しゃべる黒猫が経営する古本屋を訪れた、ある本を探している女子高生。漫画「古本 宵待書房」が、心にしみる物語です。作者は創作漫画を描いているしば太(@48ta0605)さん。
舞台は「クロモノ」と呼ばれる不思議な生き物と、人間が共存する街。その街にある古本屋「宵待書房」に女子高生のハルモが訪れます。店主はなくなった飼い主から店を継いだ、しゃべる黒猫の半月。ハルモが探している本はアングラなエログロ漫画家の絶版本で、なかなか見つからないのだといいます。半月と親しい漫画家の葵によれば、「ワケありのレア本」なのだとか。
やがて半月に、探している本は、幼いころに離婚して亡くなった父親の作品だと打ち明けるハルモ。こっそりと古本屋で集めているけれど、最後の一冊だけが見つからずずっと探しています。その一冊はハルモが生まれたあとで出版された本。「お父さんは私が生まれた時どう思ったんだろう」――その本になにか一言でも自分のことが書いてあれば、そんな思いで彼女は探していたのです。
そんな矢先、探していた本を葵が見つけ出してきます。いざ手に取ってみると、もし自分のことが何も書かれていなかったら、と読むのが怖いというハルモ。勇気を出してページを開くとそこには――。
ハルモが求めていた問いへの「答え」と彼女の名前の由来。そこに込められていた思いに、じんわりと胸が温かくなります。父親がハルモにいつか伝えたいと思っていた「いてくれてありがとう」。ハルモも同じ思いをこの本に抱いたのではないでしょうか。宵待書房にいて、父親の思いを伝えてくれたことにありがと、と。
「本と人の数だけ無限の組み合わせの出会いと思い出がある」。最後に葵はそう言いました。古本は、書いた人だけでなく「持っていた人」の思いも込められています。そんな本との出会いが詰まった、どことなく緩やかな時の流れを感じる雰囲気の古本屋さんに、面倒見のいい黒猫の店主。本当にあったら訪ねてみたいという気持ちになるお話です。
このお話はpixivでも公開されており、紙の同人誌としても販売されています。また未公開のお話を一緒に収録した電子書籍もBoothで販売されています。
「古本 宵待書房」1話
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