性も恋愛も気になりだしたらそういう目でしか見られない!「かぐや様は告らせたい?」7話 少女漫画脳シンドローム発動(1/2 ページ)
「気になる」のは立派な恋の成長過程。
恋愛は告白した方が負け! 「かぐや様は告らせたい?〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」(原作/アニメ)は、相手から自分に告白させるためにあらゆる知力体力を用いて戦うエリートたちを描いたラブコメディーの第二シーズン。とってもいとしくてとっても面倒くさい少年少女の、青春の無駄遣い物語。距離はどんどん近づきます。
緊迫した生徒会選挙が終わり、伊井野ミコが新規で合流。一気にゆるーいいつもの生徒会室に戻りました。ゆるみすぎた反動なのか、それぞれの脳が恋愛憧れモードにスイッチオン。「少女漫画脳シンドローム」発生警報が鳴り出しますよ。
人はなぜパンツを恥じらうのか
財閥の令嬢にして生徒会副会長、四宮(しのみや)かぐや。努力家の生徒会会長、白銀御行(しろがね・みゆき)。2人は自らの意地とプライドにかけて、自分からは告白しない、相手に告白させる、と心に決めて戦い続けている間柄。
ピリピリした選挙が終わった反動か急激に、異性への興味が動き出します。今回は「下着」「スキンシップ」「少女漫画」の3点。
生徒会室で着替え中、パンツを見られてしまった……のは男子の石上の方。サービス感なし。彼が履いていたのはブリーフタイプ。藤原書記がここで笑ってしまったから大変。石上は逆上します。「いいですか!! ボクサーパンツ穿いてる奴は全員ヤリチンですからね!! ヤリチンパンツマンですから!!」
明らかに偏見なのですが、かぐやは世間知らずなので分からず、信じて不安になってしまいます。御行がボクサーパンツ穿いていたら、ヤリチンなのではないか……と。
パンツという布がなぜこんなにも多くの人を惑わすのか、歴史を通じて大きな謎の一つだと思います。性に興味があるなら身体そのものに興味が行く気がするのですが、そうじゃなくて「パンツ」の魅力は独特なんですよね。
恐らくその人の身体以上に、パーソナルな思考・本能が出やすい部分だからだと思います。誰にも見せないから適当に穿くのか、誰かに見せるから凝ったものを穿くのか。石上のヤリチン理論は恐らくこの後者の話。性格と思想が出る。
どんなパンツが好きか、とかぐやに問われたとき、かぐやは「男性のパンツ事情」を聞いたつもりが、御行は「女性のパンツ事情」だと誤解。会話にズレが起こります。
いやいやでも男子の9割は「女性のパンツ」の話だと勘違いするでしょ。そもそも男性用パンツの話は日常的にしないものなのに対し、女性のパンツの話はかなりの頻度で出てくる、または妄想しているもの。特に「見せる」「見せない」が大きく影響しやすい衣装です。
興味深いのは、かぐやは性的奔放さを示唆するボクサーパンツを嫌っているのに対し、御行は直球で異性を誘う積極的なタイプの「普通に黒のエロいやつ」が好み。性的対象としてみることを「普通」だと捉えています。以前かぐやの風邪のお見舞いのとき、身体を拭いてもらうよう迫ってくるかぐやのことも妄想していましたし(実際はそれどころじゃないくらいでしたが)、彼は一般的な高校生男子並の性的欲求はあるようです。
かぐやが嫌悪しているのは、男性はいろいろな女性に浮気しがちな生き物なのでは、という恐怖心。性行為すら全く知らない無知な子ですが、移り気な男性に対しての拒絶反応は本能的に持っているようです。
ドタバタコメディー風に、この作品における男女の性的嗜好の差を描いた珍しい回でした。にしても「かぐや様」をギャルゲー化したら、かぐやの攻略選択肢分かりづらすぎますね。
ここから恋愛脳モードが生徒会にはびこるのですが、特に恋愛脳モードじゃない新規で入った伊井野ミコ視点があるため、冷静に引きながら見られるのがこの作品のうまいところです。てか周囲がぐちゃぐちゃすぎて、かわいそうすぎだよミコちゃん。頑張れ。
手と手が触れあえば
ヤリチン騒ぎの影響で、男性の浮気の仕組みに興味を持ち始めるかぐや。彼女は複数の人を好きになるなんてありえないと思っているので(そもそも一人にすら愛を持ったことがなかったですし)、男性の思考を知りたい、それを引き止める方法を理解したいと、近侍の早坂に相談。
「浮気防止ホルモン」を分泌させ、「愛情ホルモン」の合成量が増えれば、男性は浮気欲求が抑制できるのではないか説。そのためには「セッ…」が大事なのではないかと言う早坂。うぶな少年少女があふれる健全なこの漫画では、いきなり何段もステップ飛ばして「セッ…」まで行くのはちょっと無理があるね! ――そもそも2人は付き合ってないから、本当は浮気でもなんでもないです。先に告白しなさい。
そこで考えたのは、手のひらのマッサージ。スキンシップは非常に心を動かすものです。手をつなぎたい欲求は、昔から多くの人にあるもの。かぐやと御行は重要なポイントでしか手は握ったことがないので、今回のマッサージという名目はちょうどいい。
意外にも強すぎて死にかけてしまう御行。幸せ系ホルモンが出まくったのはかぐやの方でした。ましてや「誰かのために尽くす」という経験がないかぐや、親への肩たたきやマッサージなどで感じた人とのつながりの幸せも、御行へのマッサージ中に感じられたようです。
愛情ホルモンは恋愛のためだけではありません。人と人との距離を近くするためのものです。かぐやが一歩だけ、人に近づくことで得られる幸福を学んだ瞬間です。
だがしかし伊井野ミコは見た。全身マッサージのため服を脱がそうと押し倒す姿を。これはさすがに言い訳できない。なんてみだらなんだ生徒会室!
ぶっちゃけ、かぐやが御行と向き合って手をもみもみしているのを後輩に見られるのも、相当気まずいと思います。伊井野ミコ、強く育ってくれ。
少女漫画脳シンドローム
純愛少女漫画は、読んだ後恋愛欲求を激しく揺さぶるもの。ここで重要なのは「性欲」ではなく「素敵な恋愛したい」というキュンキュン欲の方です。感情の刺激として、恋愛(あるいは「ごっこ」)したくなる。
今回は「今日はあまくちで」というこの世界で流行っている少女漫画が生徒会に持ち込まれたことで、みんながしっちゃかめっちゃかになっていきます。
最初に落ちたのは御行と圭の兄妹。2人とも号泣でした。これをかぐやに読ませたい、と学校に持っていったのがことの始まり。
少女漫画的展開を小ばかにして斜に構えていた石上。読んですぐにボロボロ涙を流し、恋愛に憧れ始めました。いい物語は人を選ばない。「どっか出会いないかな」なんて、普段だったらありえない言葉も言わせてしまう、それが少女漫画。
藤原書記は既読組。表紙を見ただけで涙ボロボロ。親に隠れて全巻まとめ買いしています。元から恋バナ大好きな彼女ではありますが、この作品に関しては感動する話という捉え方をしている様子。
ここまでみんな盛り上がると、部屋の中の空気感全体が純愛少女漫画モードになります。
かぐやにすすめるためのプレゼンが、感動のあまり最終回まで語りきってしまう3人。ネタバレだめ絶対。でも心が動くと語りたくなるの、分かるよ!
漫画に全く興味がなかったラスボス・かぐやはどうだったかというと。
気にしなかったものの、借りた漫画を読んだところ大ハマリ。ほぼ他の全員と同じ反応をしています。「私もこんな恋がしたいわー」。冷血の早坂すら少女漫画の病にかかりました。なんで恐ろしい漫画なんだ。
感動して泣ける漫画は素晴らしいものです。恋をしたい、とこころが動き始める作品は名作です。しかし素晴らしい作品であるが故に頭が戻ってこられなくなることも多々あります。
かぐやはすっかり、自分が少女漫画の主人公モードになってしまいました。これが「今日はあまくちで」の話に近いかと言うと、多分関係がないのが恐ろしいところ。「恋愛が世界の軸になっている、少女漫画的な世界」への憧れが形になっちゃったものです。このあたりが「少女漫画脳」という言葉の意味なんじゃないか。
学校に行ったところ、御行と石上が少女漫画キャラの見え、選択しなければいけないというベタながらも憧れの展開に。
ようするにかぐやがはまり込んでいるのは、恋に恋するロールプレイです。石上のことが好きなわけなんてない。ですが、ヒロインになって恋愛的ムーブを取るのが楽しくて仕方ない。
だからこそ、その枠外にいた藤原書記は少女漫画ワールドをずけずけとぶっ壊します。相撲いいよね、楽しいよね。
上段・中段の少女漫画モードのうっとり感。下段のプリン食ってゲップする藤原書記の現実感。
あとあと黒歴史になりそうな回です。ただ「男女の恋愛を意識する」という点ではとても大きな動きでもあります。原作では消去法的ですが御行と石上が生徒会の女子を彼女にできるか妄想しあうシーンもあります。消去法で残った藤原書記を考えて脳内シミュレーションし、ほれそうになって大慌てするシーン。結局は「ない」わけですが、「意識をする」というきっかけはこういうところからだと思います。
ちなみに伊井野ミコは今までの巻き込まれから察知し、今回は生徒会に入るのを避けています。その選択は正しい。
恋愛ってなんだろう、なんて誰にもこたえられないもんです。もしかしたら「恋」そのものへの憧れから始まるかもしれない。一目ぼれかもしれない。いろいろ苦楽を積み上げてきた上で育ったものかもしれない。かぐやと御行は3つ目がメインだとは思いますが、もっといろいろなものが入り交じって、成長している最中です。まずは意識するところから。
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