大のアニメ好きたちが選ぶ“もっと評価されるべき2020年アニメ”発表 「放課後ていぼう日誌」「宝石商リチャード氏の謎鑑定」を抑えた1位は?(2/3 ページ)
カルト作「ジビエート」も上位に。
10位:天晴爛漫!(4月、7〜9月放送)
「映画クレヨンしんちゃん」シリーズや「TARI TARI」などで知られる橋本昌和さんが監督/シリーズ構成を手掛けたオリジナルアニメ。主人公は、19世紀末に日本からアメリカへ流れ着いた社交性ゼロのエンジニア・空乃天晴と臆病な侍の一色小雨の2人。無一文の彼らが日本に帰るための金稼ぎの手段として挑んだ、アメリカ大陸横断レースの模様が描かれます。
投票者からは「オリジナル作品だから」という以上に先が読めず、勢いと意外性のあるストーリー展開に称賛が集まりました。「科学好きな主人公ということで『Dr.Strone』の千空と比較されがちだけど、天晴はまだまだ精神的に未熟。そんな天晴や臆病な小雨が成長し、人間の武器である科学で理不尽な暴力を打ち破るという展開は人間賛歌としても冒険活劇としても気持ちがよかった」という声のように、主人公たちの成長に心震わせた人も多かったようです。
#point2#9位:NOBLESSE -ノブレス-(10〜12月放送)
韓国発のウェブトゥーンで、日本では2017年からLINEマンガで和訳版が連載されたダークファンタジーが原作。820年の眠りから目覚めた貴族の守護者“NOBLESSE”にして私立芸欄(イェラン)高校で過ごす主人公のライジェルらが、世界征服を狙う謎の組織・ユニオンの改造人間と戦います。
基本的にはシリアスな設定ながら、好評だったのは日常パートにおける特異なギャグセンス。ライジェルの「ラーメンはあえて伸びて麺の量が増えてから食べる」という定番ネタをはじめシュールなネタがどこから飛んでくるか分からず、シリアスパートとの緩急でアニメファンを虜に。「乙女系韓国アニメの皮をかぶったハイセンスギャグアニメ」「コメディーシーンの面白さもさることながら、それを話に不可欠な要素として回収していく手つきが見事」という声もありました。
8位:アサティール 未来の昔ばなし(4〜6月放送)
サウジアラビアの制作会社「マンガ プロダクションズ」と東映アニメーションが共同制作したオリジナルアニメで、日本ではJ:COMでのみ放送された同作が8位にランクイン。2050年のサウジアラビアを舞台に、野沢雅子さん演じるお婆ちゃんが3人の孫にアラビア半島に伝わる昔話を語るという作品です。
1話完結で見やすく、教訓めいた昔話が毎回展開することから「大人も子どももみんな楽しめる」「いい意味で非常に子ども向け。深夜アニメばかり見ている心に染みる」など子ども向け作品としての評価が高く、「朝や夕方に地上波で再放送されてほしい」という声も。孫たちがどんなトラブルを起こしても昔話をし始めるお婆ちゃんの豪腕ぶりを評価するコメントも多く見られました。
7位:波よ聞いてくれ(4〜6月放送)
『無限の住人』で知られる沙村広明さんが『月刊アフタヌーン』で2014年から連載中の漫画が原作。札幌のスープカレー店の店員として働く女性・鼓田ミナレが、ひょんなことから深夜ラジオ番組のパーソナリティーとして活動する姿を描く作品です。
同作については、怒濤(どとう)のトークを展開するパーソナリティー役を巧みにこなした杉山里穂さんの演技に絶賛が集中。また“予測不可能な無軌道ストーリー”といううたい文句通り、ラジオでの活動と並行して同じアパートの住人の部屋で起きる怪現象や元カレからのアプローチといった波乱をミナレが体当たりで解決していく物語も魅力的でしたが、中でも評価されていたのが最終話。挿入歌演出も印象的だったオリジナル展開のエピソードを2020年のベストとして挙げる人もいました。
6位:プランダラ(1〜6月放送)
「そらのおとしもの」の水無月すうさんが『月刊少年エース』で連載している最新作をアニメ化。数字(カウント)が全てを支配する世界で、剣士・リヒトーと“伝説の撃墜王”を探す少女・陽菜が旅をするアクションファンタジーです。
同作で特に評価されたのは、2クールたっぷり使って展開されたストーリー構成。「中盤からのジェットコースターのような物語にほれた」「物語の面白さでは2020年屈指。序盤で脱落した人こそあらためて見てほしい」と褒めたたえられています。またエッチな展開も多いですが、「JKがスカートをたくしあげるシーンで号泣してしまう体験は、おそらく本作でしか味わえないでしょう」という独特な赴きも評価ポイントとなりました。
5位:球詠(4〜6月放送)
まんがタイムきららフォワードでマウンテンプクイチさんが連載中の同名原作をアニメ化。受け止められるキャッチャーがいないほど変化する魔球を持つ主人公が、高校で再会した幼なじみとともに全国大会を目指す女子野球アニメです。
票を集めた理由は、とにかく“野球をしていること”。「野球アニメなのに何を言っているんだ」と思われる方もいるかもしれませんが、選手の心情の変化やキャラクターの細かな動作から感じられる題材への愛は、野球ファンも納得のものだったもよう。また「野球なら麻枝、麻枝なら野球」と自ら語るほど自身の作品に野球描写を交えてきたゲームクリエイターの麻枝准さんが作詞作曲したオープニング、エンディングも好評でした。
4位:ジビエート(7〜9月放送)
画家の天野喜孝さんによるキャラクター、書家の紫舟さんによる題字、刀鍛冶の石田國壽さんによる刀など、日本のクリエイターが“和”をテーマに世界に向けて発信する「GIBIATE PROJECT」。「ジビエート」はその集大成として制作されたアニメで、劇伴を古代祐三さん、SUGIZOさんがサウンドプロデュースした主題歌は吉田兄弟や大黒摩季さんが担当するなど、やはり多くの有名クリエイターが関わっています。
物語の舞台は怪物“ジビエ”に変貌してしまうウイルスがまん延し荒廃してしまった2030年の日本。江戸時代からタイムスリップしてきた侍や忍者が、ワクチンの研究をしている博士たちと協力しながら旅をします。
額になぜか「凶」の字が刻まれたこわもての僧兵や、どんな料理をしても必ずカツカレーになってしまう爆弾魔といった個性的過ぎるキャラクター、そしてひたすら新潟県にある研究所を目指し続けていたら最終的には宇宙規模の話になってしまった奇抜なストーリーがアニメファンを魅了したようで、「クールさとギャグ要素を兼ね備えた、2020年代のとっておきアニメ」「すしで言うとカリフォルニアロール」との評も。その視聴体験を「ライブ感がすごかった」「アニメの話で他人とこんなに盛り上がれたのは記憶にない」「笑いすぎて過呼吸になったのは久しぶり」と振り返る声が多く、「コアなアニメファンの中では十分に話題になったが、より多くの人に視聴されてしっかりと評価されてほしい」というコメントも寄せられました。
3位:放課後ていぼう日誌(4月、7〜9月放送)
『ヤングチャンピオン烈』で連載されている、小坂泰之さんによる女子高生釣りマンガが原作。主人公の陽渚たちが暮らす“芦方町”のモデルとなった熊本県芦北町が“令和2年7月豪雨”で被災すると、「ねんどろいど」キャラクターの購入を通じた寄付企画や展覧会での募金箱の設置といった支援を実施したことが話題に(関連記事)。また最近では、ふるさと納税の記念品として進呈されるクリアファイルやラッピング電車として同作が扱われました。
同作では釣りのマナーについてしっかり触れていることが琴線に触れた人が多かったもよう。「アウトドアものでマナー問題はお約束だけど、生態系や環境保護といったところまで踏み込んでいることを評価したい」というコメントもありました。とはいえ堅苦しい作品ではなく、「釣り未経験だけど、陽渚たちが楽しそうだったからこの夏にやってみた」「放送翌日の夕食は作中に出てきた魚になるくらいに見入った」と、美少女の日常ものや部活ものを得意とする動画工房らしいほのぼのした空気感や丁寧な釣り&料理描写を楽しんだ人も見られました。
2位:宝石商リチャード氏の謎鑑定(1〜3月放送)
集英社 オレンジ文庫から刊行されている小説が原作の“ジュエルミステリー”。美しき宝石商のリチャードとうかつな大学生・中田正義のコンビが宝石に絡んださまざまな騒動を解決していきます。
毎話しっかりと面白い宝石絡みの謎解きと並行して、どんどん進展していくリチャードと正義の関係性が印象深かったようで、2人を「2020年のベストカップル賞!」とする評も。また癖の強いゲストキャラクターたち、特に最終盤で登場した正義の父親のインパクトの強さに触れた人が多かったのも印象的。「女性向けと思わがちな作品だけど、絶対に男性でも楽しめるはず」という一作でした。
1位:ID:INVADED イド:インヴェイデッド(1〜3月放送)
「Fate/Zero」や「アルドノア・ゼロ」を手掛けたあおきえいさんが監督を、小説家の舞城王太郎さんがシリーズ構成・脚本を務めるオリジナル作品。殺意によって造られる仮想世界「イド」で得たヒントから、現実世界の殺人事件を解決していく異色のSFミステリーが、もっと評価されるべき2020年アニメランキングの1位となりました。
「今年一番次回を待ちきれないワクワク感があった」「繰り返し見たくなる伏線の多さに感服」「最初は全く意味が分からなかったけど、毎週設定を理解させながら謎を解いていき、最後にはしっかりと全ての問題を解決して驚いた」とストーリーテリングの巧みさを評価するコメントが多数。「2周目が絶対に面白いから、絶対にこの年末年始に見直す!」との声も見られました。
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