たった140円のきっぷで1000キロ以上も乗れる!? 鉄オタだけが知る年に1度だけ実現する「幻の最長ルート」とは(2/2 ページ)
JR線の一部エリアでは、ルールに従えばどんなに遠回りをしても最安の運賃で乗車できるという特例があります。最長のルートは1000キロを超え、実行できる日は年に1度だけ。
140円で移動できる最長のルートは? 年に1回、終夜運転の日だけ実行可能
東京近郊区間内の最安運賃(140円)で、現時点で最も長いルートは次の通りです。最長ルートは新路線や新駅の開業によって経路が変わったり、距離が変動することがあります。ざっくり羅列すると以下のようなルートになります。
北小金-[常磐線]-友部-[水戸線]-小山-[両毛線]-新前橋-[上越線]-高崎-[高崎線]-大宮-[川越線]-高麗川-[八高線]-八王子-[横浜線]-橋本-[相模線]-茅ケ崎-[東海道本線]大船-[京浜東北線・根岸線]-鶴見-[鶴見線]-浜川崎-[南武線支線]-尻手-[南武線]-川崎-[東海道本線]-品川-[横須賀線]-武蔵小杉-[南武線]-立川-[中央本線]-西国分寺-[武蔵野線]-武蔵浦和-[埼京線]-赤羽-[京浜東北線]-南浦和-[武蔵野線]-西船橋-[総武本線]-佐倉-[成田線]-松岸-[総武本線]-成東-[東金線]-大網-[外房線]-安房鴨川-[内房線]-蘇我-[京葉線]-東京-[総武本線]-錦糸町-[総武線]-秋葉原-[山手線]-神田-[中央線]-新宿-[山手線]-日暮里-[常磐線]-馬橋。
スタートは北小金。ゴールの馬橋駅間は最短経路で乗車すると2.9キロ、乗車時間は約4分の距離ですが、最長ルートで乗る場合、距離は営業キロで1035.4キロにもおよびます。
わかりにくいと思うので、路線図と照らし合わせながら、順番にみていきましょう。
この最長ルートの走行距離は、東海道・山陽本線の東京〜新山口駅間(1027.0キロ)に相当するほどで、圧倒的な距離であることがよくわかります。運賃(140円)を距離で割ると、1キロあたり約0.15円という異常なコスパで電車を利用できちゃいます。
ところが、この行程は長すぎて1日では乗り切れず、途中で終電を迎えてしまいます。大都市近郊区間内のきっぷは乗車日の終電まで有効という決まりがあるので、通常ではこの大移動を140円で実行するのは不可能です。
しかし、年に一度だけ例外があります。それが年末年始の12月31日から翌年1月1日の期間、一部区間で実施される「終夜運転」。この間は切符の有効期限が規則上2日間になります。
終夜運転が行われると、普段の終電が存在しない区間が生まれ、きっぷの有効期限もややこしくなってしまいます。
JRのきっぷには、途中下車しなければ有効期間を過ぎて(日付が変わって)も目的地の駅まで利用できる「継続乗車」という規則があります。これは当日有効の乗車券で深夜帯の電車に乗って、途中で日付が変わっても目的地まで行けるというもので、普段からこの規則を知らずのうちに活用している方も多いはずです。
大回り中に終電となってしまったら、通常は改札を出なくてはなりません。つまり大回り乗車はその時点で終了となり、その駅までの運賃を精算する必要があります。しかし、12月31日は終夜運転が行われ、途中で改札を出る必要もないため、この継続乗車を利用して大回り乗車の最長ルートを実行できるのです。
終夜運転は通常よりも運転本数が少なく、運転する路線も限られています。あらかじめ時刻表などで終夜運転列車の時刻を確認したうえで実行しないと、途中で失敗となってしまうので、実行しようと考えている人は事前のリサーチも欠かせません。
最長区間に限らず、大回り乗車の実行中に途中で車内改札が行われた場合や、目的地で下車する時に不正乗車を疑われる場合もあるので、実行するときは行程表を用意して、経路をいつでも説明できるようにしておくと安心です。行程表を用意すれば、自身でルートを再確認するのも容易なのでぜひ作成しておきたいところ。路線図にペンなどで線を引いた程度のものでも問題ないですよ。
また、大回り乗車をSuicaなどのIC乗車券で実行すると、改札口に入ってから出るまでの時間がかかりすぎて、駅によっては自動改札機でエラーが発生する可能性があります。こういったトラブルを避けるためにも、IC乗車券ではなくきっぷを使い、下車駅では駅員に説明して降りることをおすすめします。
そして、乗車券と定期券は規則上別物なので、定期券での大回りは認められていません。普段定期券を利用する区間で大回りをする場合も、乗車券となるきっぷを購入する必要があります。
大回り乗車は一度改札内に入ると目的地まで改札を出られませんが、時間に余裕のあるルートを選択すれば、窓の外の風景をゆっくり楽しんだり、乗り換え駅で駅ナカ施設に立ち寄って食事をしたりといったことも可能です。大みそかに実際に最長ルートの大回りに挑戦しようとしている人も、休日にちょっとした大回りを楽しみたいという人も、きっぷのルールをよく確認し、規則を守ったうえで挑戦しましょう。
(大泉勝彦)
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