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瀬下寛之総監督×声優・島崎信長に聞くアニメ「Levius」 ポリゴン最新作で口をそろえる「過保護」というキーワード(2/2 ページ)

セルルックCGの最前線を行くポリゴン。その先には、「限りなくカリカチュアされているのにもかかわらず十分な肉感がある」世界が見えているようです。

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僕が作るアニメは肉感をもっと表現していく方向に進化させたい――

―― 過保護アニメ(笑)。CG以外の部分、という文脈で続けてお聞きしますが、例えば私はシドニアを「平成の宇宙戦艦ヤマト」くらいに捉えていて、絵作りはもちろんですが、気分を高揚させるOPやカメラワーク映えする音響などが高いレベルで融合していると思うんです。一方で、レビウスは、戦闘シーンの高揚感はもちろんありますが、OPもEDもややポップな曲調で、これまでの作品とは何か違うものを作り上げようとしているのかなという印象も受けました。

瀬下 「宇宙戦艦ヤマト」は光栄過ぎますね(笑)。まあ、CG屋がCGうまいのはむしろ当たり前で、“CGスタジオはCG以外を大事にしよう”というスローガンでやっているので、そうした連携はとても大事にしています。今作の主題歌やエンディングについて言えば、僕は、ストーリーの核となることを素直に表現してくれている楽曲だと感じました。短時間のミーティングで、こんなにも作品を理解してくれているのが本当にすごいです。

 そして音響監督の岩浪(美和)さん、音楽の菅野祐悟さんは、「亜人」「BLAME!」でご一緒した最高のチームであり、今作の音響も音楽も、とにかく素晴らしい仕上がりです。ストーリーで伝えたいテーマにあらゆる要素が寄り添ってくれているんです。

―― 今作の3DCGの特徴、あるいは瀬下さんが進化させたい方向を言語化するとどういったものですか?

瀬下 3DCGの特徴……というのは難しい質問ですね。今作に絞っていえば、肉体が持つ質量感といいますか、3DCGならではの造形がもたらす肉感や量感かもしれません。例えばザックスがどれくらいの体重か分かる感じというか。シドニアのころと比較すると、肉体の持っている質量感は格段に上がっていると思います。この辺りは片塰(満則)造形監督の貢献が大きいです。進化させたい方向もいろいろありますが、このテーマは僕にとってはとても重要です。肉感をもっと高めて、省略された絵にもかかわらず生々しく実体を感じるようにしていきたいです。

―― 別のインタビューでは、場面(シーン)設計と配置演出(ステージング)の比重が高いスタイルだとお話されていました。いわゆる格闘ものの今作において、没入感を高めるためにどんなチャレンジがありましたか?

瀬下 これまでの作品と同様に没入感や現実感を高める方法はいろいろ使っていますが、残念ながら映画「スパイダーマン:スパイダーバース」くらい大胆な空間演出というところまでは到達してません。

 今回は何をやったかについてあえて1つ挙げると、配置演出上は“過保護な距離感”を意識しました。特にザックスの動きを見てほしいですが、彼以外にも主要キャラたちがとにかくレビウスのことが大事なんだと分かる立ち位置です。

 例えば、小さな子どもを親が叱っている場面で、親が立ったまま子どもを見下ろすのと、子どもの目線にしゃがんでいるのでは、それだけで印象が変わりますよね。もちろん、そこには表情やライティングや音楽、いろいろな感情表現の絡み合いがあるのですが、まずは最も基本となる立ち位置や距離感がもたらす愛情の伝わり方が今作のこだわりといえます。レビウスに対するザックスの寄り添い方がいつも絶妙で、監督の井手くんがいい仕事をしてくれています。

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“過保護な距離感”は特にザックスの動きによく現れているという

ザックスから離れられなくなってほしい――

―― なるほど。CGに対する考え方をもう少しお聞きしますが、瀬下監督は過去にスクウェアUSAの映画「ファイナルファンタジー」(2001年)でアートディレクターを務め、今でもスクウェア・エニックスで「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン」や「キングスグレイブ ファイナルファンタジーXV」を手掛ける野末武志さんと一緒に働いていた時期もありますよね。そこから、瀬下さんがセルルック、野末さんがいわゆるフォトリアルなCG表現をそれぞれ志向されていて興味深く感じます。

瀬下 野末くんはスクウェア(現スクウェア・エニックスの前身企業)時代の後輩です。彼は今でもフォトリアルなCG表現を頑張っていて素晴らしい成果を出していますが、正直言って僕はフォトリアルを一度は諦めました。とにかくCGで長編ストーリーを作りたいということに焦っていましたし、フォトリアル系CG映像の宿命というか、その時間とお金の掛かり具合に対して人生の残時間との折り合いがつかなくなったんです。

 今、僕が求めている世界は、「スパイダーバース」のような限りなくカリカチュアされているのにもかかわらず十分な肉感=実体感=存在感があるもの。自分の物語世界では、体格のよい警官が車に乗るとサスペンションがしっかりと沈んだままでいたいですね。

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圧倒的に愛されるザックス

―― お話を聞いていると、今作で注視すべきポイントもおのずと定まってくる印象ですが、監督イチオシのシーンはありますか?

瀬下 戦闘の盛り上がりは毎回用意していて、レビウスの戦いっぷりのかっこよさも魅力ですが、やはりザックスですかね。ザックスの優しさがクセになって離れられなくなってほしい(笑)。ザックスがいるところ、その作品世界に「ただいま」と帰りたくなるようなものを目指したつもりです。そんな心の高揚を共有できたら幸せです。

島崎 あったけぇ……。テンプレというかシンボリックにはやってないので、心にくるんだなと。非日常である戦闘ももちろんですが、彼らの日常が大事に感じられる作品ですよね。

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ねとらぼは瀬下さんの作品をこれからも注目し続けます!

(c)中田春彌/集英社 ポリゴン・ピクチュアズ


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