスを導入していたことも知りました。GoogleアナリティクスはCookieでデータを取得していることをプライバシーポリシーに明記する必要があると利用規約で定めているわけですから、兵庫県警はこの違反状態にあったということです。自分たちはいい加減なことをやっておいて、私には反省を促すという兵庫県警の姿勢には甚だ疑問です。」
※1:「何回閉じても無駄ですよ〜ww」といったアラートが繰り返し表示されるJavaScript。一部報道では「ブラクラ(ブラウザクラッシャー)」とも書かれたが、厳密にはブラウザをクラッシュさせるようなものではなく、「ブラクラではない」とみる意見が多い
※2:女子中学生以外に、39歳と47歳の男性も検挙され家宅捜索を受けた
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