高校の「国語」が変わる?
――高校の国語の教科書の内容を覚えていますか?
そうたずねれば、『山月記』や『舞姫』『こころ』などを思い出す人が多いかと思います。こういった小説作品は記憶に残りやすく、その一方で「評論」のような堅い文章の内容はあまり覚えていない、という人が多数派ではないでしょうか。
ところが、もしかするとこういった記憶は、あと数年後の高校生たちとは共有できなくなるかもしれないのです。
彼らの「国語」の記憶は、小説などの作品にかわって、「評論や契約書みたいな文章ばかりを読む、退屈な時間」になってしまう可能性があります。
この記事では、センター試験にかわる共通テスト「国語」の内容と、高校の「国語」の教科書をめぐる状況を解説します。
センター試験の廃止と新共通テストの導入
ご存じの方も多いと思いますが、2020年度入試(2020年1月予定)をもって、センター試験は廃止されます。そのかわりに、2021年度入試(2021年1月予定)からは、「共通テスト」が始まります。すでに何回か、共通テストの導入試験が行われており、その際に使用された問題も公開されています。
共通テストで大きく変わる点としては、記述式問題の導入があります。これまでのセンター試験はすべてマーク式問題、つまり選択肢から正答を選ぶものでしたが、共通テストではそれに加えて記述式箇所が設けられ、段階別で評価されます。
さらに、センター試験が「評論(現代文)」「小説(現代文)」「古文」「漢文」で構成されていたのに対して、共通テストには「実用的な文章」が問題として加えられたこと、「小説」がなくなって、かわりに「詩・随筆」が入ったことが違いとして挙げられます。
センター試験と共通テストはどれくらい異なる?
共通テストの試行調査は2017年度と2018年度に行われましたが、それぞれの試験問題を比較すると、両者は全くの別物といえます。
2017年度は「生徒会規約の読み取りとそれに基づく問答」(実用的な文章)が独立した問題となっており、これが記述式問題になっていました。つまり、従来のセンター試験に実用的な文章を加えて、これを記述式にしたわけです。問題が独立しているため、もしも記述式問題を入試要件としない大学を志望するのであれば、これを無視することもできました。この場合、従来のセンター試験に近い受験スタイルになるはずです。
これに対して2018年度は「『レポートを書く』設定で、参考にされた評論的文章」についての記述問題と、「著作権法に関する文章」を問題文としたマーク式問題、そして「詩・随筆」「古文」「漢文」と続きます。つまり、大問1が評論・記述式、大問2が実用文・マーク式となっています。これは2017年度と比べても、従来のセンター試験との差がより大きいと言えるものです。
なお、試行調査での試験時間は80分から100分に延長されます。本番の試験がより難しくなるのか、それとも試行調査と同じ程度の内容なのかは不明です。内容が2017年度と2018年度、どちらに近い(あるいはさらに別な)形式になるのかも気になるところですが、さらに注目したいのは、「小説」がなくなったことです。
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