近年、カタログや新車ニュース、プレスリリースなどで見る新型車の紹介項目に「新世代のナントカプラットフォームを採用し、剛性を高めつつ低重心に……」などということが書かれています。
このプラットフォームって、結局何のことなのでしょうか。Wikipediaによると「複数の自動車車種によって車両の構成部品が共有されている際の構成部品の一連の組み合わせ」とあります。プレスリリースにもよく、サスペンションを含めたシャシーやフレーム、パワートレインなどの写真が添えられています。
しかし、厳密にはそのモノだけを指しているわけではないようです。トヨタ自動車のTNGAプラットフォーム説明サイトによると、TNGAは「もっといいクルマづくり」を目指す「設計思想」のこと、としています。
クルマ離れといわれて久しい中、自動車メーカーはコストや開発期間を抑えながら、幅広く客のニーズに応えられる車種ラインアップを充実させるために工夫を凝らしています。また、Connectivity(接続性)の「C」、Autonomous(自動運転)の「A」、Shared&Services(共有とサービス)の「S」、Electric(電動化)の「E」の頭文字を取った「CASE」に適応していくためのヒト、コトの研究開発にも余念がありません。
トヨタ自動車の現世代プラットフォームは「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」と呼ばれます。4代目プリウスに初めて採用し、プリウスを中心にC-HR(関連記事)やプリウスPHV、カローラ(関連記事)などの中型クラスに適用(GA-Cプラットフォーム)。続いてGA-Kプラットフォームとして大型クラスのカムリ(関連記事)やRAV4(関連記事)、高級車クラスのレクサスLC(関連記事)やLSへ、そして「新型ヤリス(旧ヴィッツ)」(関連記事)でコンパクトクラスにも適用車種を拡充してきています(GA-Bプラットフォーム)。
骨格や主要パーツが共通化されていれば、そこに組み合わせるエンジンやトランスミッション、ハイブリッドシステムなどのパワートレイン、あるいは安全運転支援技術などの各種装備も、それぞれにゼロから専用開発するのではないので効率化を図れます。商品力が高められ、部品調達もしやすく、価格メリットも出しやすくなります。また、新たに開発された技術やパーツも、マイナーチェンジなどのタイミングで惜しみなく迅速に既存車種へ展開しやすくなります。
近年のマツダ車には「SKYACTIV」という単語がよく出てきます。SKYACTIVは、単にシャシーなどの部品を共通・流用するだけのアプローチではなく、設計思想や要素技術、構造までも揃えて作り上げる考え方、概念だとしています。客には「これぞマツダ車だ」「一目見ただけでマツダ車だと分かる」といったデザインテーマやメッセージも共通して伝わりやすく、また年次改良のたびに最新車種と同じ新技術や新型エンジンを他の車種にも追加していくといった展開も可能にします。
共通化する範囲や思想に違いはあるものの、このようなプラットフォーム方式/モジュラー方式という考え方は各自動車メーカーが共通して採用しています。代表的なものとして、トヨタの「TNGA」、日産・ルノー・三菱連合の「CMF(コモン・モジュール・ファミリー)」、スバルの「SGP(スバルグローバルプラットフォーム)」、フォルクスワーゲングループの「MQB(Modulare Quer Baukasten)」や他社にも供給する計画というEV向けプラットフォーム「MEB(Modularer E-Antriebs Baukasten)」などがあります。
現代のクルマ開発におけるプラットフォームとは、「基本構造を共通化しながらさまざまなクルマを作るための、メーカーのアイデンティティも示す、とても大切な概念」といえそうです。もちろん基本構造にはシャシー/骨格も含まれます。共通化を進めやすく、分かりやすい部分の一つなので、ざっくりシャシーと理解してもよいのだろう、とは思いますが……。
ともあれ、クルマの比較検討や選定で困ったら、メーカーの「プラットフォーム」の項目のページも参照してみてはいかがでしょう。メーカーの考え方やスピリットなど、また違う印象や新しいイメージが得られるかもしれませんね。
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