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【好きなゲームが世間のクソゲーな人インタビュー】「星をみるひと」研究者に聞く“問題のある作品だからこそ愛されてきた理由”(1/2 ページ)

「星をみるひと」関係者への取材を行っている方にお話を伺いました。

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 年末企画「自分の好きなゲームが世間ではクソゲーと言われている人インタビュー」。今回はファミコン向けソフトとして1987年に発売された「星をみるひと」の研究者さんにお話を伺いました。

今年2020年にSwitch版が登場

企画:好きなゲームが世間のクソゲー

「これはクソゲー」「あれはクソゲー」と世間は気軽に言うけれど、遊び方も感性も人それぞれ。むしろ、そんな風に言われている作品の魅力を知っている人に話を聞いてみよう。Twitterで募集をかけたら、2〜3人くらい手を上げてくださるのでは?

……と思っていたら、100人くらいから連絡が来ちゃった企画です。編集部のリソース的に可能な範囲で記事化。1日1本ペースだと公開しきるまでに数カ月かかるので1時間に1本ずつ公開します。

「星をみるひと」(ノヒイ ジョウタさん/@toroshan

 RPG「星をみるひと」は「どんな人物が開発に携わっていたのか」といった内部情報がほとんど開示されておらず、「有名な劇作家が本作のシナリオを考えた」というデマが広まっていたほどでした。私はこのゲームの真相を知りたく研究を続けているうちに、かつての発売元であるホット・ビィ関係者の方々などにお話が伺えるようになり、ようやく当時の状況が見えつつある段階までたどり着きました。

 現在は「note」上や『まんだらけZENBU』(まんだらけ出版)で連載中のコラム「RESTART」にて「星をみるひと」や同作を出したホット・ビィがどのような道のりを歩んできたかの情報発信を行っています。

世間ではクソゲーと言われている理由

 本作の問題点の多くは「不親切で理不尽な難易度」に集約されます。例えば、最初のエンカウントでの生存率は、一説にはおよそ50%と言われています(まともに勝てる敵の出現率)。

 その一方で「てれぽーと」というESPを覚えるまで戦闘中の逃走ができなかったり、ゲーム序盤から回復困難な行動不能技を使う敵が現れたりとプレイヤーは不利な状況に陥りやすく、非常に人を選ぶ仕様だと思います。

 また、マップ間のつながりが一部おかしくなっていること、扉を開ける鍵の役割を果たすIDカードが消費アイテムで「入る用/出る用」の最低2枚が必要なことなども、多くのプレイヤーの心を折ってきました。

クソゲーとされる理由に納得できるか

 おおむね納得し、受け入れています。

 ただ「星をみるひと」は「ひたすら敵が強く、プレイヤー側が不利」と揶揄(やゆ)されがちですが、後半になると、主人公たちの成長で実質無敵レベルの体力を得られるほか、自分のターンを続けたまま一方的に敵を殴れるESP(でふまいんど)を駆使できるようになるといった話も広まってほしいとも思います。全ての要素がプレイヤーを冷遇しているわけではありません。

このゲームの魅力

 良いところとしては「退廃的なSFを舞台にした世界観の作り込み」「超能力の活用によるマップの攻略」「テレパシーを通じて相手の本心や隠された情報を得られるゲームシステム」が挙げられます。また、ビジュアル面では敵キャラクターのデザインが独創的で、主人公たちも人気があります。BGMも多くの方に評価されてきました。

 長所と短所の落差があまりにも大きい作品なのですが、このギャップから「もっとこうすればよかったのに」「こうしたらどうだろう」と考える余地が生まれ、プレイヤーの想像をかきたてます。これが、本作が今日まで愛されてきた理由の1つだと思います。

 また、システムやシナリオには説明不足な箇所が多く“穴”があるのですが、これによって逆に「星をみるひと」というゲーム、物語がより深まると考えるプレイヤーもいます。実際、考察や二次創作、RTA、さらには有志による非公式リメイク作品の発表と、さまざまな方たちが思い思いの形で、このゲームと関わってきました。

 「星をみるひと」にはたくさんの問題がありますが、それと同じ分だけの魅力がある作品だと考えています。

 今年2020年に発表されたSwitch版では遊びやすいアシスト機能が導入され、これまで以上に多くの方が遊べる環境が整いました。今の自分たちには想像もつかないような仕方で「星をみるひと」の“穴”を埋めるプレイヤーが現れるのではないか、と期待しています。

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