聞いた話なのですが、霊能者の方々いわく幽霊は「立体感がなく平坦で不自然」という感じ、分かりやすいところでは「ひと昔前の、チープな作り物の心霊映像」のように見えているそうです。黒沢清監督のホラー映像作品「降霊」に出てくる幽霊がまさにそのとおりで、数年前、それを見た霊能者が口を揃えて「見えている幽霊に非常に近い」と証言している、と話題になりました。
さて、今回ご紹介する作品に登場する「モノ」は、どこからどう見ても怪異なのですが……それが幽霊なのか、妖怪なのか、はたまた人間なのか。一体何であるかさえ不明瞭ながら、その後に起きるであろう不穏な出来事までをも想像させる、非常に不気味な内容となっています。
作者は漫画家の兎屋まめ(@usayamame)さん。コミックサイト「ソノラマプラス」にて、日常に潜むヘンテコを探すショート漫画『黄昏ヘンテコ奇譚』を連載中です。
兎屋さんの友人、Tくんのお話です。彼が結婚披露宴などで、飲食・宴会のサポートを担う「バンケットスタッフ」の仕事に就いてしばらく後、スタッフとしてホールデビューした時のこと。一生懸命に仕事をこなすTくんでしたが、その最中でふと、視界に違和感を覚えたそうです。
Tくんが見つけたのは、薄汚れたワンピースにボサボサの長い髪、落ち窪んでギラギラと血走った目、それでもってキョロキョロと周りを伺っている、明らかに「この場所に似つかわしくない、異質としか言いようのない女」でした。
どう見ても「その場から浮いており、非常に目立つ」存在でしたが……不思議なことにホールスタッフを除く式場の人々は、その女にまったく気付いていません。やがて女は出席者の背中へぴったりと取り付き、いやらしい笑みを浮かべ、耳を舐め回し……さすがにおかしいと声を掛けようとしたTくんでしたが、先輩から「気づかないフリをしておけ」と止められたのでした。
披露宴が終わり、式場を去る出席者の背中には、あの女ががっちりと抱き付いていました。これだけのことをしているにも関わらず、最後まで誰も女に気づくことはありませんでした。
あの女の正体について、先輩は「少なくとも新郎新婦の関係者ではないだろう」と語ります。続けて先輩は言葉を重ねました。「あの女……しばらくしたら別の式の時に、戻ってくるから」と。
それを聞いたTくんは、早々にバンケットスタッフの職を辞したそうです。
※作品提供:兎屋まめ(@usayamame)さん
たけしな竜美(@t23_tksn)
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