阪急電車の「マルーンカラー」はなぜいつもきれいなの? 竣工50周年の平井車庫で「知られざる裏側」体験してきた(1/3 ページ)
阪急電車の重要拠点「平井車庫」に潜入! 安心・信頼の裏側を見てきました。
2021年9月15日21時20分ごろ、阪急電鉄神戸線の岡本駅付近で、特急列車と遮断機の降りた踏切内へ侵入した乗用車との衝突事故が発生しました。
かなり大きな事故でしたが、阪急電鉄は翌16日朝までに撤去、復旧作業を終え、「始発に平常運行を再開」しました。この日、朝から阪急電車を使う予定だった私はこの迅速な復旧にとても驚きました。
なぜここまで迅速に復旧できたのでしょう。
阪急電鉄が先日、完成50周年を迎えた「阪急電鉄平井車庫」を報道公開。50年間、阪急電車が取り組み続ける安心・安全・信頼の裏側と「マルーンカラーの車体がいつもきれいで美しい理由」を聞いてきました。
車庫で「事故や災害を想定した訓練」も絶えず行っている
阪急電鉄には、宝塚線の平井車庫、神戸線の西宮車庫、京都線の正雀車庫と桂車庫、計4つの車両車庫・拠点があります。今回見学した平井車庫は、敷地面積が西宮車庫に次ぐ2番目に大きな車庫です。兵庫県宝塚市にあります。
車庫では、車両の留置や検査、修繕、洗浄などの日常メンテナンスを行うほかに、定期的に事故や災害を想定した「訓練」も行われます。
訓練内容は大小さまざまです。阪神・淡路大震災(1995年)を教訓に、南海トラフ巨大地震などを想定したシナリオもあります。
「訓練はもともと実施していましたが、震災後はより力を入れて実施するようにしました。あらゆる事態にも対応できるよう、さまざまな想定のシナリオを設けて常に訓練をしています」(阪急電鉄の広報担当者)
訓練シナリオは毎回内容を変わります。年1回の本部全体合同訓練、各車庫でも年に2〜3回の訓練を実施します。シナリオの内容によって、対応策、乗客の誘導方法、連絡・連携系統、使う道具・機材、配置人員なども違ってきます。こうした日々の備えが毎日の安全・安心・信頼の運行を支えているのだなと、頼もしく思えました。
平井車庫独特の特殊な訓練用設備の1つが「カント(片勾配)付き訓練線」。平地なのに、あえて左右差70ミリの勾配を付けて「傾いて」います。
カントとは、線路のカーブ部に設ける外側と内側のレール高の差/傾きのことです。カーブで遠心力の影響を少なくするために外側のレールは内側よりもやや高く敷設してあります。訓練線ではこれを車庫内の直線線路で再現しています。
カント付き訓練線で行うのは、カーブで脱線した列車をジャッキで元に戻すための「脱線復旧訓練」です。この設備は平井車庫にしかないので、他の阪急電鉄車庫からも訓練を受けにやってくるそうです。
実際に事故で現場対応した社員さんも「緊急の現場でしたが、訓練通りに動けたのでスムーズに事故の処理ができました」と話してくれました。先の衝突事故では踏切の一部設備も損壊したそうですが、一夜で始発までに復旧させました。座学とともに、やはり現場では日頃の訓練で身に付けておくことが一番なのですね。
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