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【漫画でレビュー】「女と女の関係」を求めている人に教えたい! 80年代ロサンゼルスが舞台の女子プロレスドラマ「GLOW」のアツさ(2/2 ページ)

5時間くらい話し合いたい!

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 サムとルースの性別や年齢を超えた友情も良い。いつも「ダサい」「しみったれてる」などとボロクソいいつつも、ルースが本当に困った時やつらいときは駆けつけてくれるサム。ルースの妊娠が判明したときには、病院に一緒について行き、彼女のために夫のふりをしてくれた。そしてパーティで暗い顔をしているサムに「ひとりで大丈夫?」と声をかけるなど意外にも母のような暖かさでサムを支えるルース。さらにお互い立場などは関係なしに、アドバイスを求めたり与えたりするところも良い。

 夢おいびとでありながら、くすぶっている現状からどうにかしてぬけだしたい。そんな思いをもつ点では、2人はとても似通っている。師匠と弟子のようで、同じ夢をもつ同胞のような、唯一無二のすてきな関係だ。

 そんなアツい友情がいくつもそこにあるのは、GLOWに関わる全員が「より良いものを作りたい」という強い思いでつながっているから。

 友情には2種類あると、むかしきいたことがある。おたがいを見つめ合う友情と、同じ方向を見て進む友情だ。

 GLOWのチームはみんな、お互いをしっかりと見つめあいながら、同じ方向にむかって進んでいる。そんなどう考えても“最強”としか言いようがない友情は、見ていてうらやましくなるほどだ。

GLOWに込められたメッセージ

 Gorgeous ladies on wrestling(ゴージャスレディーズオンレスリング)。リングの上の美しき女性たち、それがGLOWだ。“GLOW”という単語を英辞書で引くと、輝き、ほてりという単語の意味合いと、「幸せで健康なため、目が輝き魅力的にみえること」との解説がある。それがそのまま、このドラマの説明になる。

 物語の序盤では、主人公のルースも他の女性たちも、どこかくたびれたような様子だった。だがエピソードが進むにつれ、彼女たちはどんどん魅力的になっていく。文字通り体を張って自らの未来をつかもうと汗をながし、体当たりで新しいことに挑戦していく中で、自分を表現することを恐れなくなったのだ。みんなよく食べ、よく笑う。漫画のようなヘアスタイルや衣装や体に塗られたグリッターのためだけではない。彼女たちは、「自信」という名のパワーによって、体の奥底からあつく輝いているのだ。80年代のネオンのきらめきを感じる音楽にあわせてたたかう女子たちの格好良さは涙がでてしまう。

痛みを恐れない

 このドラマは、ルースがとある法廷ドラマのオーディションを受けているシーンからはじまる。女性秘書役のオーディションで、男性弁護士役のセリフを熱意100%で涙ながらに演じたルース。プロデューサーに「わざと男のセリフを読んだわね」と言われたとき、「女キャラは愛想笑いや相づちを打ってばかり。女のキャラは中身がないから、カッコいい男キャラの台詞を読んだのよ」と言い放った。

 80年代は新しさの時代とはいえ、現代に比べかなり女性は虐げられていた時代。職場での主な仕事はコーヒーを入れることやコピーを取ることだった。

 そんな時代にヘッドバットを食らわそうと身構えるような彼女の強さとハングリー精神が、まわりの女性レスラーたちを引っ張っていく。監督であるサムでさえも、ルースの体当たりで夢をつかもうとする姿勢に何度も救われる。

 ときどき、全力で取り組むことそのものに対して尻込みしてしまうことがある。「本気で好きになって傷ついたら?」「本気でやってみて失敗したら?」そうやって過去に本気で戦って負った傷が、自分の足を引っ張るから。

 ルースはそういう状況に打ち勝つ強さの秘訣(ひけつ)を持っている。それは彼女の不屈の「当たって砕けろ」精神だ。痛みなんて怖くない。むしろ痛みは頑張ったからこその勲章だ。クールにそつなく生きるのもいい。だけどたまには、イタくてダサくて、笑っちゃうほど一生懸命になることも必要だ。

 ひとりで戦うのが怖いなら、GLOWの仲間たちを思い出せばいい。あつく輝くゴージャスレディーズたちが、いつだってそこにいて、全力で戦ってくれるから。

GLOW
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