ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月12日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。財務省が発表した国際収支統計の速報値について解説した。
経常収支6月は黒字
財務省は8月11日、2020年上半期の国際収支統計の速報値を発表した。日本と海外との物やサービスの取引、投資収益の状況を示す経常収支の黒字は、前年の同時期と比べ31.4%減少、7兆3069億円となった。
飯田)新型コロナウイルスの影響というような解説記事もありますが。
世界に比べて頑張っている日本〜輸入は国内の経済を反映している
高橋)経常収支が黒字、赤字だからどうなのかという話をしなければいけません。赤字より黒字の方がいいと思われますが、関係ありません。
経常収支は輸出入の差額です。世界中で見たら半分は黒字、半分は赤字というレベルです。赤字と黒字で経済成長率を調べると、関係ないのです。輸出が減って輸入がそこそこだと、こういう形になります。
輸出が減っているということは、世界経済が落ち込んでいることの反映です。輸入は海外の製品を買ったかどうかであり、国内の経済を反映しています。輸入があまり減っていないということは、日本経済も落ちていますが、世界ほどは落ちていないという解釈になります。
黒字が減少したから大変と言うのではなく、減少したけれど、輸入があまり減っていないので、日本は世界と比べて頑張っているということです。
飯田)そうすると、印象がまったく逆になりますね。
高橋)逆でしょう。だから経済学では、黒字と赤字だと説明しません。「差額」と言います。
飯田)輸出超過か輸入超過か。黒字、赤字という文字だけを見ると。
高橋)反応してしまうでしょう。黒字がいいとか。経常収支には、損得は関係ありません。利益ではないので。
不景気のどん底だった2009年は輸入が減って、輸出が伸びた
飯田)それで思い出すと、不景気のどん底で喘いでいた2009年や2010年ですが、あのころは経常収支も黒字で、貿易も黒字でした。
高橋)国内が悪いから輸入が減って、海外はそこそこなので、輸出額が伸びていたというだけです。
飯田)いまと逆の状態だということですね。
高橋)黒字、赤字に反応するのではなく、その内側の数字を読むという経済学の教材になります。
アメリカやユーロよりもまだいい日本の経済
飯田)なるほど。内訳を見てみると、自動車などの部品の輸出はふるわなかった。また、サービス収支も。
高橋)サービス収支は旅行客です。旅行客が減るとサービス収支が悪くなります。そのなかの減少を見ると旅行、国際経済が大変で、日本も大変だけれど、いろいろと財政出動しているからそこそこなのです。
例えばGDPを見ると、4〜6月のGDPはアメリカが32%減で3割減、ユーロ圏が4割減、日本は25%減くらいです。みんな悪いのですが、他よりはいい。輸入の落ち込みは大したことがなく、輸出の落ち込みがひどくなるので、経常収支の黒字が減ったように見えるのです。 (radikoのタイムフリーを聴く)
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