7月19日に「凪のお暇」(TBS系)の第1話が放送された。好きなドラマは初回の15分でほぼほぼわかる。1話を丸々見て、ハマる予感しかない。いわゆる、当たりのドラマだ。
「わかる!」と言い続け、心が折れた
都内にある家電メーカーで働くサラサラストレートヘアが特徴的な大島凪(黒木華)は、平穏に過ごすため常に場の空気を読み、「わかる!」と周りに同調することで自分の平和を保っていた。同僚たちはそんな凪を「うちらの下請け」と呼び、理不尽な仕事を凪に押し付ける。でも、彼女にはよりどころがあった。“営業のエース”であり、人気者の我聞慎二(高橋一生)とひそかに付き合っているのだ。しかし、慎二が自分の陰口をたたいている場面に出くわし、過呼吸に陥った凪は心が折れた。これをきっかけに彼女は人生のリセットを決意、会社を退職して引っ越した。
転居先のボロアパートで、質素ながらも豊かな生活を送る老婆・吉永緑(三田佳子)との交流が始まる。隣人の安良城ゴン(中村倫也)とは、ゴンの家のベランダに成っているゴーヤをきっかけに会話することができた。そこに突然、凪の住所を知った慎二がやって来る。無神経なことばかり言う元彼に対し、凪は「今後一切、私に関わらないで!」と別れを告げた。その後、慎二は行きつけのスナックに行き、凪のことが大好きで、「一生守っていく」と心に誓っていたことを号泣しながら打ち明けた。
翌朝、ゴンはゴーヤのお礼を言いに凪の部屋を訪ね、そして凪を抱きしめた。頭が真っ白になった凪はその場に倒れ込んだ。
空気を読む役回りを自分で選んでいる
「空気は読むものではなく、吸って吐くもの」(ドラマ後半で凪が言うせりふ)。
しかし、凪は空気を読むことに腐心していた。仕事で問題が起こると、自分の責任ではないのに身代わりで名乗り出たり、周囲との衝突を避けるために「わかるー!」と何でも同意したり。結果、同僚に仕事を押し付けられ「うちらの下請け」呼ばわりされる始末。さらに、凪は恋人に対しても下僕だった。
「世界三大欲求の食欲が満たされたわぁ。残るは睡眠と、あと1つ……何だっけ? ねえ、凪。して」(慎二)
「しよう」じゃなくて「して」と言われる切なさ。端的に、2人の関係性を示している。この辺までの描写は、原作を読んでいても本当に胸くそが悪かった。
高橋一生演じる慎二は、原作マンガの慎二と少し異なる。マンガではちょっと可愛らしさがあるのに、実写だと本当にむかつくのだ。慎二は会社の同僚に凪の陰口を言っていた。
「アッチがいいから会ってるだけ」
「だってそいつ、一回食った後の野菜育てて何回も何回も食うわけ。作るメシも貧乏臭いし、コンセントとかいちいち抜くし。俺、そういうケチ臭い女、生理的に無理なんだわ」
凪をかわいそうな人間関係の被害者とするのは簡単だ。彼女はこういう役回りを自分で選び、限界が来て破裂した。だから何もかも捨て、素の自分を取り戻そうとお暇するのだ。
無意識に打算のある凪
凪には打算がある。慎二を逆転ホームランを打つための“最後のカード”とした会社員時代。彼が持つステータスと人気に惹かれていた。アパートに転居した彼女は、自販機から釣り銭を拾う緑を見て、勝手にゴミ屋敷住まいだと思い込んだ。ナチュラルに失礼……。
でも、部屋に足を踏み入れると緑は(精神的に)豊かな生活を送っていた。怖そうな八百屋の店員もいい人だったし、腕にタトゥーを入れた隣人・ゴンも人の良さそうな男だった。それら全て、凪がアクションを起こしたからわかったこと。勤めていた会社と、転居先で出会った人たちには天と地の差があった。
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