神を信じる全てのみなさん、そして無神論者のみなさんも、こんにちは。
この記事では日本の人口1パーセント以下、激レア存在であるキリスト教信者の私が、クリスチャンのクリスマスを紹介します。
そもそもクリスマスって何の日?
日本ではなぜかクリスマス=「恋人と過ごす日」というイメージが広まっていますね。 クリスマスをひとりぼっちで過ごすことを「クリぼっち」と表現して嘆く風習があるほどだとか。
このイメージ、キリスト教信者からすると謎です。
キリスト教信者にとってのクリスマスは、イエス・キリストの誕生を祝う日です(この日に生まれたわけではない:諸説あり)。キリスト教文化圏では、クリスマス=家族と過ごす日という認識なんですね。
信者ではない方にも誕生を祝っていただけるのはうれしい。でも、「クリスマスつらい」と嘆くのはちょっと待ってほしいのが正直なところです。クリスマスのせいで嘆いている人がいると、クリスチャンはつらい……。
何のためにイエスが生まれたと思っているんですか? そう、クリスマスにひとりぼっちでいる人たちのためだよ!!!
イエスの語った言葉にはこんな一節があります。
「心の貧しい人々は、幸いである、天の国はその人たちのものである。悲しむ人々は、幸いである、その人たちは慰められる。」(マタイによる福音書5:3-4)
この「心の貧しい人々・悲しむ人々」とは、現代でいえば「クリぼっち」を嘆いてるような人のこと。イエスは世間的に不幸だとされている人を救うために来た! と宣言しているわけです。
そんなイエスの誕生を祝う日は、日本では資本主義社会が作ったイメージに塗り替えられているわけですが、キリスト教徒としてはそういったものに翻弄されず、もっと別のやり方でこの日を楽しんでいただきたい……というのが本音です。
クリスマス、クリスチャンはどう過ごすの?
じゃあクリスチャンはクリスマスをどう過ごしているの? というと、実は我々のクリスマスは9月から始まっています。
※ただし、クリスチャンと一口にいっても、教派ごと、教会ごとにクリスマスの祝い方も様々。 たとえば、正教会という教派ではカレンダー(教会暦)が他の教派と違うため、クリスマスが12月25日ではない、なんてこともあります。 また、同じ教会の中でもコミットの仕方は信者によって違います。 毎週礼拝に来て、行事の準備をして…という方から、年に数回だけ、クリスマスだけ来るという方まで、どの方も立派な「信者」です。
今回はあくまでも「とあるプロテスタント教会」の「とある信者」の場合と考えてください!
9月〜11月
クリスマスのために具体的に動き始めるのは9月ごろから。
まだ秋(というか残暑)じゃん! と思うかもしれませんが、これは教会には1週間に1回、日曜日にしか集まらないため。信者とはいえ仕事や学校もあって使える時間は限られているので、準備は早めから、ちょっとずつが鉄則です。
この期間にイベントの計画・会議をし、出し物などの準備を進めていきます。
たとえば、私は教会学校(子ども向け聖書講座)のスタッフなので、子どもたちと降誕劇の練習・準備を進めていきます。また聖歌隊員でもあるので、クリスマス・キャロルや賛美歌の練習をします。
アドベント(待降節)
クリスマスの4週間前から、アドベント(待降節)という期間に入ります。 advent=キリストのこの世への到来、という意味で、クリスマスをお迎えする「心の準備」期間とでもいいましょうか。
この期間から、教会でもツリーやリースの飾り付けをはじめ、一気に華やかな雰囲気になります。 と、同時に準備も大詰め。そこに「師走」と言われる忙しさが重なり、信者の12月は秒で過ぎ去ります。
この辺りからイベントも増えていきます。教会内には年齢層ごとのグループ(教会学校、中高生会、青年会、婦人会、壮年会……)があり、各グループでクリスマス会を企画しています。 教会全体で行うクリスマス礼拝と比べると、少し内輪向きのまったりした集まりですね。
また、教会や教派を超えての礼拝、コンサートやクリスマス・キャロルなど音楽系のイベントなど、大規模な集会も開催されます。
こういったイベントを全てクリスマス当日にぶつけるわけにはいかないので、たいていアドベント期間の土日に前倒しで行います。結果として、クリスマスに近づくにつれて「あれ……? 毎週末予定あるな……?」という事態に。
アドベントを楽しむ3つのアイテム
そんな忙しいアドベントですが、タスクに忙殺されず、ちゃんと心備えをして過ごすためのアイテムがあります。
- アドベント・カレンダー
クリスマスまでのカウントダウンができる、仕掛けつきカレンダー。 数字の順に開けていくと、中に聖書の言葉が書かれたカード、お菓子、オーナメント(クリスマスの飾り)などが入っていたり、隠れた絵柄が現れたりと、毎日ちょっとずつ楽しめます。
最近は、化粧品のクリスマスコフレなどでもこのタイプのものが話題ですよね。
- シュトレン
アドベントに食べる特別なお菓子の一つ。 洋酒に漬けたフルーツを焼き込んだ硬めの菓子パンで、白い粉砂糖で覆われています。
大きな塊でドン! と売っていますが、一気に全部食べちゃダメ! 毎日少しずつスライスして食べるのがこのお菓子の楽しみ方です。 日が経つにつれて洋酒とフルーツの香りが生地全体に染み渡り、どんどん風味がよくなっていきます。味の変化で、クリスマスが近づいて来ているのを実感するのです。
とはいうものの、最初からおいしいシュトレンに当たってしまうと、まじで食べ過ぎてクリスマスまでもちません(実際、我が家では3日以上もったためしがない) 。
- クリスマスカード
友達、親戚、お世話になった人などに渡します。
信者のクリスマスカードには、相手へのメッセージ+「聖書の言葉」が書かれているのが特徴(信者ではない方に渡す時には、遠慮して聖句を書かない方もいます)。聖句入りのクリスマスカードはキリスト教系の書店で購入できます。
また、カード自体を手作りする信者さんも多いです。 私も同じ教会のマダムに手作りのカードをたくさんいただくので、そこに自分で選んだ聖句を書いて、友達に送っています。 送る相手に向けて聖句を選ぶのは、その人について神に祈るのと同じで、とても大事な時間です。
いざクリスマス!
クリスマス礼拝
クリスマス当日が平日である場合、メインの礼拝はアドベント最後の日曜日に行います。平日仕事のある方も参加できるし、家族・友人を誘いやすいからです。
礼拝のあとは、みんなで食卓をかこみつつ、教会学校の子どもたちの劇や、出し物を鑑賞します。
この時の食事は、持ち寄りパーティ制になっていることが多いです。こういう食事会を「愛餐(あいさん)会」といいます。
クリスマス・イブ礼拝
24日の夜に行います。「キャンドルサービス」といって、ろうそくの火を灯して行う礼拝は特別感たっぷりです。(サービス=礼拝)聖歌隊が歌うクリスマスの賛美歌を聴き、牧師さんのお話を聞き、ろうそくの火を見つめながら、2000年以上前のキリストの誕生に思いをはせる……。SNSを見る暇なく、クリスマスの夜が更けていきます。
ちなみになぜ前日を祝うのかというと、24日の夜=すでに25日(クリスマス)が始まっている、と考えるからです。イブ=イブニング、つまりクリスマスイブとは「クリスマスの夜」という意味。古代ユダヤ社会や中世のヨーロッパでは日暮れが日付の変わり目だったので、日が落ちたらすでにクリスマスの1日が始まっているのです。
もし、本気で「クリスマスつらいなあ……」と嘆いている人がいたら、「クリスマスはあなたのための日です」と伝えたい。
ロマンチックとは遠いところで、でもガチでクリスマスを祝っている信者がいることを思い出してください。もしよかったら、そういうイベントにちょっと参加してみても。世間のイメージとは一味違った“真のクリスマス”を味わうことができるはずです。
最後にもうひとつ、イエスの言葉を引用しておきます。「疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう」(マタイによる福音書11:28)。メリークリスマス!
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