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劇場版コナン「瞳の中の暗殺者」ファン投票1位で今夜金ロー放送! ファンが語る“褪せない魅力”とは?(2/2 ページ)

ファンが早口で魅力を語ります。

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“コナンが一番本気になる”話

 まず本作はオープニングがめちゃくちゃいい! 「オレの名前は工藤新一」という言葉から始まる“これまでのあらすじ”パートは劇場版コナンおなじみですが、あのシークエンスが始まる前のイントロのムービーが大変いい。

 怪しげな表情をした本作の容疑者たちがバンバンバン! とテンポ良く映されていく。その中には目暮、白鳥、妃、小五郎といったレギュラーキャラも入っているのです。この冒頭から、「この中に犯人がいる」ことを予感させ、テンションが上がります。

 容疑者たちのバックに流れていく英語やローマ字のキーワードは、よく見ると「Happy Birthday」「願い事ひとつだけ」など……コナンアニメの主題歌のタイトルなんです。あのころ、ビデオを一時停止して全てを書き留めていたコナンファンは全国に何万人もいたはず……。

 本作は、一番「コナンが本気になる」話です。序盤からコナンの身近な人たちがどんどん攻撃されて、ついに最も大切な蘭の命が狙われる。犯人は執念深く、しつこく、邪悪な、明らかな“敵”です。どこにひそんでいるかわからない殺意と、「なにがなんでもこの謎を解かなければ」というコナンの必死さが、映画全体の緊張感を作り出しています。コナンはもちろんのこと、小五郎や妃、園子、少年探偵団といった、蘭と関係を持つ全ての人間が、蘭を守ろうと体を張り、暗殺者を見つけ出そうとする。全員が本気モードなので、小五郎や園子を眠らせている暇もない。ラストシーンも、コナン自身が犯人と対峙します。

 コナン映画のクライマックスは、いつも犯人との直接対決というわけではありません。例えば先にも挙げた通り、「銀翼の奇術師」は、犯人がとった行動が結果として意図せぬ飛行機のパニックを引き起こします。「天国へのカウントダウン」では連続殺人と並走する別のラインで、超高層ビルの爆発パニックが起こります。コナンが事件を解決したあと、犯人すら意図しない形で最後のトラブルが発生し、映画のクライマックスを迎えるような作りです。

 しかし「瞳の中の暗殺者」は、最後の最後まで、たった一人の犯人と対決する物語です。パニック要素もアクションも、全て一連の事件に絡んでいます。犯人の正体は最後の最後まで伏せられて、クライマックスにもつれこむという構成が美しい。

 最後の攻防戦の舞台が“遊園地”というのも憎い演出です。遊園地といえば、工藤新一がコナンになるきっかけとなった、第1話「ジェットコースター殺人事件」の舞台。シリーズの原点と呼べる場所で、全ての決着がつけられるのです。そして、そのことにも明確な意味があります。

 コナンと言えば“爆破”のイメージがある方は多いと思いますが(実際本作でも早い段階で爆弾は使われていますが)、本作の犯人は基本的に拳銃一つで狙ってきます。撃たれる、逃げる、撃たれる、逃げるの繰り返しは通常単調になりがちですが、立体感のある遊園地が舞台になっているために、ただコナンが走り続けているだけなのに飽きさせない! 高いところから飛び降りたり、船に乗ったり、スケボーでジェットコースターのレールを滑り降りたり、スピード感があって気持ちのいい絵ばかりです。その後の劇場版コナンのアクションのアイデアの基礎が詰まっていて、そういう意味でも“王道”を感じます。

コナン映画史上もっとも鮮やかなシーン

 そんな魅力的なアクションシーンを経て、ついに犯人を指摘するシーンへ。たまに、コナンをあまり見ていない人から「ミステリ部分適当だよね?」と言われることがありますが、本作は文句なしに素晴らしい。シンプルながら、本格ミステリ要素がぎゅっと詰まっています。

 左利きの人間を映像から特定する――という映像ならではの手がかりや、ダイイングメッセージの解釈はもちろんのこと、一番ぐっとくるのは硝煙反応のトリックです。佐藤刑事と蘭を狙撃したとき、犯人はいかにして硝煙反応捜査をくぐり抜けることができたのか? 中盤、このトリックを解明することが事件解決のカギだと読者に意識づけておき、謎解きが始まってからも引っ張って、最後の最後に印象的に明かすという気の利いた構成……!

 トリック自体はシンプルで、漫画でも26巻(「命がけの生還」)で近いトリックが使われており、それだけ取り出したらなんてことのないようなアイデアです。特筆すべきなのはトリックが明かされたあとの演出! 最後に逃げ込んだ噴水広場でカウントダウンが始まり、ゼロになった瞬間に――映画の冒頭で描かれている新一と蘭のデートの思い出と、蘭の命を脅かしていた犯人が切り札にしたメイントリックが、同じひとつの映像に重なり合う。そして蘭の“瞳の中”で、佐藤刑事を狙撃した瞬間と目の前の暗殺者の姿がつながる……。この1カットをきっかけに、蘭はすべての記憶を取り戻し、絶体絶命の危機からの逆転劇が始まります。

 コナン映画史上、いえ、ミステリ映画の中でも、ここまで鮮やかなシーンはそうないのではないでしょうか。ミステリのトリックとストーリーを映像の次元でかつてないほど有機的に融合してみせた、空前絶後のアイデアですね。

完璧なラストシーン

 最後にどうしても言っておきたいのが、ラストシーンのかっこよさ。小五郎の刑事時代の上司である小田切警視長が、「先に真実を明らかにしたのは、どうやら君の方だったな。君はいったい……」と問いかけます。それに対してコナンは「Need not to know(シリアスな声で)ボクはただの小学生だよ(小学生らしい声で)」と、映画の最初から繰り返しキーワードになっていた「隠語」を返すんです。小田切はコナンに敬礼し、踵を返してその場を立ち去っていく……という一枚絵で、エンドロールに入っていきます。

 この一枚絵が、コナン映画のエンディングへの入りの中でも、歴史に残る格好よさ! もともとコナンの面白さは「小学生に見えるコナンが大人を超える推理をする」というギャップにあると思うのですが、ふだんコナンは小五郎などの大人を前に立て、隠れて推理をしています。そんな彼が、小田切という、警察のトップオブトップの人間から敬礼を送られる。完璧なラストシーンであったかと思います。

 エンドロールもいいんですよ……劇場版コナンでおなじみの“実写映像”ですが、本作ではクライマックスの舞台となった遊園地の映像が流れます。エンディングテーマは小松未歩の「あなたがいるから」。曲調とあいまって、どこか物悲しい雰囲気があるんですね。僕は映画を見た当時は小学生でしたが、「なんだか大人な映画を見たな……」という気持ちで劇場から帰ったのを覚えています。……ただ、金ローでは99%カットされていると思うので、映像ソフトで確認してください!

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