国語の授業から小説が消える日?
「共通テストには小説がない」という事実とリンクしそうなのが、2018(平成30)年に告示された、学習指導要領です。
この学習指導要領には、文科省が公開している解説があります。この中に、現行(2019年現在)の学習指導要領で規定されている科目構成と、改訂された学習指導要領で規定されている科目構成の比較表があります。
注目すべきは「選択科目」の内容で、これまで「国語表現」「現代文」「古典」とあった枠組みが、「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」となっています。つまり、これまで単に「現代文」とされていたものが「論理国語」と「文学国語」に分かれているのです。
おそらく、現時点の高校の「国語」科目で、実用的な文章(なにかの規約や法令など)を教材とした授業を受けた経験のある人は、かなり少ないと思います。もしかすると「国語表現」の題材で、実用的な文章が使用されたことがあるかもしれませんが、限定的でしょう。
しかし、今後の「国語」では、実用的な文章を教材とした授業が増えることも予想されます。なにしろ、大学受験の入り口ともいえる共通テストで、実用文がかなりのウェイトを占めることになりそうなのですから。
そしてそのあおりを食いそうなのが、小説です。
第一に、共通テストから小説がなくなって随筆がかわりに入ったことが注意されます。どちらも「文学国語」の範囲内ですから、随筆が小説よりも教材として使用される可能性が高くなりそうです。
第二に、国語科目全体の単位数が増えていることにも注意されます。時間割の中で他の教科を国語に変更することはできないでしょうから、実際の運用は「国語」の中での変更になるはずです。とすると、「文学国語」の時間を減少させて「論理国語」にまわすことになります。
つまり、これまで小説を教材としていた授業時間は、実用文や評論を教材としたものに多くが割かれる可能性を指摘できます。
おわりに
冒頭に述べたように、ひょっとすると10年後、20年後の高校卒業者は、それ以前の卒業者が「国語」で読んだような小説を読まなくなっているかもしれません(あくまで、現時点での予想に過ぎませんが)。
もちろん、入試システムの変更が高校における国語の授業を支配するものではありません。それぞれ独立しているもののはずです。しかしながら、昨今は「高大接続」が謳われており、高校での学びが大学での学びへと直結することが求められています。そう考えると、大学入試の変更が高校の授業に与える影響は小さくないといわざるをえません。
また、この記事で参考にしている「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編」では、高校生に対して「読書」を勧めるように書かれているのですが、筆者自身は、この教育課程では、高校生はむしろ「読書」から遠のいてしまうのではないか、と思わずにいられません。
なお、共通テスト・新教育指導要領と連動して、国公立大学の入試はもちろん、私立大学の入試も大きな変更が予定されています。
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