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「急にクリ○ンが出てくる」「男塾名物油風呂」「機動兵器に乗る」 読者考案のアイデアを全て受け止め実現した漫画が神がかり(1/2 ページ)

膨大なアイデアをゴッタ煮しながら大筋を束ねる力量に脱帽。

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 老婆が魔法少女になったり連載を1年で1ページだけ進めたり、Twitterで挑戦的な作品に取り組んでいる漫画家のキドジロウ(@timberdoor)さんが、またもやトリッキーな企画の漫画を公開しました(関連記事12)。今度はなんと、読者からリプライで寄せられた91ものアイデアを、全部採用して漫画化。ムチャしやがって……。


アイキャッチ ナレーションが「おそらく最も読者の意見を尊重し描かれた漫画」と語る通り、ほとんどのページに読者のアイデアを投入。枠外掲載の読者案と照らし合わせながら読むと、より楽しめます

 事の起こりは作者が4月26日の10時15分に投稿したツイート。主人公のキャラクターデザインを見せつつ、「今日の正午までにこのツイートへリプライされたアイデアを、『全部』採用して漫画を描きます」と宣言する内容でした。


主人公 作者が決めていたのは主人公のデザインのみ

 すると、2時間に満たないわずかな受付時間中に、膨大な量のアイデアがリプライ。その数は重複分を除いても91に及ぶ結果となりました。しかも、ざっと拾い読みしただけでも「食パンくわえながら運転して『アーン遅刻遅刻』」「曲がり角でトラックとガシャン」「異世界転生しない」「男塾名物油風呂」「すしが握れる」「ハッピーエンド」など、当然ながら脈絡も何もない物事ばかり。これ本当に全部破綻することなく1つの話に落とし込めるのか……?


アイデア一覧 寄せられたアイデアの一覧。これ全部と真剣に向き合ったのか……

 多くの不安感をはらみながらも、漫画本編はスタート。アイデアの1つ「機械仕掛けの神〈デウス・エクス・マキナ〉が出てくる」にちなみ、タイトルは「魔法少女デウス・エクス・マキナ」、主人公の名は「牧野真紀奈(まきのまきな)」に決まりました。


P1

 最初のページに盛り込まれた読者案は、「チャリンコにヒジから乗る」「アンパン食べる」「食パンくわえながら運転して『アーン遅刻遅刻』」。真紀奈はそれらへ忠実にさっそうと登場し、アンパンと食パンを同時にくわえながら急いで自転車を漕ぎ出しました。ナレーションも前述の要望「ハッピーエンド」を宣言しています。


P2

 真紀奈は「アーン遅刻遅刻」と慌てるあまり、トラックと衝突寸前に。すんでのところで、身をていして助けてくれたラーメン屋店主の田中謙介(51歳)に救われます。この一連の流れで、読者案「曲がり角でトラックとガシャン」「関係ないおっさんが事故る」「ラーメン屋の田中謙介(51)が登場」が消化。加えて、前述の「異世界転生しない」までクリアーしてしまいました。相反する「トラックがガシャン」と、うまいこと両立したものですね。


P5

 しかし、読者の要望通りに登場した「ビニール袋の覆面」に拳銃で撃たれ、真紀奈の日常は終焉。「猫ランジェリーを着る」「エジプトに行く」「得体の知れない化け物と会う」「唐突にドラゴンの紋章が浮き出てあいまいな使命を課される」「親戚が漬物にされる」など、リプライが定めた過酷な運命を次々と刻み込まれた結果、エジプトで得体の知れない化け物に、なんとなく怪獣と戦う使命を課されてしまいました。


P10

 化け物が想定した以上の力を秘めていた真紀奈は、自力で脱出して無事帰国。しかし、自分の運命から目をそらそうと非行に走り、同級生にクマさんパンツを見せてお金を稼いだり、マスクを転売したり、すしを握ったり、気ままな日々を送ります。皮肉なことに、それらの行動も全てリプライが定めた運命なのですが……。


P12

 どうせ死ぬんだと絶望した彼女は、その前にせめて、気に掛けていた難病の少年「クリ○ン」くんに会おうと病院へ。治すにはマリアナ海溝にいる怪獣の血が必要と聞いて、己の使命を思い出し、戦いを決意します。……すごいぞ! カオスなようでいて、だいぶ話つながってる!!


P16

 かくして、真紀奈は汎用人型決戦兵器「デウス(対K型装備)」の適合者として決戦の地へ。「わけあって機動兵器に乗る」「マリアナ海溝でパシフィック・リムごっこ」「主人公が『クリ○ンのことかーっ』と叫ぶ」など、リプライに従って激しい戦いを繰り広げます。急に「クリ○ン」出てきた理由、それかよ!


P20

 しかし奮戦もむなしく真紀奈は敗北。怪獣の最終形態「EX(エクス)」により、男塾名物油風呂へ放り込まれてしまいます。「油風呂なんてどこに出てくるんだ?」って思ってたみなさん、ここですよ。

 煮えたぎる油の中で意識を失った真紀奈は、謎の空間で目を覚まします。そこで彼女を迎えたのは、1億もの並行世界に存在する1億人の「マキノマキナ」でした。


P19

 彼女たちは真紀奈に似ているようで何かが違う、いわば「真紀奈にあったかもしれない可能性」。「逆立ちしたら戻れなくなった真紀奈」「中身が実はおっさんだった真紀奈」「男物のパンツに変身する真紀奈」など、読者のリプライから生まれた者の姿もみられます。

 これらの並行世界が「ある者たちの願い」、すなわちリプライによって作られている――世界の構造を知らされた真紀奈は、秩序を取り戻してほしいと“自分たち”に請われて再起。このように、物語は「メタネタどんどん入れる」案に従って急展開し、全読者の提案を吸収しながら予告通りにハッピーエンドを迎えます。

 ダイジェストでお伝えしてきましたが、「魔法少女デウス・エクス・マキナ」にはほかにも、読者の案を実現するための細やかな工夫がふんだんに盛り込まれています。漫画全編は以下に掲載するので、ぜひご覧ください。ムチャ振りめいた膨大なアイデアを受け止めて1本の流れに束ねる、作者の機敏なレシーブに感心させられること必至です。

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