神を信じる全てのみなさん、そして無神論者のみなさんも、こんにちは。
最近は日本でもイースターに関連するイベントが増えてきましたね! 東京ディズニーランドがイースター・イベントを始めたのは2014年のことです。でも、クリスマスやハロウィンと比べると、まだまだ影が薄いような気が……。そもそも何月何日だっけ?
そんなイースターですが、実はキリスト教徒の間では最大のお祭りなんです! その重要度は、クリスマス以上と言われることもあるほど。
どうしてイースターには卵をデコるのか? ウサギがモチーフに使われるのはなぜ? クリスチャンはどんな風に祝っているの?
この記事では日本の人口1%以下、激レア存在であるキリスト教信者の私が、クリスチャンのイースターを紹介します。
イースターってなに?→「イエス・キリストの復活を記念する日」
クリスマスはイエス・キリストの「誕生」を記念する日ですが、イースターはその「死と復活」を記念する日です。キリスト教で最も重要な出来事は、「イエスが十字架で処刑され、三日後に復活した」ことなので、イースターをクリスマスよりも重要視する場合もあるんです。
イースターって何月何日?→「春分の日の直後の満月の次の日曜日」
クリスマスは12月25日、バレンタイン・デーは2月14日と、毎年日付が決まっているのに対して、イースターは毎年日付が変わる「移動祝祭日」です。計算の基準となる春分の日が毎年変化するからです。
なんでこんなに複雑かというと、イエスの死の出来事がユダヤ教の「過越の祭」の直後に起こったから。ユダヤ教の暦は太陰暦と太陽暦のミックスなので、現代世界の大部分で使われているグレゴリオ暦上でその日付を特定するには、複雑な計算式が必要になります。
2020年は4月12日! ちなみに、2019年は4月21日、2018年は4月1日でした。最も早い場合で3月22日、最も遅い場合で4月25日なので、だいたい三月半ば〜四月半ばと覚えておくといいのではないでしょうか?
また、教派や国によっては採用している暦が違うので、イースターとそれに関連する祝祭日の日付がずれる場合があります。
クリスチャンはイースターをどうやって過ごすの?
四旬節・大斎(おおものいみ/たいさい):イースターの約40日前
イースターを十分に味わうには、復活をお祝いするだけでは不十分。その前に、キリストの「死」を悼まなければなりません。その心構えのために、「四旬節」や「大斎」と呼ばれる準備期間があります(教派によって名称・期間が変わります)。イエスの苦しみを追体験すると同時に、自分の行いを振り返る特別な期間です。具体的に行うのは神への「祈り」、他者への「善行」。そして、この期間にもっとも特徴的な慣習が「食事の節制」、いわゆる「断食」です。
とはいえ、まったく食事をとらないわけではなく、「卵・乳製品・肉」などを控える「食事制限」です(これを「斎(ものいみ/さい)」といいます)。糖質制限ダイエットの逆みたいな感じでしょうか……。この期間、カトリックでは魚はOKで代替食としてよく食べられるのですが、正教会では魚もNG。本気でやるとかなりキツイはず。
ちなみに、この断食期間の前に「食べられるだけ食べておこうぜ!」という趣旨で行うお祭り騒ぎがカーニバル(謝肉祭)です。
ただ、同じキリスト教徒でも教派によって過ごし方はさまざま。プロテスタントはこの食事制限を行わないところがほとんどで、四旬節は「キリストの受難までの道のりを意識して生活しましょう」くらいの意識です。筆者はプロテスタントなので、この期間に食事制限をしたことはありません。一度チャレンジしてみたい……でもしんどそう……。
カトリックでは、長い間この慣習が守られてきましたが、現在は四旬節のうち特定の日に限定して食事の節制が勧められています。とくに儀式や慣習を大切にしている正教会では、現在でも期間中の節制が強く意識されています。もちろん、無理は禁物です! どちらの教派でも、節制を行う場合には信者それぞれの事情(健康状態や妊娠など)が考慮されています。
枝の主日・しゅろの主日:イースターの1週間前の日曜日
いよいよイエスの受難の日が近づいてきました。この日はイエスが処刑のちょうど1週間前にエルサレムに入城した日で、民衆がしゅろの枝を掲げて歓迎したことから「枝の主日・しゅろの主日」と呼ばれています。
この日から受難日までの1週間は「受難週」、「聖週間」。受難日とイースターに向けたカウントダウンが始まります。
受難日(聖金曜日)
イエス様の命日とも言える日。夕方〜夜にかけて集会が行われますが、この日ばかりは、教会がお葬式のような空気に包まれます。集まった信者たちも、それぞれがキリストの十字架上での死に思いを馳せつつ静かに帰宅。初めて教会に来られた方は戸惑ってしまうかもしれませんね。でも、イースター当日とのギャップが面白いので、参加される方はぜひセットで!
聖土曜日
イエスの喪に服す1日。この日の夜から明け方(=イースターのはじまり)にかけて、徹夜の集会を行う教派もあります。
復活祭(イースター):受難日から3日目の日曜日
前日までの静けさとは打って変わって、この日は正真正銘のお祝い! イエス様が復活した喜びをみんなで分かち合います。集会の後、クリスマスと同じように食事会を行う教会も多いです。料理を持ち寄る場合、みんなが卵料理を作りがちなので、食卓がゆで卵であふれかえることも……。日本では新学期や新生活が始まる3月〜4月に重なるので、進級・進学・就職の報告やお祝いの場を兼ねることもあります。
挨拶の言葉としては「ハッピーイースター!」「イースターおめでとう!」など。「実に復活!」という掛け声もあります。
イースターは終わらない
プロテスタントの筆者の教会では、イースターを祝うのは当日限りですが、カトリック、正教会、聖公会などの教会暦では、まだまだイースターは終わりません! 「ペンテコステ」という別の祝祭日まで、「復活節」「復活祭期」という期間が続き、お祝いムードは5月ごろまで持続します。
ヨーロッパのイースター・卵とうさぎの謎
キリスト教文化が根付いた国々では、イースターが祝日、その前の1週間(受難節)が「イースター休み」という名目で休暇に設定されています。早い場合は2月ごろから、卵やウサギをかたどったチョコレートがスーパーマーケットに並び始め、DIYコーナーでは、イースター・エッグのデコレーション用品が購入できます。
このように、イースターといえば卵とウサギのイメージですが、これがいつから・どのように定着したのかはわかっていません。
卵を飾る・食べる週間は古くから、さまざまな教派で共通のものです。卵から雛鳥が生まれる様子が、生命の誕生やイエスの復活を連想させるから。そしてなにより、断食中食べられなかった卵を食べよう!という発想からきていると推測されます。
一方、イースター・エッグを子供達に配るイースター・ラビットのイメージは、カトリックやプロテスタントなどの多い西ヨーロッパが由来の比較的新しいもので、正教会や東欧諸国では馴染みが薄いようです。
外出自粛こそが真のイースター休暇の過ごし方?
2020年春、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の世界的な蔓延と混乱の中、受難週が始まりました。ヨーロッパでもカレンダー上、イースター休暇が始まりましたが、厳しい罰金付きの外出制限が行われている国が多く、例年のバカンス気分はありません。取り締まりを強化する国もあるようです。配信などオンラインで礼拝を行う教会も増えています。
ただ、本来イースター前の1週間は「イエスの受難」のため静かに祈る期間。この機会に受難週の本当の意味を再認識しようというムーブメントが、クリスチャンの間で広がっています。
とはいえ、イースターとその後の復活節までお祝いできないのはつらいところ。早くこの事態が収束することを祈っています。
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