SATRASの対象となるのか?
2020年4月28日から、教育機関が一定の額の補償金を支払うことにより、オンライン授業で著作物を利用できる制度「授業目的公衆送信補償金制度(SATRAS)」がスタートしています(当初2021年5月までに開始の予定でしたが、コロナ禍の影響で前倒しスタートになり、2020年度は特例として補償金は無償となっています)。違法アップロードされた動画をオンライン授業で見せる場合は、この制度の対象となるのかも聞きました。
質問2
オンライン授業で質問1のような行為を行う場合は「授業目的公衆送信補償金制度」の対象となるのでしょうか?
磯田弁護士の回答
授業目的公衆送信補償金制度は、著作権法35条第2項を根拠とする制度です。これは、近年の授業形態の多様化や、著作物利用の必要性が増えていることから、学校等で利用ができる範囲を拡大すると共に、補償金徴収分配団体を設置し、著作権者への補償を確保しようという制度です。
もっとも、授業目的公衆送信補償金制度は、当該利用が著作権法35条第1項により著作権侵害とはならない場合の規定です。そして、利用する著作物は、違法に複製等されたものではないことが当然の前提になっています。制度の運用指針において、違法にアップロードされた動画を利用する際の取り扱いについて明示されたものは見当たりませんでしたが、上記(2)で見た通り、学校での利用は許されていないということになりそうですから、同制度の補償金の対象とはならないと考えられます。
まとめると、違法にアップロードされた動画についても、補償金を払えば学校で利用できるというものではなく、(2)や(3)のような利用については、著作権侵害となる、ということになります。
著作物の教育利用に関する問題については、引き続き議論が行なわれていますが、そもそも学校教育の現場で現行法に従った運用がなされていないのではないかという指摘もあるところです。そのような状況では、権利者側の理解を得ることは困難で、利用の必要性を訴えたところで議論は進みません。また、インターネットを通じた著作物の不適切な利用については近年トラブルが増加しているところです。そのような状況を踏まえて、学校における著作物の利用については現在のルールに反していないか、生徒への教育として適切かを今一度立ち止まって検討する必要があるように思われます。
教育の場として適切な利用を
違法アップロード動画の授業利用は、法的な問題にとどまらず、倫理的な問題もはらみます。教育の場で生徒に規範を示すべき教師の行いとしては適切とは言い難いのではないでしょうか。
SNSで指摘している学生はこのような行為が問題であると気づいていますが、「学校で見せているのだから」と、違法アップロードされた動画の利用をなんら問題がないと思ってしまう学生もいるかもしれません。
磯田弁護士の言うように、教育として適切な著作物利用が行われているのか見直しが必要なのではないでしょうか。
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