「子どものため」って何だろう? 手作りの食事にこだわりすぎてうつ病になったお母さんが、「ポテサラ事件」に思うこと(2/2 ページ)
「ちゃんとした母親像」に追い詰められた作者が、漫画で当時を振り返ります。
病気によって何もできない状況にあった龍さんは、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらやむを得ずすみれちゃんにコンビニのおにぎりを食べさせました。「料理できないダメなママでごめんね」と謝る龍さんですが、すみれちゃんは「ママこれおいしいね」とにこにこしています。龍さんはその笑顔を見て、はっとなりました。「今までずっとちゃんとした母親にならなきゃって 子どものためって思ってたけど 本当に子どものためだったかな……?」。
自分を責めながら台所に立つ姿より、笑っている姿を見せた方が、子どもにとってはよほどうれしかったのではないか。龍さんは「ちゃんとした母親像」によって、すみれちゃんの目線から自分がどう見えているかを考えられないほど追い詰められていたのです。その日すみれちゃんと一緒に食べたコンビニおにぎりは、とてもおいしいものでした。
今の龍さんはうつ病から回復し、無理しないように料理をしています。そしてしんどい日は、冷凍食品や宅配も利用しています。宅配メニューを選ぶ子どもたちは、とても楽しそうです。「そりゃあ『何を食べるか』も大事かもしれないけど 『どんな気分で食べるか』も同じぐらい大事」。今の龍さんは、食事の内容にこだわりすぎて苦しむより、みんなが機嫌よく食べられることを優先しています。
「母親ならこうすべき」という社会の呪いは、今もさまざまなシーンに残存しています。龍さんの作品は、そんな呪いに惑わされず、自分で決めた「母親像」を実践すればよい、という重要なメッセージを伝えるものでした。育児の困難に直面するすべての人が、なるべく追い詰められない世の中になることを、願ってやみません。
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