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1stワンマンライブでTwitter世界トレンド1位、実現したのは15歳の女の子―― バーチャルシンガー「花譜」は何者なのか(1/2 ページ)

少し不器用で、無限の可能性を秘めた女の子。

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 2018年10月から活動を開始し、瞬く間に話題となった15歳のバーチャルシンガー・花譜。そのプロフィールは、ほとんどが謎に包まれています。YouTubeでのカバー曲やオリジナル曲の投稿を活動の主としており、ネット音楽・バーチャルシンガー界で水面下的に人気を広げてきましたが、8月1日に行われた1stワンマンライブ「不可解」に関する一連のリリースと実績で、その名を一気に轟かせることとなりました。

代表的オリジナル曲「心臓と絡繰」

 同ライブ開催にあたって、花譜運営チームはクラウドファンディングを実施。500万円の目標金額に対し、総額4000万円以上の支援が集まりました。


クラウドファンディング画面 平均して、1人約1万円を支援

 その達成率は驚異の809%。ストレッチゴールとして全国各地の映画館・カラオケルームでのライブビューイングが実現したほか、YouTubeLiveでも配信され、同時接続数は2万人(累計視聴は約20万人)を突破し、ハッシュタグ「#花譜不可解」は、いっときTwitter世界トレンド1位を記録しました。

 花譜は何者なのか。どこから来て、どのようにしてバーチャルシンガーとして活動するようになったのか。ライブ実施が決まった際、花譜のプロデューサーはこうつづりました。

場所は言えませんが、彼女は今も東京からは遠いところに居ます。
物理的な状況から東京での活動が難しく、出会った当時は13歳で中学生という立場、またそれ以外のいくつかの事情も重なって、当時本格的な音楽活動をするのは実質不可能な状況でありました。
そして、顔出しすることに強い抵抗感がある彼女の御両親に「バーチャルYouTuber」というカルチャーが存在する事を説明し、VTuberを支える文化やテクノロジーを活用していけば、遠く離れた場所でも未成年が安全に活動、運営が出来るのでは無いか?とお話をした結果、あるひとつの可能性が見えてきたのです。

出典:花譜ファーストワンマンライブ「不可解」につきまして

 あるのかないのか。居るのか居ないのか。存在の境界が曖昧だったバーチャルの世界において、彼女はむしろ、バーチャルだからこそ存在できていると言えます。年齢、距離、立場……さまざまなハードルを乗り越え、日本中に歌を届けている花譜さんとプロデューサーさんにインタビューを行いました。

花譜(@virtual_kaf

バーチャルシンガー。日本のどこかにいる15歳。中学生だった2018年10月から活動を開始し、あどけないながら高い表現力を伴った歌唱、そしてミステリアスなキャラクターによって、瞬く間に人気を集める。8月1日にワンマンライブ「不可解」を恵比寿LIQUIDROOMにて開催。ライブにあたって実施されたクラウドファンディングでは目標を大きく上回った。全てのオリジナル音楽を、気鋭の若手ボカロP「カンザキイオリ」が手掛けていることでも注目を集めている。9月11日、1st アルバム「観測α」「観測β」をリリース(BOOTH限定販売)。KAMITSUBAKI RECORD所属。


引っ込み思案の女の子が、バーチャルシンガーになるまで

――あらためて、花譜さんはなぜ、バーチャルシンガーという形で活動することになったのでしょうか。

花譜プロデューサー:花譜は13歳のとき、オーディションなどではなく本当に偶然、KAMITSUBAKI RECORDのプロデューサー・運営チームと出会いました。その当時から素晴らしい歌声だと感じていましたが、さまざまな障壁があり、通常の形の活動は難しいと判断しました。私たちはそれでも諦めきれず何度も本人やご両親と話し合い、バーチャルシンガーという選択肢を選ぶことでようやくデビューできました。

―― バーチャルシンガー活動をする前、小学生ぐらいの花譜さんはどんな子どもでしたか?

花譜:すごくぼーっとしている子だったと思います。今もですが(笑)。小学1年生のころは四葉のクローバーを探しに行ったり、本を読んだりと1人でいることが多かったです。2年生くらいで仲良くなれた友達がいて、ずっとその子たちとおしゃべりしていましたね。趣味は石集めで、あと忘れものがすごく多かったです……。


ゲームセンターで 「かふです」というあいさつが定番(画像はInstagramより)

 音楽については幼稚園の頃からAKB48やジャニーズが好きでした。小学5年生のときHoneyWorks(※)にどハマりして、ボカロ沼へ引きずり込まれ、その後は邦ロック沼へと順番に沈んでいきました。

※動画サイトを中心に活動するクリエイターユニット。2014年にメジャーデビュー。

―― 歌を聴くだけでなく、自ら歌うことも好きだと思うようになったのはいつ頃でしたか。

花譜:いつ、という明確な時期は覚えていません。でも自分の歌を褒めてもらったことがあったので、「褒められたかったから」っていうのも正直あるんですけど……好きな曲を歌うのって本当に楽しいですよね。好きだから好き、という感じです。


夜のトンネルで 不安定で繊細で、それなのに強い意志を感じる唯一無二の歌声が魅力(画像はInstagramより)

 私はもともと自信がある方ではなかったのですが、こうして歌わせていただくようになってから、自分に対して少し自信がついたと感じます。あと、前までは「好きだからただ歌う」って感じだったけれど、「歌がうまい人ってたくさんいるんだなあ」と最近本当に身に染みて感じるので、やっと「負けたくないな!」と思うようになりました。

―― カバー曲を歌うときに心がけていることはありますか?

花譜:本家様をよく聴き込むのはもちろんですが、他の方々のカバーも聴いて「この人はここをこういう風に歌うんだ、じゃあ私はどうしよう?」とちゃんと考えて、考えたことを詰め込んで歌おうって思ったりしています。でも、つい楽しくなっちゃって、そういうことを忘れて歌ってしまうこともあります……!


フェンスの前で 竹内まりや、大森靖子、東京ゲゲゲイ、崎山蒼志、ボカロなどカバーの幅が広い(画像はInstagramより)

―― ビジュアルデザインはどのようにして決めていきましたか? ピンクのおさげにぱっつん前髪、そして吸い込まれるような瞳。花譜さんの日常のお姿と共通している、あるいは意識している部分もあるのでしょうか。

花譜プロデューサー:ビジュアルデザインはイラストレーターのPALOW(@PALOW_)さんや映像クリエイターの川サキ(@Knji__k)さんとの日々のキャッチボールの中で、徐々に輪郭を帯びてきた感じです。普段の花譜自身と、シンガーとしてアバターをまとった花譜は、どこかほっこりした独特の雰囲気が共通していると思います。


1st ワンマンライブ「不可解」を振り返って

―― 先日のワンマンライブは、クラウドファンディングにおける当初の目標を大幅に上回る形で実現しました。たくさんの支援が集まってきている様子を、どのように見ていましたか?

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