自身のサイトにマイニングソフト「Coinhive(コインハイブ)」を設置したとして、Webデザイナーのモロさんが不正指令電磁的記録 取得・保管罪(通称:ウイルス罪)に問われている事件で、3月27日、横浜地裁は弁護側の主張を認め、「無罪」(求刑:罰金10万円)を言い渡しました。
事件のあらまし
サイト訪問者のPCのCPUを使ってWebブラウザ上で仮想通貨をマイニング(採掘)させる「Coinhive」を設置したことを巡り、複数の検挙者が出ている問題(通称:コインハイブ事件)。ねとらぼでは1月30日に「なぜコインハイブ『だけ』が標的に 警察の強引な捜査、受験前に検挙された少年が語る法の未整備への不満」との記事を、2月16日に「『お前やってることは法律に引っかかってんだよ!』 コインハイブ事件、神奈川県警がすごむ取り調べ音声を入手」との記事を公開し、それぞれの検挙者を取材しました。
公判のポイントを整理
今回の事件の争点は「Coinhiveの設置はウイルス罪に触れるのか」「ウイルス罪に触れる場合、故意と目的があったか」などで、検察側は罰金10万円を求刑。弁護側は無罪を主張していました。
また公判には著名なセキュリティ研究者の高木浩光氏も出廷し、Coinhiveを訪問者の許可なく設置することはモラルには関わるとしたうえで「刑法犯で処罰されるものではない」と主張していました。
昨今のプログラミング関連検挙事件
今回のコインハイブ事件をはじめ、2019年3月初旬にはインターネット上の掲示板に「不正なプログラム」を書き込んだとして13歳の女子中学生が補導、39歳と47歳の男性が家宅捜索を受けるなど、昨今、不正指令電磁的記録に関する罪の摘発が相次いでいます。
その一方でブラウザクラッシャー(通称:ブラクラ)にあたるとは言い難いジョークページを兵庫県警がブラクラだと認識していたり、モロさんの事件では「お前やってることは法律に引っかかってんだよ!」と神奈川県警の捜査員がすごむ音声が公開されるなど、警察の捜査手法への批判や「IT業界の萎縮を招きかねない」との声は少なくありません。時代に沿った法整備と明確な解釈の明示が急がれます。
(Kikka)
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