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意味がわかると怖い話:「ゴミ屋敷」(2/2 ページ)

ゴミ屋敷に隠されている秘密。

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「ゴミ屋敷」解説

 長尾氏が奥さんの死体を隠すためにゴミ屋敷を築いたのは、語り手の想像通りでしょう。しかし、それだけだと疑問が残ります。

 失踪した少女に関する証言は、「他県ナンバーのレンタカーに乗り込んだ」というものでした。長尾氏は転居直後――5年前に車を運転できなくなっているため、証言が確かなら、2カ月前の事件で彼女たちを拉致・監禁したのは長尾氏ではないのです。

 長尾氏が語り手を見て三重氏に訊ねた「今度はその女性ですか」という妙な言葉、そして少々唐突に女子高生失踪事件に言及したこと。三重氏は自分一人で長尾家との折衝にあたれるよう、過去に部下を配置換えしていました。

 三重氏は、長尾氏の妻殺害と偽装の企てに気づき、彼を脅迫して自身の共犯者に仕立て上げることを思いついたのでしょう。担当官として行政の介入の防波堤となる代わりに、ゴミ屋敷を拉致した少女の監禁場所、あるいは死体の隠し場所にしたのです。

 ……長尾氏が新聞記者を前に、それを匂わす発言をしたことから、三重氏は彼が秘密を暴露しようとしていると思い、口封じに殺害して火を放ったのです。その場に居合わせ、ふたりの関係を調べようとしている語り手のことも、三重氏は野放しにしておくでしょうか?

R宮城の死体

 このお話のモチーフは、「R宮城の死体」という有名な都市伝説、というかコピペです。

 90年代に「珍スポット」としてテレビ番組などで取り上げられた、茨城県でとある老人がひとりで建てた遊園地があったのだが、老人の死後に、実は殺害した妻の死体を隠すために、工具やセメントを購入したり個人で工事していることをカモフラージュし、同時に人を寄せ付けないために訳の分からない施設を造っていたのだと分かった――という話なのですが、まったく事実無根のデマです。

 デマが広まったのは匿名掲示板。R宮城の建物(閉鎖から約20年が経っており、ほとんど倒壊している)、制作者の“老人”(故人)も実在しており、ひどい中傷と言わざるを得ません。オカルトは節度を守って楽しみたいですね。

白樺香澄

ライター・編集者。在学中は推理小説研究会「ワセダミステリ・クラブ」に所属。怖がりだけど怖い話は好き。Twitter:@kasumishirakaba


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