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「本社からは冷たい目で見られていました」 カインズ公式が壊れたと話題、“博士とギャル”仕掛け人に話を聞いた

あまりにインターネットすぎる。

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 1月末ごろ、ホームセンターの「カインズ」がイカれた公式コンテンツを公開しているとTwitterで話題になりました。それは同社のオウンドメディア「となりのカインズさん」で連載中の読み物「深掘り!カインズ研究所」。第一話ではカインズで買った商品におしっこします。



 「深掘り!カインズ研究所」は、カインズの事を知り尽くしたIQ700の「博士」と、研究員の「ギャル」が対話形式でカインズの魅力を紹介する読み物コンテンツ。“狂った博士とツッコミ役の助手”というもはや伝統芸能と呼べるテンプレートながら、公式とは思えない博士の狂いっぷり、そして切れ味鋭すぎるギャルのツッコミがTwitterユーザーの心に鮮烈に突き刺さりました。

 そんな会話の隙間を縫うように放り込まれるカインズ豆知識も興味深く、例えば第一話のテーマは「カインズとカインズホームがあるナゾ」。第二話以降は生活や趣味を豊かにするさまざまなグッズを紹介しており、「こんなものまで売ってたんだ!」と実際にカインズまで脚を運びたくなること請け合いです。




 なお博士がマッドな研究の隠れ蓑にしている「となりのカインズさん」は、カインズが2020年6月にスタートさせた自社メディア。人気ライターによる読み物記事、メーカー取材、DIYや料理の紹介など、多彩な商品を扱うホームセンターならではの横断的なコンテンツを提供し続け、同年12月には開設半年で月間100万PVを突破。オープン8か月現在、約200万PVにまで伸びています。

 そんな新進気鋭のメディアに終わってる博士を登場させて平気だったのでしょうか。平気じゃなかったという創刊編集長の清水俊隆さんに話を聞きました。



お蔵入りになった「幻の第二話」がある? 「深掘り!カインズ研究所」裏話

――「深掘り!カインズ研究所」第一話が公開された2020年6月当時、社内の反応はいかがでしたか。

清水 本社(埼玉県本庄市)からは冷たい目で見られていました。カインズはデジタル人材を大量採用するために表参道に新事務所を構えたのですが、となりのカインズさんは本社ではなくそちらで作っています。そのため、誇張しすぎかもしれませんが「中途入社組のどこの馬の骨か分からないやつにカインズのブランドイメージを損なわれてたまるか」という雰囲気が本社にはあったと聞いています。

 コンテンツ化するために社内で情報収集する際も警戒されていました。でも、なかには隠れファンとか味方になってくれる社員もいて、そうした方々が手伝ってくれました。バズらないと立場が危うい、Twitter公式アカウントにそう書いていますが、あれは本当です。「手伝ってくれている社員に報いるためにも、デジタル改革の狼煙(のろし)を上げるためにも」。まさにそういう状態にありました。

――今回話題になったことで何か変化はありましたか。

清水 カインズ社内で「多様性」という言葉がたくさん聞こえるようになりました。他にもバズっている記事はありますし、「深掘り!カインズ研究所」単体の力ではありませんが、今回の件でより鮮明になったような感触があります。カインズは店舗での接客商売が基本なので、画一的な行動や思考が重んじられてきました。それも非常に大切なことですが、もっと「個」も出していこう、そういう自由な雰囲気を社内に醸成して、企業イメージや採用にも一役買うようになってきています。私の知ってるカインズじゃない、みたいなことを社内外から呟かれているようですが、カインズ像がいい意味で壊れてきているなと。

 ちなみにバズる前の「深掘り!カインズ研究所」のデータをみると、閲覧数も滞在時間も他の記事より圧倒的に低い、当然打ち切りです。それでも制作自体は水面下でコソコソ続行していました。まだ公開していない記事も10〜20はあると思います。コンテンツ制作にご協力いただいていたクリエイターさんには打ち切りを告げてしまったばかりなので、話題になったことで再依頼できる免罪符を手に入れた形です。ただ、また同じようなコンテンツを掲載し続けても面白くないので、新しい作戦を練ろうと思います。

――お蔵入りした「幻の第二話」があるとのことですが、どのような内容なのでしょうか。

清水 うんこの話です。

――うんこの話。


清水 あらためて振り返ると「深掘り!カインズ研究所」よりも尖った記事を公開しているので、なぜNGになったのか今では不思議だったりします。私個人の編集長アカウントを最近始めまして、もしもフォロワーが増えて社内での発言力が増した暁には、時期を見て幻の第二話公開にむけて説得していこうと思います。キャラクターのグッズ化、店頭展開もできたらいいですね。調子に乗りすぎて怒られないよう慎重に……。

――今回の一件で興味を持った方に向け、創刊編集長一押しの記事を教えていただけますか。

清水 ザイエンスさんの記事ですね。まだ電柱が木製だった大正11年(1922年)に創業し、防腐処理木材の製造メーカーとして成長、その後も時代の変化に合わせ進化を遂げてきた会社が画期的なシロアリ駆除商品を開発したお話です。

 あともうひとつ、カインズのハンガー開発者が消費者に対して「ハンガー意識高い系」になるよう講釈を垂れる記事もおすすめです。こちらもぜひ読んでみてください。


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