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「尊い」とは「見えざる関係性」のこと――『どうして私が美術科に!?』×『ステラのまほう』作者が語る、“尊さビリティ”の正体(4/4 ページ)

どうびじゅはいいぞ。

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――次に、くろば先生から相崎先生への質問を。「次回作の意気込みをお聞かせください」。

相崎:「どうびじゅ」ではきららの王道である女子高生もの、学園ものを描いたので、そこから少し外していきたいなと考えています。でも、女子高生が好きなのでやっぱり女子高生を描いちゃうかも(笑)。ノリとか笑いとか、ガヤガヤした楽しい感じはそのままで、けれど「どうびじゅ」とはまた違う雰囲気の作品にしたいですね。

――最終回の柱コメントに「相崎うたう先生の次回作をどうぞお楽しみに」と書かれていましたが、言葉通りの意味と捉えていいんでしょうか。

担当:僕としては、引き続きうちで描いていただけたらと思っています。もちろん、相崎先生の意思が重要ですが。

相崎:きららの作品が好きで持ち込んだ経緯もありますし、描かせてもらえるなら次もぜひ!

――読者の方も、そこが一番気になっていたと思います。相崎先生がこれからもきららで描いてくれるのか……。

相崎:これまでずっと、学校に行ってマンガを描いてという生活だったから、1カ月くらい休みたいという話もしたんですけどね。でも、休んでいても結局マンガのことを考えちゃうと思います。

――続いて、「桃音たちが2年生になったあとで描いておきたかったエピソードはありますか?」

相崎:朱花が加わった6人での居残り風景は、今よりもにぎやかになりそうで描いてみたかったですね。あと、先生たちのエピソードも。玄恵ちゃんと白雪先生がお出かけする話とか、構想は頭の中にあったので。美術教師でもある蒼のお母さんと、玄恵ちゃんたちが喋るとどうなるのかとかも。

――くろば先生は、「どうびじゅ」のこういったエピソードが読みたかったというものはありますか?

くろば:あえていえば、紫苑ちゃんの蒼ちゃんに対する感情の掘り下げがもう少し見たかったですね。紫苑ちゃんは、自分の実力に悩んだり周りの友達に嫉妬したり、「どうびじゅ」の中でも一番美術学生らしいキャラクターだと思うんです。その上で、幼なじみである蒼ちゃんへの友情はもちろんあるけれど、同時に天才でもある彼女への嫉妬心もある。そういう複雑な感情がぶつかりあうところがもっと見たかったなと。



天才の蒼に憧れる紫苑と、秀才の紫苑に憧れる蒼

相崎:紫苑と蒼のエピソードはもう少し考えていたんですけど、ほかのキャラクターのエピソードとの兼ね合いで消えてしまいました。私も描きたかったです。

――くろば先生は、本当に感情のぶつかりあいがお好きなんですね。

くろば:そうですね。自分で描くときもほかの方のマンガを読むときも、表面的なかわいさだけじゃなくて、キャラクターの人間的な部分が垣間見えてくると俄然テンションが上がります。そういう意味で「どうびじゅ」の桃音ちゃんたちはみんな存在感がありましたし、次回作でも相崎先生のキャラクターの感情がぶつかりあうシーンをたくさん読みたいです。


どうして「どうびじゅは尊い」といわれるように!?

――相崎先生とくろば先生にインタビューできるなら、ぜひ「尊い」について話を聞きたいと思っていました。「どうびじゅ」の感想や宣伝でも盛んに使われている言葉ですが。

相崎:1巻の単行本が出る前から「どうびじゅは尊い」といろいろな人に言われてきたので、「尊い」って何だろう? と辞書で調べたこともありました。でも、今もよく分からないままですね。意識して尊いマンガを描こうとしているわけじゃありませんし。

くろば:僕が考えるに、「尊い」とは「見えざる関係性」だと思うんですよね。「どうびじゅ」でそれを最も感じられるのは蒼ちゃんと紫苑ちゃんの関係性で。

 具体的には、2巻で紫苑ちゃんが京都に帰省した回。残された蒼ちゃんは桃音ちゃんたちに紫苑ちゃんとの思い出をぽつぽつと語るわけですけど、この話があることによって、読者はふたりの間に幼なじみとして過ごしてきた時間が確かに流れているのだと感じ取ることができる。

 作中で描かれているシーンは氷山の一角でしかなくて、その下側には時間とか信頼とか友情とかが存在している。それを僕たちは氷の上から覗き込んでいて、触れられないけれど確かにあそこにあるんだなという奥深さに対して「尊い」っていう感情を持つんじゃないでしょうか。



担当:「尊い」の言葉の意味から考えても、見えるけど触れられないという表現はしっくりきますね。神聖であり、アンタッチャブルであり、ディバインであるという。

相崎:なるほど……。いや、そんな深いところまで考えてませんでした(笑)。

――確かに「どうびじゅ」では、過去のエピソードを断片的に描くのが上手だなと感じます。

相崎:あまり描きすぎても仕方ないとは思っていますね。どれだけ仲良しの友達でも、24時間一緒にいるわけではないじゃないですか。完全に他人のことを知ることはできないんだろうなという気持ちが、どこかにあるのかも。

くろば:見えない部分が多いというのはつまり、そこを見てみたいと読者に思わせるのがうまいということでもあって。見えない部分を自分で考える、二次創作するのも、尊さに対するアプローチとしてはありだと思います。もちろん想像で補う以上、完全に一致はしないんですけど、きちんと想像がつくようにキャラクターのバックグラウンドなどを丁寧に描かれているところが、「どうびじゅ」の「尊さビリティ」の高さ所以(ゆえん)なのかなと。

相崎:各キャラクターの過去のエピソードとか、この子にはこういう設定があるとか、描きはせずともずっと考えながら描いていたので、そういったところが無意識のうちに読む人に伝わっていたのかもしれませんね。

――今回こうして対談していただいて、最後に相崎先生からくろば先生にメッセージをお願いいたします。

相崎:まだ描いていない照先輩の話があると聞いたので、これからの『ステラのまほう』の展開を楽しみにしています。照先輩の気持ち、個人的にはすごく共感できるんですよ。

くろば:邪悪な話しかないですけどね。照先輩のエピソードは風呂敷を広げたばかりなので、今後の展開をお待ちいただければと。

――くろば先生から相崎先生には何かございますか?

くろば:『どうして私が美術科に!?』、とてもいい大団円でした。次回作も期待しています。本日はありがとうございました。

 ……いや、本音をいえばもっと続いてほしかったと思ってますよ? 思ってますけど! それを言い出すとキリがないので、僕の感情はあのイラストに全部詰め込みました。



相崎:桃音ちゃんが美術科紹介展で描いた花びらも入っていて、細かいところまで覚えていてくれたんだって感激しました。お忙しい中あんな素敵なイラストを描いていただけて、本当にうれしいです!

くろば:ああでもしてアウトプットしないと、どうして終わってしまったんだ……という怨嗟の念が漏れてしまいそうだったので(笑)。繰り返しになりますが、相崎先生の次回作楽しみにしています!


ましろ



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