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「生徒が不登校になってしまうんじゃないか、という心配も」 現役中学教員が考える「学校ができる“最大限の新型コロナ対策”とその課題」(2/2 ページ)

“学習指導要領の新型コロナ対応”も課題の1つ。

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検温、手洗いの徹底には保護者、生徒の協力が必要

 家庭にお願いすることとしては、まず毎朝の検温。その結果と保護者のサインを健康観察カードに書いて登校時に提出してもらう。学校としては「37.5℃を目安に休んでもらう」「検温結果と保護者のサインがなければ教室に入れない」という対応になるのかな。

 学校が家庭に100%介入することはできないし、どこまで徹底できるのかという問題もあるんだけどね。親が子どもよりも早く出勤する家庭もあるし、健康観察カードに不備があったら教室に入れない方針でも、「帰っても鍵がかかっていて家に入れない」と言われたら学校にいてもらうしかない。

―― その場合は、学校で計ってもらう?

 1人、2人だったら大丈夫だけど、体温計の数の問題もあるからなあ。新型コロナ対策には家庭の協力が必要になるけど、現実問題として協力が難しい家庭のことも考えないといけないよね。

 また、登校時、給食前などの手洗い・うがいも感染予防のためには必要だけど、ここでも“どこまで徹底できるのか”が問題になると思う。例えば、トイレ後の手洗いなんて大人でも省略する人がいるし、教員がトイレの出口でずっと見張っているわけにもいかない。

―― このあたりは生徒側の協力が必要そうだね

換気:ドアも窓も開放して、誰にも触らせない



 先の提言では、換気について「気候上可能な限り常時、可能であれば2方向の窓を同時に開けて行う」と書かれているんだけど、うちの地域はもうエアコンを使う時期に入っているんだよね。近頃は、もう暑いからさ。

 エアコンを必ず使うのは7〜9月。例年は夏休みが挟まるわけだけど、今年は短縮になりそう。新型コロナ対策のために窓を開けるとなると、今度は熱中症の心配が出てくる。

―― 夏になったら事態が収束するのかどうかも、ハッキリしていないみたいだしなあ

 ちなみに、提言には「多くの生徒が触る場所、共用物などは適切に消毒、触る前後で手洗いしましょう」みたいなことも書かれているから、新型コロナ対策に振り切るなら「ドアも窓も開放して、誰にも触らせない」という対応かな。

 現実問題として「適切に消毒」も難しくなっていると思うんだよね。そもそも消毒液が売ってなくて、業者にお願いしても届かない。薄めて使うしかないような状況だよ。俺には効果があるのか分からない。

授業:“学習指導要領の新型コロナ対応”はどうなる?

―― 授業面はどう?

 音楽は歌うときに唾液が飛ぶ、総合はグループ学習で「密」になる……という感じで、例年通りにいかない教科もある。音楽なら「分散登校で生徒数を減らし、距離を開ける」「ピアノがある体育館を使う」といった対応が考えられそうだけど、体育は「この1年間、ほとんどできないんじゃないか」というくらい厳しいよ。

 柔道、剣道は「密」にならないとできないし、球技はボールが「多くの生徒が触る場所、共用物」に当てはまるし、水泳は十分に距離がとれる更衣室が用意できない……といった具合。

―― 5教科は何とかなりそう?

 座って授業受けるだけなら、まあ……。でも、学習指導要領の問題があってさ。

 最近、「学習の遅れによる教育格差が〜」といろいろ言われているけど、そもそも何をしたら学校で学んだことになるのか。それは「教科書の内容を全部やったら」ではない。「学習指導要領には各教科の目標が載っていて、それを達成する授業を受けたら」なんだよね。単に教科書をこなすことじゃなくて、教科書を通じて身につけるべきことを身につけてもらうことが大切。

 で、その“身につけるべきこと(指導事項)”が書かれているのが学習指導要領。小学校では今年度から、中学校では来年度から新しいものに切り替わるんだけど、その目玉が「アクティブラーニング」。要は「各教科で他の生徒や教員と話し合ったり、アイデアを出し合ったりしながら学んでいこう」という方針だったわけ。

 でも、新型コロナでペア活動、グループ活動が難しくなってしまった。アクティブラーニングはできないも同然だと思う。

―― そうすると「教育現場が、何を目標に授業を進めていったらいいのか分からなくなる可能性」があるわけだ

 学習指導要領は「国の教育は一律に行われていますよ」とされる大元でもあるから、その通りに授業できないとなるとね。「こんな状況だから臨機応変に」という声もあるけど、学習指導要領はそれではダメ。書かれている通りにやらないと、教育格差のリスクが生まれてしまう。

 報道などもいろいろ見ているけど、この問題についてはあまり言及されていない。気付いている人はそれなりにいると思うんだけど。

―― “学習指導要領の新型コロナ対応”まで手が回らないのかなあ。今はまだそれどころじゃない、というか

行事、部活動は中止、延期、縮小開催

 体育祭、修学旅行といった行事は中止するか、新型コロナが収まるのを期待して延期するか。感染予防できる範囲で縮小開催することも考えられるけど、体育祭の場合は「徒競走とクラス対抗リレーだけ」くらいの規模になってしまうかも。

 中学校の行事ではないけど、高校の文化祭は中学生にとって志望校選びの機会だったりする。でも、そっちも厳しそうだよね。

―― 大学で言うところの「オープンキャンパス中止」みたいな状況になるのか

 あとは部活も中止かな、音楽や体育の授業さえ難しい状況だし。それに、分散登校をしていたら部員が集まれない。

まとめ:現役中学教員が考えた“最大限の新型コロナ対策”12種



 いろいろ話したけど、俺なりに考えた「学校ができる“最大限の新型コロナ対策”」をまとめるとこんな感じ。

  • 「今日は1組登校」のように縦割りで分散登校。クラスを10人程度のグループに分け、教室を分ける
  • 机の間隔を1メートル以上あけて配置する
  • 健康観察カードを毎朝提出させ、検温結果と保護者のサインがなければ教室に入れない
  • 授業終わりの5分間を手洗いの時間にあて、実質45分授業を行う
  • ドアノブなどの消毒は難しいのでドアは閉めない、触らない。換気のために窓も開けっ放し
  • 音楽は鑑賞か、体育館などで授業
  • 体育はプロの映像などを見て学習
  • 総合的な学習や学級活動は当面行わない
  • 運動会は中止、延期、縮小開催
  • 修学旅行は中止、延期
  • 部活動は中止
  • 給食は1人ずつパッケージされた仕出し弁当に。もしくは持参

 もしも生徒を登校させるのだとしたら、だいたいこんな感じの対応になると思う。感染の広まり方などは地域によって違うし、実際には状況を見ながら、各対応を組み合わせて学校運営するような形になるのかな。

―― こうやってみると、できないこと多いなあ。自分の経験した中学校と違い過ぎて「楽しいんだろうか」と思ってしまう

 生徒が不登校になってしまうんじゃないか、という心配もある。

 部活を楽しみに学校に来ている生徒もいるし、不登校気味の生徒に対して「今年は修学旅行があるから頑張ろうね」と言うこともあるし。

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