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辞書作りのシステム化は“辞書の定義”まで変えるかもしれない 『大辞林』編集長インタビュー(2/3 ページ)

「分からない言葉があったら引く」以外の使い方も生まれるかも。

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辞書づくりのシステム化で“辞書の定義”が変わる?


インタビュー前に、ねとらぼのTwitterアカウントで一般募集した質問

――― 読者から質問募集をしたら、「『スーパー大辞林3.0』はなくなるんですか」というものがいくつか来ていました

ながさわ:第3版までは書籍版の『大辞林』、デジタル版『スーパー大辞林』に分かれていたんですよね。

編集長:ええ。『スーパー大辞林』では増補・更新が行われていて、第3版に対応した『スーパー大辞林3.0』では書籍未収録の語が2万くらいありました。つまり、まず書籍版『大辞林』というものがあって、そこにデータを上乗せしたものが『スーパー大辞林』。

 ですが、第4版では“辞書とは何なのか”という発想を改めて、「増補分もユーザーに見えない部分も、全部ひっくるめたデータ自体が『大辞林』」ということにしました。つまり、まず『大辞林』というデータの集まりを考えて、その見せる方法として書籍版やデジタル版がある。どちらも『大辞林』であることには変わりがない。

 だから、書籍版にアプリを付属して、紙・スマホ両方で使えるようにしたんです。デジタル版には書籍未収録語、アップデートによる増補などがありますが、それらも含めたものが『大辞林』なんだよ、という意味合いで。

――― 「大辞林=データの集まり」という理屈は分かるんですが、ちょっと抽象的でピンと来にくいところがありますね

 そもそも辞書には掲載されていない情報がたくさんあって。かつて当社(三省堂)から刊行された『新明解古語辞典』の補注版を見ると、どういうことか一目で分かると思います。持ってきましょうか。


『新明解古語辞典』補注版


通常の『新明解古語辞典』と比べると、ちょっと大きい


普通の辞書+空きスペースに追加情報

――― 余白部分に「なぜこういう語義を採用したのか」「参考文献は何なのか」といったことが書かれていますね。サイズも一回り大きくなっていて

編集長:書かれていないだけで、辞書の裏側にはこういった編集情報があるわけです。

ながさわ:いいなあ、これ欲しいなあ……。

――― 辞書コレクターの血が騒ぎ始めましたか(笑)

※余談だが、ながさわさんはこの取材後、『新明解古語辞典』補注版を無事ゲットできたとのこと。やったー!

ながさわ:同じように『大辞林』の補注版も出たらうれしいですね。現代語の典拠、語義の採用理由などが書いてあったらすごく楽しそうです。

 “載っていない情報”でいうと、ねとらぼ読者からの質問で「語の採録時期は載せないのか?」というものが。『Dual大辞林』(第3版のサービス。紙、Webの2通りで使えるのでDual/デュアル)のころはやってましたよね。

編集長:ええ。今でもデータにはタイムスタンプがついていますから、出すことは可能ですね。

――― 「この新語、あの頃から使われてるんだ」みたいな発見がありそうですね。辞書で分かる情報が変わると、使い方も変わるのでは?

ながさわ:正確には「言葉が誕生した時期」ではなく「辞書に載った時期」ですが、目安になるでしょう。

編集長:大辞林のシステムには今後もさまざまなアップデートをしていく予定ですが、「どうやって辞書のデータを見せるか」「どうユーザーの要望に答えていくか」が課題ですね。

(続く)

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