【好きなゲームが世間のクソゲーな人インタビュー】例えるなら“Fate版AC北斗の拳”「Fate/unlimited codes」(1/2 ページ)
「クソゲーだからってつまらないとは限りません」。
年末企画「自分の好きなゲームが世間ではクソゲーと言われている人インタビュー」。今回は2008年にアーケード版が登場した、「Fate/stay night」を原作とする3D格闘ゲーム「Fate/unlimited codes」
企画:好きなゲームが世間のクソゲー
「これはクソゲー」「あれはクソゲー」と世間は気軽に言うけれど、遊び方も感性も人それぞれ。むしろ、そんな風に言われている作品の魅力を知っている人に話を聞いてみよう。Twitterで募集をかけたら、2〜3人くらい手を上げてくださるのでは?
……と思っていたら、100人くらいから連絡が来ちゃった企画です。編集部のリソース的に可能な範囲で記事化。1日1本ペースだと公開しきるまでに数カ月かかるので1時間に1本ずつ公開します。
「Fate/unlimited codes」(まさやんさん/@gebousa)
僕の推すゲームはかなり古いものになりますが、「Fate/unlimited_codes」です。格ゲー界隈(かいわい)では「AC北斗の拳」などと同系列のクソゲーと呼ばれていますが、僕はこのゲームの全国大会で優勝する程度には好きですし、その後も何度も大会を開いています。
このゲームの魅力
<原作再現度が当時のゲームとしてはとにかく高い>
まずは真面目に、クソゲーとは無縁な本当に良い部分の紹介から。
原作にない技同士がぶつかった場合は基本的に相殺するように作られているのですが、例えばセイバーの「約束された勝利の剣(エクスカリバー)」とギルガメッシュの「天地乖離す開闢の星(エヌマエリシュ)」。これらはお互い飛び道具系超必殺技として使用されますが、同時に発動した場合、ギルガメッシュ側が一方的に勝ちます。
セイバーの「約束された勝利の剣(エクスカリバー)」とライダーの「騎英の手綱(ベルレフォーン)」をカチ合わせると、セイバー側が勝ちます。また、セイバーには「全て遠き理想郷(アヴァロン)」という技が存在し、原作ではエヌマエリシュに対してカウンターのように使用されますが、本作でもエヌマエリシュ含む全ての技に打ち勝つことができます。
他にもセイバーvsギルでは、ギル側の投げモーションがセイバーの足首を持ち上げるものに変化し、投げ抜けされた場合は「王を足蹴に……!」という専用のセリフ。士郎vs言峰、ギルvsバーサーカー、ランサーvsバゼットなどでも、性能や演出が変化するシチュエーションが多く用意されています。
原作の名シーンを格ゲー内で再現しているだけでもワクワクします。僕は稼働初期にアーチャーを使用して「倒してしまっても構わんのだろう」と言いながら、友人のバーサーカーにボコボコにされていました。
<バランスがメチャクチャがゆえの神バランス(ぐるぐる目)>
格闘ゲームにおいて重要視されるものの1つに「バランス」があります。最近メジャーな格闘ゲームは3〜5コンボ程度で1ラウンドの決着がつくように作られていますが、この「Fate/unlimited_codes」はほとんどの場合が1〜2コンボ。とにかく火力が高いのです。
開発段階である程度は見越していたのか、体力バーが「ファイナルファイト」のボスのように2本用意されているにもかかわらず、あっという間に消し飛びます。加えて、共通システムとしてワンボタンで即発動するカウンター技が存在します。これを成立させるとコンボ始動となり、全キャラに“ワンチャン”があります。
各キャラクターが繰り出す技もさすがは英霊、お行儀の良い格ゲーにはないハチャメチャな技が多く用意されています。画面の半分以上に及ぶリーチを持った見えない中下段攻撃、ガード中や投げを食らいながら繰り出せる飛び道具、敵の超必ゲージを削る技……など、かなりトガった技が目立ちます。バランスなんて知ったこっちゃありません。
最近よく「eスポーツ」という言葉を耳にしますが、そういった競技性とは無縁の「当たりゃ勝ちなんだよ!!」というギャンブル狂いのような格闘ゲーム。主食、主菜、副菜なんて概念は捨てきったアブラニンニクカラメマシマシ。そんなジャンキーさが魅力で、ハマる人はとことんハマります。
<セイバー・リリィ>
これはかなり重要です。今でこそ人気キャラのセイバー・リリィ、初出はこのゲームです。
このゲームがなかったら! セイバー・リリィは!! いません!!!
でも、「Fate/unlimited codes」はクソゲーです。公式サイトがなくなってしまうくらいに。
世間ではクソゲーと言われている理由
一言で言ってしまうと「ハメゲー」だからです。コンボ火力もさることながら、攻めもえげつないものが多いです。いくつか代表例を紹介します。
- セイバー:投げ以外の攻撃が何か当たれば相手は即死します
- ルヴィア:飛び道具以外の攻撃が当たれば相手は即死します
- ギルガメッシュ:特定の状況下でギルに攻撃をガードさせると、なぜか攻められているはずのギル側の永久コンボが始まります。コンボをミスしたときのフォローに用いる妥協コンボも永久コンボ
- ライダー:あいこか勝ちしかないジャンケンを10回くらい仕掛けられます
- 凛:画面端が近ければ永久コンボ、届かない場合はほぼ回避不能の起き攻め
- キャスター:見た目は2択だけど、実際はガード不能の起き攻めがループします。それが2回通ったらキャスターの勝ち(本作ではこれでも弱キャラと言われています)
ゲームセンターでは開始2秒くらいでセイバーやギルガメッシュの長時間コンボが始まり、食らった側は席を立って諦めてジュースを買いにいったり。相手プレイヤーの真横に行って凝視してプレッシャーをかけてミスを誘う、というこのゲーム特有の対策もありました。
そして、これらの動きをするためのコマンド入力がとにかく難しい。プロの格ゲープレイヤーでも、かなりの練習が必要だと思います。このゲームは土俵に立つまでのハードルがやたらと高く、ちょっとかじった程度では何もできないままハメ殺されます。
クソゲーとされる理由に納得できるか
納得できます。まごうことなくクソゲーです。でも、クソゲーだからってつまらないとは限りません。
少なくともこのゲームをプレイする人たちは皆爆笑していたし、ギャラリーも笑っていました。全国大会(闘劇)本戦の舞台裏で酒盛りが始まったゲームはこれくらいじゃないでしょうか。そういう意味では「実はこういうゲームこそ良ゲーなのではないか?」とすら思います。
本作を取り巻く環境としては、新型コロナの関係で自粛中ではありますが毎年ゴールデンウイーク中に大阪の御園ユニバースという会場で「KSB」または「KVO」という格闘ゲーム大会があり、その中の種目に頻繁に選ばれています。選ばれている理由としては運営側にこのゲームのファンが数人いることと、少数ながら今でもプレイしている人たちの声があることです。
これから本作を楽しみたい人に向けて
「Fate」のコアなファンであれば、演出を見るためだけにファンアイテムとして買うのはアリだと思います。格闘ゲームとしてはあまりにもクセが強いため「とにかく難しいコンボを決めるのが大好き!」という頭のおか……個性的な人でないと対戦環境の少なさ(2008〜2009年の作品でネット対戦がない)もあいまって、なかなか楽しめない可能性が高いです。我こそは高難度コンボを極めし者という方がいましたら、ぜひ遊んでみてください。
そして、せっかくこのゲームを遊ぶなら、いろいろなキャラを触ってみてほしいです。チャレンジモードのコンボ練習をやるだけでもかなり長時間楽しめると思いますし、まかり間違って自信がついたとあらば、ぜひ大会に参加してみてください。運営や現役プレイヤーたちは温かく歓迎してくれますよ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.