ウソがバレてても悲しい、バレてなくても悲しい
葉子に結婚指輪を返した鐘子は、もう既婚者の証明である指輪をつけることができない。丈にウソをついていたことを明かそうと思って会いに行く。
「ハワイに行ったことないの?」「旦那さんと行かないの?」と聞かれ、鐘子は言いよどむ。いまが真実を告げるチャンスだと顔を上げ口を開いたとき、丈は鐘子の発言に自分の言葉をかぶせてさえぎった。それが、言葉が偶然に被ってしまったのか、本当のことを言わせないように丈がわざとさえぎったのか、どちらとも感じられる絶妙な間だった。
賢治は、結婚記念日のディナーのときに「僕たちって、うまくいってるよね?」と葉子に問う。葉子は「どこからどう見ても、うまくいってるでしょう」と答えるが、賢治は納得がいかない表情を見せる。
その後、風太に会いに行くために葉子は鐘子をダシに使ってウソをつく。「自分もついていく」という賢治を“まいて”、葉子は風太のもとに向かう。自分を愛してくれる夫に対して使う「まく」という言葉。葉子は、一緒に暮らす配偶者をナメている。
風太もまた、葉子が既婚者だということに気づいている可能性がある。2話で、「結婚という制度に興味がない」と言った葉子を見る、風太のきょとんとした顔。そして、鐘子の派遣仲間・まさ子(田中道子)が言った「イマドキの若い男にとっては、相手が既婚者より独身のほうが問題なのかな」というせりふ。これは、丈ではなく、丈よりも若い風太にかかっているのかもしれない。若い女性に疲れた風太にとっては、独身のふりをしている既婚者なら将来の責任を負う必要もなく都合が良いのかも。
丈、賢治、風太。全てをわかっている男たちの中で、「結婚」や「女の幸せ」という社会通念に振り回される女たちが右往左往しているだけのドラマだったら悲しすぎる。全てわかっているように見せかけて誰も何も知らなかった、という結果だったとしても、それはそれでウソがバレたときの彼らのショックを思うと心が冷える。結局、ウソは誰も幸せにしない。
「銀河鉄道の夜」はどこまで踏襲されるか
丈「鐘子さんといると楽しいんだ。だから、もう少し一緒にいようよ」
鐘子「うん、私ももっと一緒にいたい」
丈「じゃあ、少しでも長く一緒にいよう。鐘子さんがいられる時間まで」
丈と鐘子は、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」のジョバンニとカンパネルラのように銀河鉄道に乗るため、岩手旅行に出掛ける約束をした。SL銀河は、岩手県の釜石線を実際に走っている電車だ。花巻駅と海沿いに近い釜石駅までをつないでいて、東京から新幹線で行ける新花巻駅を通る。
「銀河鉄道の夜」では、旅の途中でカンパネルラが川に落ちたザネリを助けて溺れ、行方不明になってしまう。「偽装不倫」がどこまで「銀河鉄道の夜」を踏襲するつもりなのかはわからない。ただ、この銀河鉄道旅行の約束は、丈と鐘子の関係に転機をもたらすものになるだろう。
第4話は、今夜10時から放送予定だ。
むらたえりか宮城県出身のライター・編集者・ハロヲタ。
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実は結構重い話なんです。