パンダ好きが「ひたすらパンダがかわいい」という話をパンダ沼からお届けします。
一度足を踏み入れると、沼のようにズブズブと沈み込んでいく。日常に潜んであなたを誘う「パンダ沼」。足先でもいいので、浸してみませんか。沼の住人でもあるパンダの飼育員さんも巻き込んで、パンダが愛される秘密を暴きます(1/5)。
実はパンダに興味がなかった
「実はパンダに興味はなかったんです」。お話を伺った飼育員さんがおっしゃったとき、筆者は「私も!」と思いました。筆者がパンダを好きになったのは、大人になってから。子どもの頃はまったくといっていいほど、パンダに興味がありませんでした。
そんな筆者が、なぜパンダを好きになったのか? 自分でも謎でした。何だか分からないうちに急にパンダが気になりだし、パンダのものを集めだし、さらにそれを見た人が「パンダ好きでしょう?」とパンダグッズをくれ、パンダが増え、さらにそれを見た人に「この人パンダが好きなんだ」という印象を与える……。こうしてどんどん「パンダ好きの自分」が育っていったのです。
筆者が生まれたのは1970年代。上野動物園にパンダがやって来て、日本が空前のパンダブームに沸いた頃で、まわりにはパンダグッズがあふれていました。実家には大きなパンダを抱っこしてほほえむ、幼い筆者の写真も残っています。きっとこの頃から、パンダはじわじわと私の魂に刻まれていたのでしょう。そして社会で働き、癒やしを欲した頃に突如、表面に出てきたのです。
神が与えた「至高の白黒」
パンダ好きを公言している私が、パンダについて聞かれる質問ナンバーワンが「パンダの尻尾って白黒どっちなの?」です。お答えしましょう、パンダの尻尾は白。まれに尻尾に黒い毛が混じっているパンダもいますが、ほんの少量です。黒い尻尾のイメージがある理由は、70年代に一世を風靡したキャラクター「ルネパンダ」によるものと言われています。
人気イラストレーター内藤ルネが生み出したルネパンダは、ルネがイギリスの動物園で見たパンダのかわいさに、インスパイアされて生まれたパンダ。作者の思い込みにより、尻尾は黒くなっていました。後にルネパンダの尻尾は、パンダ好きとして知られるタレント黒柳徹子さんの指摘で、白に直されたという逸話が残っています。
パンダのしっぽが白だと分かったところで、気になり始めるのが、パンダの白黒の比率。あの絶妙な白黒の配置、どういう比率なのか気になりませんか? 調べてみると、以前テレビ番組の企画で、パンダの剥製を、3Dスキャナーで測定した記録が出てきました。結果「白:黒」は「6:4」でした。「黄金比」に近い数字です。
黄金比とは、人が最も美しいと感じる比率として知られています。近似値は「1:1.618」。これを%で表すと、約37.5%:62.5%となり、約「4:6」。パンダの白黒は黄金比に近いのです! ちなみにミロのビーナスやモナリザなどの歴史的な美術品、さらに現代ではAppleのロゴやTwitterのアイコンなども黄金比なんですよ。
ここがパンダのかわいいとこ!
パンダの美しさの一端がわかったところで、次はかわいさの秘密に迫ります。それを知るには、毎日パンダとふれあっている人に聞いてみるのが一番! ということで、日本一多くのパンダが暮らす、和歌山・アドベンチャーワールドの飼育員さんに「パンダの最もかわいいと思うところ」を聞いてみました。
「手間がかかるところです。お世話がやけるところがかわいいですね」。そこ……!? 取材に伺った日は、パンダファミリーの末っ子、彩浜(さいひん)が生まれて300日を迎えた記念日。親子のいるブリーフィングセンターの室内運動場には、雪の上に竹で作られた300の文字。公式のSNSなどに載せるため、広報さん達が写真と動画を撮影しています。
彩浜はとってもマイペース。雪山に登ったかと思うと、せっかく飾った竹を取ってガジガジ……。「初めてこんなにたくさんの雪を見て、びっくりしているのかもしれません」と広報さん。スタッフも「も〜」と言いながらも、みんな笑顔です。
愛嬌のあるダメダメっぷり、確かにグッときます。「この子には私がいなくちゃ……!」という思いから、私たちは頼まれてもいないのにパンダに会いに行き、グッズを買う。この「手間がかかるところ」が、パンダの愛らしさの秘密。野生での生息数が約1800頭、飼育下では600頭しかいないと言われているパンダを絶滅から救う、最大の能力なのかも知れません。
(つづく)
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