【好きなゲームが世間のクソゲーな人インタビュー】RTA走者に聞く「メジャー Wii パーフェクトクローザー」の面白さ(1/2 ページ)
「パーフェクトクローザー」RTA走者・ソードフィッシュさんにお話を伺いました。
年末企画「自分の好きなゲームが世間ではクソゲーと言われている人インタビュー」。今回は、2008年クソゲー・オブ・ザ・イヤー大賞を受賞した野球ゲーム「メジャー Wii パーフェクトクローザー」のRTA走者さんにお話を伺いました。
企画:好きなゲームが世間のクソゲー
「これはクソゲー」「あれはクソゲー」と世間は気軽に言うけれど、遊び方も感性も人それぞれ。むしろ、そんな風に言われている作品の魅力を知っている人に話を聞いてみよう。Twitterで募集をかけたら、2〜3人くらい手を上げてくださるのでは?
……と思っていたら、100人くらいから連絡が来ちゃった企画です。編集部のリソース的に可能な範囲で記事化。1日1本ペースだと公開しきるまでに数カ月かかるので1時間に1本ずつ公開します。
「メジャー Wii パーフェクトクローザー」との出会い(ソードフィッシュさん/@swordfish4649)
「パーフェクトクローザー」がクソゲーと言われていることは、もともと知っていました。私自身ゲーマーとして自分でプレイしてみて、実際どうなのか判断してみたい気持ちがありました。怖いもの見たさもありましたかね。
今年(2020年)初め、中古ショップのジャンク品コーナーに厳重なビニール梱包をされた、その場にそぐわないゲームソフトがありました。それがパーフェクトクローザーと私の出会いです。
ジャンク内容には「臭い」と今までに見たことのない理由が書かれていて、衝撃を受けました。価格はなんと500円。当時の相場は1000円前後だったので破格でした。(余談ですが名だたるクソゲーって、けっこういいお値段がするんですよね。評判の悪さからアーカイブ配信が絶望的で、世に出回っているもの限りなのに対し、一定のマニアから需要があるので)。
そうして購入したのですが、開封の段階で後悔しました。むせかえるような線香の香りがしたので、1週間ほど野ざらしにすることにしました。記憶と香りがリンクをすることを「プルースト現象」と言うそうなのですが、私の中では「線香=パーフェクトクローザー」と結ばれています。
なぜこのゲームのRTAを始めたのか
私の持論として「どんなゲームでも、RTAであればそれなりに楽しくなる」という考えがありました。自分の中で目標を立てて、それを達成することは言うまでもなく楽しいですから、そこにゲーム単体の楽しさは関係ないだろうというわけです。
この作品に関しては「いつかやろうかなあと」いう曖昧な感じだったのですが、別のゲームの配信中に「『パーフェクトクローザー』のRTAやりてぇ」とボソッとつぶやいたところ、視聴していたRTA走者が電波を感じ取り、クソゲーだけを集めたRTAマラソンを開催する、という事態に発展しました。
持論の正しさを確かめたかったこと、企画の元凶になってしまったことから、このゲームのRTAを走る決意をしました。
できるだけ早くクリアするために通常プレイでは思いつかないことをする面白さは「パーフェクトクローザー」のRTAでも変わりません。どんな展開になるのか、私が参加した「Kusoge Of The RTA」の流れに即して解説します。
「パーフェクトクローザー」RTAの流れ
ゲーム冒頭に入団テストの打者と勝負するシーンがあります。普通は打ち取ったり、三振にしたりすると思うのですが、最速なのは、なんとホームランを打たれることです。そのため、ド真ん中に真っすぐを投げるのですが、打たれるかどうかは運。ゲームの開始からガチャを楽しめます(プレイ時間2分40秒ごろ)。
続く「3回を無失点以内で抑えろ」というミッションでは、アメリカが舞台のメジャーであっても日本語力が求められます。つまり「点を取れ」とは言われていないわけですね。
1回表10失点のタイミングでスタートをするのでついつい点を返したくなりますが、我慢してこちらの攻撃になったらバントでアウトになって撤収します。「こういう場面ではこうするであろう」という固定概念を捨て、柔軟なルートを作ることがこのRTAでも求められます。
クライマックスは、ベテラン捕手・サンダースの引退試合のミッション。9回表5-5の場面で逆転して、勝利するというもの。
こちらの攻撃から始まるのですが、とにかくボールが飛びません。基本的に真ん中付近に真っすぐが来る、つまり相手の失投を待ち、ホームランを打つ運ゲーになります。
さらに打順は先頭打者サンダースから始まるのですが、初球バントで凡退させないとイベントが挟まってタイムロス。つまり、1アウト献上することになります。
加えて前述の通り、先のミッションにあった攻撃回はバントで凡退しており、ここまでの30分間、単調な作業をしているので目が完全に鈍ってしまっています。その状況でホームランを打つことは難しく、プレイヤーの集中力や反射神経が試されます(プレイ時間30分ごろ)。
「パーフェクトクローザー」RTAの今
クソゲーだけのRTA企画「Kusoge Of The RTA」の効果があったのか、世界中のRTA記録をまとめたサイト「speedrun.com」に「パーフェクトクローザー」のページが新設され、走者が去年比で3倍になるということがありました。
1人→3人。これはすごいことですよ!
そして、日本の最高学府・東京大学における2020年駒場祭では、東京大学ゲーム研究会でメジャー三部作連続RTAが行われ、「パーフェクトクローザー」も登場しました。
※メジャー三部作:2008年に発売されたマンガ『MAJOR』を原作とするゲーム3種「MAJORDREAM メジャーDS ドリームベースボール」「MAJORDREAM メジャーWii 投げろ!ジャイロボール!!」「メジャー Wii パーフェクトクローザー」。いずれもクソゲーと言われている。
前述の難所・サンダース引退試合をどう攻略するのかを見ていたら、ホームラン戦法だけでなく、バント戦法も改良していて驚かされました。
このゲームには「3塁線上にバントを転がすと守備が乱れる」という仕様があります。元から知られてはいたのですが、特定の状況下でそれをやると安定して1点取れ、逆転できることを研究されていましたね。やっぱ東大は違えわ! と思わされました。
今後の展望としては、日本最大のRTAイベントである「RTA in Japan」にメジャー三部作リレーRTAを持ち込みたいですね!
実際にプレイしたから言える「パーフェクトクローザー」の感想
さて、実際にプレイしてみての感想ですが「そんなにヒドいかなあ」というのが正直なところですね。
いきなりフリーズして、Wiiから異音がする洗礼を受けたものの楽しく遊べました。聞いたことろによると、フリーズ→異音のコンボはWiiの中が焼ける(?)という話を聞いたことがあり、危うく焼きWiiになるところだったみたいですよ!
おすすめなのは対戦モードですね。従来の野球ゲームは球速や変化球の表示があるのですが、それが全くないのです。緩急をつけるボールなのか、高速変化で三振を取るボールなのか、手元で変化してゴロにするボールなのか、球筋で予想することになります。
また相手がどのような変化球を持っているのかも表示されません。相手の手の内を探る頭脳戦も必要になりますね。公式サイトいわく「追求したのは、本格野球ゲーム」。それがもっとも味わえるモードですので、ぜひ遊んでみてほしいです。
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