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天海祐希「緊急取調室」仙道敦子の演技が光った3話 「お年寄りからじゃない! 食うに困らない金持ちからよ!!」叫ぶ詐欺師に危うく共感しそうで焦る(2/2 ページ)

カリスマトレーダーが裕福な高齢者を詐欺にハメたのは――仙道敦子怪演。

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格差社会への復讐のための詐欺

 今回、取り調べを受けたかすみが掛けられたのは殺人容疑ではなく詐欺容疑だった。とは言え、このドラマは毎回ゲストが犯人。かすみがつくウソをキントリが暴くのだと思っていた。取り調べ自体が伏線というかミスリードというか。3話は被疑者と真犯人が別という珍しいパターンだった。大金に目がくらみ、突発的に理沙を殺めていた門倉。お金は怖い。

 では、かすみが詐欺を行った理由は何か? その理由にもお金が絡んでいる。と言っても、お金に目がくらんで短絡的に詐欺を働いたわけじゃない。借金を残して自殺した父のせいで、幼少期のかすみは貧しい生活を強いられていた。

有希子「貧しい生活を強いられて辛かったでしょうね」

かすみ「あなたに何がわかるっていうの? お腹を空かせてひもじい思いもしたことないくせに」

 子役時代、NHKでおしんの姉・谷村はるを演じた仙道敦子が言うセリフなだけに、説得力が半端ない。デイトレで勝率8割を誇る彼女が高齢者から投資資金を騙し取った理由。それは、苦しい生活を押し付けてきた格差社会へリベンジするためだった。かすみは現代の闇を具現化した存在。社会が作った加害者であり、被害者だ。

有希子「お年寄りからお金を騙し取る。そんなことは決して許されない」

かすみ「お年寄りからじゃない! 食うに困らない金持ちからよ!!」

 もちろん、詐欺はもっての外。しかし、かすみに少し共感してしまいそうになるから困る。

 取り調べが終わった瞬間、かすみは豹変した。

 「でも、楽しかったな。だって、みんなコロッと騙されちゃうんだもん。あなたたちだって、理沙さんのこと私が殺したと思ったんでしょ? だから、私をここに呼んだのよね? アハハハハハハッ……!」

 かすみから自然と滲み出る妬みと苦しみ。笑顔なのに泣いてるみたいに見える。彼女に憐れみを覚えてしまうし、気色悪さを感じてしまう。

 かすみの母・よしえは、かすみに話すつもりで有希子に語りかけた。

 「お金は怖いのよ。気を付けてね、かすみ」

 格差社会を恨んだかすみは、詐欺のターゲットを富裕層にすることでヒエラルキーの上へ立つ快感を味わおうとした。しかし、その復讐方法だと社会は何も変わらない。

 「お金より大事なものは?」と問われ、小石川春夫(小日向文世)は「正義かな」と返答した。綺麗事のようにも思えるアンサーだが、お金に囚われるよりそういう自分でありたい。復讐が何も生み出さないことは確かだ。


緊急取調室 いよいよ取り調べが始まるという場面で、梶山管理官(田中哲司)がつぶやく一言、演技とは思えない真実味があって心配になり、つい描きました。イラスト/納口龍司

寺西ジャジューカ

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納口龍司

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