コミカライズを自ら提案、Kindleで配信。月に84万円売れました──ナカシマ723さんに聞く「だから今、やるしかないんです」(3/4 ページ)
「魔王を倒すために算段をつけて、なにを準備していくか」。同じように現実も攻略すべきもの。漫画家の今を感じさせる、ナカシマ723さんのインタビュー。
描かないことにも、売れないことにも、言い訳はできない時代になってる
出版社のほうで続巻の予定が決まらず、それでコミカライズ企画もほぼ終わったとなったときに私、「この物語は、ここで終わるべき話じゃないんだ」って思いました。「勇者のクズ」は、自分の運命は自分で決める。世界がどうであろうと、俺はこのやり方でやるぜっていう話なので。だからやりたかったんです。
――そうですね! それが出版社の大人の事情で終わってしまいましたとなると、寂しいですよね。
そうですよ。それで終わるべきじゃないですよ。
――正直、新人賞、あるいはコンペや企画会議にしても、どこか運任せのガチャ。自分で自分の運命を操作できないと思うところはあるじゃないですか。それは、自分の実力のなさの言い訳なのかもしれませんが。
編集者さんでも、ある人は「すごく面白い」っていったものが、他に持っていくと、全然、駄目みたいなこともありますし。たまたま、その雑誌のカラーとして必要とされない、といった環境の事情とかも、あったりしますね。
――しかし、「じゃあ自分でやるんだ」と思えば、自分が自分の運命を操作することになりますね。
逆に言えば、やってみてダメだったら、それで諦めがつくんですよ。それは、すごくいいことだと思います。納得できれば、それでいい。その意味では今の時代は、なにも言い訳できない。描かないことにも、売れないことにも、別に言い訳はできない時代になってると思います。
――ただ、自分自身で連載を実現するためには、費用として月に30万円必要だと公開なさっていますね。
生活費やアシスタントにお支払いするお金も含めて、全部込みでそれだけ必要ってことです。自分ひとりで生活し、まったくアシスタントを使わないのであれば、月に20万円あればやれると思います。ただ「勇者のクズ」の場合は、作画コストがけっこうかかるんですよ。
よくマンガについて「原稿料だけだと赤字だ」なんてことを言われるじゃないですか。それって実際にその通りで、一般的な原稿料がページあたり1万円だとすると、それでぎりぎりコストと相殺くらい。つまり自分で200ページのマンガを描こうと思うと、200万円が必要になるんです。もちろんこれは完全に、作画コスト次第の話なんですけど。
――たとえば、日常系の4コマや、ショートのギャグマンガであれば、作画コストも抑えることはできるかもしれませんが。
ただ、そうしたマンガは単行本を売っていくことが難しい。「単行本が売れるマンガって、もう本当にその瞬間を見ていたい、何度も見返したいとか、とにかくすごく続きが読みたい気持ちになってもらう必要があるじゃないですか。その意味ではストーリーものの方が、作画が一定レベルに達していればですが、単行本を買ってもらえる作品にはなりやすいと思ってて。そのためにはアシスタントに入ってもらわないと作画ペースの維持もむずかしい。ストーリーを連載するためには、お金が必要なんです、どうしても。
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