恋愛は告白した方が負け! 「かぐや様は告らせたい?〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」(原作/アニメ)は、相手から自分に告白させるためにあらゆる知力体力を用いて戦うエリートたちを描いたラブコメディーの第2シーズン。とっても愛しくてとっても面倒くさい少年少女の、青春の無駄遣い物語。距離はどんどん近づきます。
男女関係がどこまでいったのかは他の人には分かるまい
財閥の令嬢にして生徒会副会長、四宮(しのみや)かぐや。努力家の生徒会会長、白銀御行(しろがね・みゆき)。2人は自らの意地とプライドにかけて、自分からは告白しない、相手に告白させる、と心に決めて戦い続けている間柄。……なのですがどんどんお互いを思う気持ちは高まり、双方の距離は近づくばかり。遠回りながらうまくいってます。
1期ラストでは家のしきたりが厳しく外に出られず苦しんでいたかぐやを、王子様のように御行が連れ出し、一生の思い出に残りそうな花火を見ることに成功。生徒会メンバーは非常にドラマティックな夏を経験しました。
2期は夏を終えた高校生のよくある話からスタートです。花火の日の話を意識しすぎて照れくさいかぐや、かっこつけすぎてアイタタな人間ではないかともん絶する御行。はたから見るととてもステキだったのですが、そこは恋愛初心者ですから。
ところで生徒会メンツは性的な面で超絶潔癖なので踏み外しませんが、どっちかというと高校生って性的に増長しがちなんじゃないかと思うんですよね。夏休みデビューって。
真面目な外見だった翼。二学期になって茶髪のチャラ男に大変身。一方4月から付き合い始めた柏木渚は妙にセクシーなオーラを醸し出すように。生徒会室で2人きりになった瞬間、恋人つなぎからいちゃいちゃチュッチュのルートに突入。これは、告白すらできない生徒会メンバーには刺激が強すぎる!!
実際はのぞいていた生徒会メンバーのことを分かって渚がちゃかしていただけでした。彼が茶髪なのも、渚が好みを言ったらあわせてくれただけ。「私たち…皆さんの考えてるような事はまだ致してませんよ。ご安心ください。ええ。もちろん」
これです。男女の関係は駆け引き、他人には分かりえない、と気付かされてしまった。生徒会敗北。
「かぐや様は告らせたい」はピュアな男女関係を描いたほほえましい話ではありますが、当然高校生の男女です、性的なつながりを意識しないわけにはいきません。特にかぐやは過程から性的な話を完全シャットアウトされているので、ちょっとした刺激に弱い。翼と渚はこの作品でも特に「進んだカップル」として描写され、かぐやたちのピュアピュアな意識の比較になっています。マイペースな恋愛は大事ですが、こういう人もいる、というのがちらっと見えるのは、遅すぎる恋愛にはいい刺激かもしれない。ただ渚は妖艶すぎて刺激が強すぎるので、ほんとたまに、ちょっとだけで。
ゲーム内でも結婚は照れくさい
では生徒会メンツの性の意識、成長の意識はどんなものか。これは藤原千花(ふじわら・ちか)の在籍するTG(テーブルゲーム)部制作の「ハッピーライフゲーム」を通じて見ることができます。ようするに人生ゲーム。
藤原書記がイベント内容を考えている時点でろくなもんじゃないんですが、それでもまだゲームはまとも。ゲームが進むにつれて、多様なイベントが発生します。
問題は大人ゾーンに入って結婚ルートに入ってから。ゲームのシステムに沿って、御行が藤原書記と結婚することになります、イベントとして。
皆さま覚えていらっしゃるだろうか。藤原書記は何の悪気もなく空気を読まず、何もかもを踏み荒らして破壊していくムードブレイカーだったことを。根はいい子なので誰も責められないけれども時々どうしようもなくウザムーブをすることを。加えて、生徒会のメンバーのことが大好きで仕方ないことを。かわいいですよね。一期のダンスは大流行しました。
この手のゲームの「結婚した」ロールプレイはなかなかに照れくさいものです。それどころか「子供ができた」というイベントとなると、小中学生だとちょっと気恥ずかしかったりする。かぐやの錯乱はちょっとだけ理解できます。同時にこういうところで、人生への向き合い方がこぼれでる。
かぐやが結婚マスを踏んだとき、そばにいたのは御行。つまり御行とかぐやが結婚、というシナリオに。あれっ、これパーティーゲームとしての盛り上がり力、めちゃめちゃ高いのではないか? まだちょっと距離のある男女のゲームとしていいのでは? TG部やるじゃん。
しかしルールをよく読むと、結婚するのはかぐやと藤原書記でしたとさ。めでたしめでたし。藤原書記はかぐや大好きっ子なので、とても幸せそうです。こういう積み重ねで、かぐやの中の藤原書記ヘイトゲージはどんどんたまっているのです。誰も悪くないんだけども……。
今回のゲームで「結婚」「出産」というシミュレーションをかぐやが行ったのは大きな進歩。頭はいいけれど恋愛はポンコツで、その先なんて考えられない彼女が動揺した。この経験はもしかしたら今後に生きる……か?
誕生日祝わせ大作戦
先ほどのゲームのように、人生にはイベント事があります。特に固定イベントなのは誕生日。高校生ともなると、意中の相手の気を引く大チャンス。
かぐや「どうしたら会長の誕生日を祝え…あー!もうっ!これじゃあ私が会長のことを祝いたくて仕方ないみたいじゃない!」
そうじゃん。これができないから、2人の仲は現状のままなわけですが。ただ恋心を隠したいという以外の懸念事項も一つありました。それは御行の家が極度な貧乏で、祝い事をほとんどできないため、平日と変わらないという姿勢を取っていることと関係しています。御行から誕生日アピールはまずしない。浮かれることもない。御行からの動きは見込めないということです。
さらにさらに、去年のかぐやは心を閉ざしていたため、御行の誕生日を祝うことは「天地がひっくり返ってもあり得ません」と冷徹に言ってしまっている。
さすがにここまでくると、どう切り込んでお祝いするか悩ましいところ。もっともかぐやの気持ち自体は、誕生日のお祝いをして喜んでほしい、というシンプルなもの。それを実行するのがこんなにも回りくどくて大変だとは。
実は御行の誕生日を生徒会で唯一知っているかぐや。そこもまた懸念事項です。みんなに御行の誕生日をオープンにさせればお祝いやりやすいのに、自分だけとなると「私がお祝いします」というルートを選ばざるを得なくなる。御行とかぐやがけん制しあっている「告らせたい」という信念に反してしまいます。本当は周りの人、藤原書記とかに言い出しっぺを押し付けたい。冷静に考えたら友人を使うつもり満々なのは、かぐやの悪癖なのでは。
ここで都合よく、「自分しか御行の誕生日を知らない=御行は自分だけに誕生日を祝ってもらいたいのでは?」という公式を導き出したかぐや。不正解です。まあ何もしないで止まるよりは、勘違いでも行動に移すのであれば、恋人的誕生日祝いができる第一歩。
相手を動かそうとしていた御行とかぐや。今回の誕生日イベントで自らが決断し動く、という大きな変化に踏み出すことになります。お嬢様の大きな一歩、果たして藤原書記に邪魔されずにクリアできるのか。待て次回。
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