夢の中の銭湯(匿名希望さん)
夢の中によく銭湯が出てきます。行った覚えはないものの、構造まで鮮明に記憶している場所です。
閑散としたその銭湯で、心霊現象を体験する夢をよく見ました。なにか霊的な存在に追いかけられ、たどり着いた先の浴場ですべって転んでしまい、その瞬間に目が覚めた、というような内容のものが多かったです。
ある夏の日、妻と子供を連れて家族で帰省のため車を走らせていました。途中、車内で子どもが汗をかいてしまったため、近くの銭湯に寄ることにしました。
その銭湯は、夢に出た通りの形をしていました。私は「記憶にないほど幼い頃に訪れていた場所を、無意識のうちに覚えていたのか」とひとり合点しました。
子どもを連れ、いざお風呂に入ろうと浴場に入ろうとしたとき、子どもが転んでしまいました。あわてて子どもが転んだ場所を見ると、夢で私が転んだのと同じ場所にくぼみがあったのです。 私はそれを見て、私が夢で遭遇したあの霊も存在したのではないかと徐々に不安になっていきました。
結局、ささっと入浴をすませて再び車に乗り、何事もなく実家に帰りましたが、夢に出てきた霊が入浴時にもいたのではないか、子供がこれを覚えていて私のように悪夢にうなされるのではないか、と妙な不安でいっぱいになりました。
(編集部より)恐怖体験としては地味な話なのかもしれませんが妙に印象的で、こんな体験をしたら絶対に忘れられないだろうなと思い、ピックアップしました。特に自分に深い縁があったわけでもない銭湯がなぜか夢に出てくる不可解さが面白いです。
どうして出ないの(レオさん)
仕事で当直をしていたある夜のことでした。医師も看護師も、他の職種の当直スタッフ以外はみな帰宅しており、病棟を全てまわり終えた俺は当直室に戻って仮眠をとろうかと思いながら、その日の残務をしていました。
残務が終わる頃に、PHSのコール音が当直室に鳴り響きました。先程回ってきたのにどこの病棟からかと思いました。少し眠気が来ていたのでイラッとしてしまいながらも、コールを受けました。
「……はい、当直○○(俺)です。」
いつもPHSをとるときの決まり文句です。しかし、しばらく待っても相手からの返事は来ません。電波が悪いのかとも思いながらも何度か呼びかけましたが無言。PHSを切ろうとしたときでした。
ザァアーーーーーー! と砂嵐のような音が流れてきて、音にビックリしてとっさに切ってしまいました。 念のため、表示された相手方の番号に折り返してみましたが、結果は同じでうんともすんとも言いませんでした。
PHSの調子が悪いのかと思い、別の医師のPHSを借りることにしました。当直の医事室スタッフに連絡して、PHSを変更したことを各病棟に伝えてもらうように依頼しました。 疲労がピークにきていて、緊急ならまた連絡がくるだろうと思いました。PHS2台を近くに持ったまま、消灯せずにベッドではなくソファに横になりました。
しばらくして不意に目が覚めました。消してないはずの電灯が消えていて、部屋は真っ暗です。当直にいくつかある固定の電話の赤ランプだけが不気味に光っています。電灯が消えたのは誰かが消してくれたのだろうと思って、トイレにでも行って残務を再開しようとしたときです。
固定の電話2台がコール音を鳴らしました。ワンテンポ遅れて、俺が借りたPHSも鳴りました。 ただ、おかしなことにその3台に表示されている相手方の番号が全て同じなんです。Aという病棟にPHS・固定電話がいくつかあっても、ひとつひとつがそれぞれの末尾が異なる番号が設定されているはずなんです。1台の番号で複数に電話をかけることなんてできないはずなんです。そもそもスタッフは仕事があるので、何か用があるならその病棟のひとりだけがかけるはずなんです。いくらオカルトを信じていない俺でも気味が悪くなって部屋から出ようとすると、ドアが開かないんです。ドアノブも固くて下げられない状態です。
当直スタッフに来てもらおうと、鳴っていないもう1台の俺のPHSの番号を医事室スタッフ宛に押して耳に押し当てました。すると、女性の声で『どうして出ないの』と言われました。
恐怖に震えながら身体を起こすと元のソファで寝ていて、電灯もきちんと点いていました。ひどい悪夢をみたことで冷汗で背中が濡れており、白衣が張り付いて気持ち悪かったのを覚えています。固定電話と借りたPHSの着信履歴を見ても、かかってきた形跡はありませんでした。やっぱりただの悪夢だと思って、何気なく調子が悪い俺のPHSもみたところ、1件だけ着信が残っていました。
今度こそ気味が悪くなって、その後もすべての病室を見回ったところどのスタッフも電話はかけておらず、病棟はトラブルもなく平和だったそうです。
どうしても気になるからと食い下がり、日勤の終わりに番号を調べてもらいました。残っている着信履歴の番号は、今は存在しないようです。ただ、昔は確かに存在していた番号でした。今は改築されている場所ですが、自傷他害の恐れがある患者さんが入る保護室という部屋があった場所だそうです。その後数日は怖くて後輩の家に泊まらせてもらいました。
(編集部より)今回一番背筋が寒くなった作品です。なぜその夜に電話がかかってきたのか、改築前の病院では何があったのか、謎がたくさんあってぞわぞわさせられました。体験はほかにもあるとのことですが、ぜひそれも聞きたいです……。
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