「他県なら普通にある品物が地元で買えない」と、地域格差を嘆くエッセイが切実です。作者は島根県出身のさくらいみか(@skrimk0218)さん。作品は、2018年末に出した地元ネタ同人誌「しまね」からの抜粋です。
さくらいさんによると、島根は大手チェーン店の進出自体が少ないうえに品ぞろえが乏しく、iPadを発売の翌年に買いに行ったときは「山陰に売っている店はないです」などと言われたのだとか(※あくまで店員の対応)。2018年でもなお、かろうじて一部の量販店だけが扱う程度だったそうです。
それでも現代ならばすぐ通販サイトに注文できますが、ネット普及以前はそうもいきません。例えば、雑誌に載っていた服が欲しくなっても、まず県内には売っておらず、ショップに問い合わせることになります。通販を受け付けない店もあって、入手を諦めることもしばしば。
「雑誌で見た物が買いたい」「ソニプラや東急ハンズへ行ってみたい」――。そんな思いから、作者は年に1回ほど友人と連れ立って、一番近い都会である広島に日帰りの買い物ツアーへ。片道180キロもの距離を、3時間半かけてバスで移動したといいます(現在は当時より約1時間早く着くとのこと)。これを習慣とするうちに、普通の旅行でも行程に買い物を織り込むのが当然と考えるようになりました。
そんな高校時代から約10年後、上京したさくらいさんは東京出身の友人からカルチャーショックを受けることに。漫画を読んでいた友人が、地方在住の主人公たちが旅行中にショッピングモールで普段着を買い漁る描写を指して、「普段すればよくない?」とツッコんだのです。「旅行先のひらけた町で買い物をしたくなるほど不便な地域がある」といった認識が都会人にないと気付いた作者は、地方の実情が知られていないのを痛感するのでした。
この一件から、テーマは「出身地の違いによる感覚のズレ」へ発展。例として、さくらいさんが初めて船橋のららぽーとに行ったエピソードが語られます。店舗面積国内3位のスケールを目にした彼女は、「島根県内にある店(※)を全部寄せ集めても、ららぽーとを満たせないだろう」と驚嘆。しかし、首都圏出身の友人たちからは冗談か誇張だと思われ、笑われてしまったのでした。
作者はあらためて、本当に島根の全店舗でららぽーとを満たすことはできないのか、簡単に検証。主要商業施設の一畑百貨店と、松江と出雲のイオン、出雲のゆめタウンを合わせたところ、店舗面積はららぽーととほぼ同等になりました。それでもさくらいさんは、「テナントのバリエーションを考慮すると、やはりららぽーとには届かない」と結論づけるのでした。
ツイートには、「故郷では最寄りのコンビニに車で行くと言っても、都会の人に信じてもらえない」「火曜日にならないと『週刊少年ジャンプ』が買えない」「マクドナルドが遠くて行ったことがなく、『“マック”派? “マクド”派?』と聞かれても答えられない」など、島根県民や他の地方出身者から共感する声が多数。その一方で、「車と大きめの商業施設さえあれば、買い物がいっぺんに済む」といった利点を挙げる人もいます。
本マンガを収録した「しまね」はBOOTHなどで販売中、ちなみにこのマンガ以外はほぼコラムと図解で構成されています。なお、さくらいさんは都会暮らしも故郷の暮らしも好きで、リモートワークを利用するなどして、上京と帰郷を何度も繰り返しているのだとか。そんななか会社員兼フリーライターとして活動するほか、『りぼん』を徹底的に研究した同人誌を著しています(参考:デイリーポータルZ)。
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