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“メシ”を通して危険な相手を取材する 「ハイパーハードボイルドグルメリポート」と「ウシジマくん」が描く“ヤバいやつらの世界”(3/4 ページ)

「個人がSNSで訴えても届かない声を伝える力が、自分達にはあるじゃないですか」

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「ハイパー」の取材で見つけた、人間の美しさ

――マンネリという点でいえば、「ハイパー」も毎回食べ物の話なので、「またかよ」って思うこともあったのではと思うんですが。

上出: メニューに関しては、似通ってくるところはありますね。ある国ではどこでも同じようなものしか食べてないみたいな。でも番組の主題が飯自体じゃないんで、うまそうであればなんでもいいですね。

真鍋: けっこうすごい環境で作ったものを食べてますけど、抵抗はないんですか?

上出: もともとはすごく抵抗があったんですよ。超潔癖なんで。薬剤師一家でクリーンに育てられて、絶対変なものを食べちゃダメっていう暮らしをしてたんですけど。食えるかどうかに関しては完全にアドレナリンですね。今回もケニアに行ってきて、ナイロビにケニア最大のゴミ山があって、そこで暮らしている青年を見つけたんですよ。そこらじゅう燃えててみんな気管支がおかしくなったり、鉛中毒で体壊したりしてるんですけど。彼らは粉ミルクが入ってた缶を鍋にして、そこに拾ったものとかを入れて煮込んで食ってて、今回はそういうのを食べてます。でも全然、最高にうまいです。


ハイパーハードボイルド 闇金ウシジマくん
ケニアのゴミ山 (C)テレビ東京

真鍋: 害ってないんですか?

上出: ちょっとしか食べてないんで。結局脂とか塩分とか、体にいい悪いって量の問題じゃないですか。少し食べるくらいだったらまず大丈夫。でも今回のケニアの青年も「俺たちはタフだ、タフじゃないとここでは生活していけない」って言うんですよ。かっこいいなと。みんな自分の命とか肉体に意識のフォーカスが向いている。彼らはケガしたら死ぬリスクが爆上がりする状態で暮らしています。そういうのをテレビで出したいと思ってますね。僕らと全然違う世界で生きている人たちの、どろっとしてる中での一瞬の美しさだったり、かっこよさみたいなもの、これはウシジマくんにもあると思います。

真鍋: ありがとうございます。

上出: ただケニアから帰って来てから、しばらくは咳が止まらなかったですね(笑)。ゴミ山にいたのは3日くらいだったと思いますが。


ハイパーハードボイルド 闇金ウシジマくん

「取材」でコンプレックスを解消する

――上出さんのご実家が薬剤師というのはびっくりしたんですけど、どのタイミングで吹っ切れたんでしょうか?

上出: 温室育ちがコンプレックスだったんですよ。愛情いっぱいで育った自分がかっこ悪く感じたというぜいたくな悩みです。それで学生時代に軽くグレました。ひどい育ちの中で必然的にグレる奴と、僕みたいに温室育ちで「心配してくれよ」ってグレる奴がいると思うんですよ。

――それはそうですね。

上出: それで不良っぽいこともいろいろやったんですけど、なんで自分はこんなことしてたんだろうっていう思いから大学では少年犯罪とかの研究をしたりして、真っ黒だって言われてる奴は本当に黒いのかなっていう気持ちが今の番組につながってたりします。世の中は白黒はっきりしないだろうというか。吹っ切れたっていうことでいうと、コンプレックスを解消したくていろんなトライをしたんです。中国の山の中に2カ月行ってみたり、ボクシングをやってみたり、アラスカにこもったりとか。潔癖な自分を変えたかったし、弱いのが許せなかった。

――今そのコンプレックスは解消されましたか?

上出: けっこう解消されました。汚い自分でいられるというか、汚い自分が許せる。

――取材の効能というか、取材でそういう環境に飛び込んだから自分の中で意識が変わったんでしょうか?

上出: それもあると思います。だからどんどん番組の内容がひどくなってます(笑)。昔はちょっとやだなと思いながらゴミ山行ったりしてましたけど、もう今は全然平気なんで。

真鍋: 俺も福島に取材に行った時、農家で牛飼ってるとことかだとご飯に蝿がついてたりするんですよ。最初はうわっと思ったんだけど、でも2日目は普通に食ってましたね。

上出: 慣れですよね。多分大丈夫なんですよ、なんだかんだで。僕らなんかパッと行ってパッと帰ってくるんだから、大体のことは大丈夫です。

――取材時に、「これはもう勝ったな」って思うのはどんなときですか?

真鍋: 沖縄のエピソード(※)は上手に料理できたなって思ってます。

※『闇金ウシジマくん』36〜39巻収録の逃亡者くん編。

上出: それは取材してる際に「これはいけるぞ」っていう感触があったんですか?

真鍋: 楽しかったんですよ、自分が。めんどくさいことも多いんですけど、それも含めて掘れば掘るほど面白いっていう。

上出: そこは完全に僕も一緒だと思います。取材してるときに楽しいなとか面白いなっていうことがあったらもうそれで勝ち。あと、僕は映してる人がそのまま主人公になっていくんで、その人のことを好きになれたら勝ちですね。リベリアの娼婦の人とか、もう完全に好きになってました。アンジェリーナ・ジョリーにしか見えなかったですもん。

真鍋: あれはアンジェリーナ・ジョリーですよ!

上出: ジョリーですよね!


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(C)テレビ東京

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