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「安室透」とは結局何者なのか? 劇場版コナン最新作「ゼロの執行人」について語らせて!【ネタバレあり】赤いシャムネコ・将来の終わりが語る(1/3 ページ)

バーボン片手にマジトーク。

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 ロケットスタートを切った劇場版コナン最新作「ゼロの執行人」。公開2週間で観客動員数は200万人を超えました。老若男女が映画館で“執行”され、安室透という男の魅力に突き落とされています。



 本作は「公安組織」の陰謀入り乱れるシリーズ屈指の“大人向け”コナン。ネタバレなしで魅力を話してはいるけれど、そろそろ“ネタバレあり”でとことん語り合いたい……そんなコナンファンもいるのではないでしょうか。

 ねとらぼでは、大のコナンファンの赤いシャムネコさんと、安室にほれ込む将来の終わりさんの対談を実施。7つの“どうしても語りたいポイント”について、存分に語り合ってもらいました。


ともに濃いコナンファンである「赤いシャムネコ」さん(左)と「将来の終わり」さん(右)。どちらも着ているシャツがやばいという共通点がある

【目次】


「脚本」について語らせて!

――率直な感想をお聞きしたいです。本作はいかがでしたか?

終わり: 今回は実はあんまり「コナン」っぽくないですよね。子供向けでもない。でも、俺はこれまでで一番好きな作品かもしれません。

シャムネコ: 僕もかなり好きな作品です。でも正直なところを言うと、「これは面白いけど評価が割れるだろうな」という印象でした。安室さんのアクションシーンを推してはいるものの、話の中核は政治ドラマ。爆発やIoTテロの派手なシーンはあるけれど、全体的には暗くて重い話。しかも公安という組織と事件の真相が密接に絡みついているので、きっちり物語を追わないと真相が分からなくなってしまう……。

 良くも悪くもコナン映画は、「筋が追えなくても楽しめる」「背伸びして見られる」ところがあったように思います。でも本作は、見ている側に常に緊張感を強いてくる。

終わり: 徹夜で見に行ってたら集中力切れで脱落してた可能性があった……。「サイバーテロの話である」「事件のきっかけになった人が死んでいる(ということになっている)」という点で、雰囲気としては「機動警察パトレイバー the Movie」1作目に近いなと思いました。櫻井武晴さんの脚本の味が出ているので「相棒」シリーズっぽいといった方がより正しいかも。

シャムネコ: そうそう、「相棒」でした。本作は、櫻井脚本の特徴である「オリジナルキャラの設定とドラマを徹底して作り込む」というところが、うまく働いていたと感じました。例えば「業火の向日葵」では、映画のオリジナルキャラクターの人間ドラマが細かく描かれすぎた結果、まとまりきらず本筋が分かりにくかった印象があります。一方で本作はキーパーソンである「羽場二三一」にさまざまな人間関係が集約されているので、理解しやすくなっているし、真犯人の動機やドラマが受け入れられやすくなっている。

終わり: 「向日葵」は最初の段階ではシナリオが3時間分くらいあって、ものすごく削って今の形になっているんですよね。ノベライズ版ではカットになった人間関係の描写がこれでもかと入っている……。本作は「向日葵」の失敗を生かした作品だなと感じました。



劇場版「名探偵コナン 業火の向日葵」

シャムネコ: 実は本作は、非常に容疑者が少ないんです。犯人の候補となるキャラが4人くらいしかいない。それでいて、真犯人がすぐ分かるかというと……。シンプルながら、だましの技法が見事に決まっていたと思います。『水平線上の陰謀』に近い巧さを感じました。

終わり: 完全にだまされました。犯人が分かったときに「えっ?」と思いましたもん。ただ動機は劇場版の初期作品に近い“異常な動機”で、そういう意味でも満足度が高かった。

シャムネコ: 動機は繰り返し明示されているのに、ミスリードがうまいから真犯人にたどりつかないんですよ。しかも今回、犯人が強い目的をもって、テロを起こしているんですよね。「コナン」の劇場版は、「パニックを起こすための爆破」「アクションの見せ場を作るための爆破」になりやすい。でも本作はきちんと爆破に犯人の意図が絡んでいます。これは「時計じかけの摩天楼」に近いですね。雰囲気が「瞳の中の暗殺者」に似ているのもあって、初期劇場版が想起させられる作品だったと思います。しかし……初期作と比べると、本作、ちょっと難しかったですよね?

終わり: 俺は公安の組織図を把握していたんですが、初めて見た人は「公安検察? 公安警察?」とちんぷんかんぷんだった気がします。劇場パンフレットにも「少年探偵団のQ&Aコーナー」みたいな形式で組織図の説明があるんですけど、高木刑事がブワーッと喋って終わってる。絶対元太は意味が分かっていないと思う。そのあとのページの「サイバーテロってなあに?」も分かっていないと思う。ルビもないし。



安室のコードネームである「バーボン」片手に

「演出」について語らせて!

――本作の監督は立川譲さん。劇場版「コナン」では初めての参加かつ、初めての長編監督作品でした。

終わり: キャラの描き込みが非常によかったです。例えば蘭がちょっとしたシーンで空手の動きをしていたり、哀ちゃんが頭を抱えたり……これまでのチームだと「このキャラはこういうキャラだよ、みんな分かってるよね」とサラリと描いていたところを、ちょっとした動きで伝えている。コナンチームに新しい風が入った感じがしました。

シャムネコ: 僕は立川さんの監督作品を見たことがないのですが、どういう特徴がある人なんでしょう?

終わり: 作家性を見るのに重要な作品は、短編映画の「デス・ビリヤード」とそのテレビシリーズ化作品、「デス・パレード」。どちらも監督・脚本を担当しています。「デス・ビリヤード」は、二人の人物が目が覚めたらバーにいて、謎のバーテンに促されるまま見知らぬ相手と”命を賭けた”ゲームに興じることになる……というストーリー。ただゲームそのものの勝敗や舞台設定の謎解きがメインのアニメではなく、ゲームの進行に従って暴かれていくプレイヤーのこれまでの人生、その性格の裏表を楽しむことに重きをおいた作品です。その裏と表の表現のうまさを買われたのではないでしょうか。

シャムネコ: 確かにサスペンスの盛り上げ方がうまいと感じました。これまでの劇場版だと、初めに大きな事件が起こって、そのあとちょっとした日常シーンがあり、大きな事件があり――とアップダウンがあるのが一般的。ところが本作は、冒頭でいきなり極限までシリアスな状況に持っていって、その緊張状態をずっと持続させる。曇りや夜のシーンが多いのもあって全体的に重苦しいトーンでしたね。

終わり: 「デス・ビリヤード」もずっと緊張状態にある話なので……。ゲームは「ナインボール」ですが、互いに落としあうビリヤードの球にそれぞれの”臓器”が描かれていたり。

シャムネコ: 面白そう! 「このカット、すごくカッコいい……」と感じるシーンが多かったのも印象的でした。特に安室さんが公衆電話から風見に連絡を取るカットは非常に美しかった。

終わり: 東宝の宣伝プロデューサー、林原祥一さんのインタビューによると、あのシーンは映画の準備段階で用意されたイメージボードの1つにあったものだったそうです。劇場パンフレットのビジュアルボードにも掲載されていましたが、色調が青にそろっていて、イラストとして美しいし、重苦しい雰囲気の中でパッと抜けるような印象的なカットでした。


「爆発とアクション」について語らせて!

――コナンの魅力の1つである、「爆発」や「アクション」についてはいかがでしょうか。

シャムネコ: 今回は爆発の見どころが3つもあります。個人的にひかれたのは冒頭の爆発。“劇場版最大の爆発の異色作”と呼びたい。過去に一度も使われていない手口によって爆発するので、過去散々コナンの爆発を見慣れていて、「俺はどんな爆発でも驚かない」という人こそ違和感を覚える爆発になっていると思います。その違和感が「IoTテロ」という手法の伏線になっているのが素晴らしいですね。なおコナンでは大掛かりな爆発が起きてもなぜか奇跡的に死傷者ゼロというケースが多いのですが、今回は最初から死傷者が出るというかつてない展開で驚かされました。わがままをいえば、中盤でもう一爆発ほしかったですが……。

終わり: 確かに中盤のIoTテロ爆発は、犯人の意図するところではありましたが、ややショボかったですね。

――(なぜコナンファンはみな爆発を語るとき目がキラキラするんだろう……)

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