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世代交代を成功させた新時代の「メガテン」 仕事の連絡を絶って遊び続けた歴年のファンが「真・女神転生V」をガチでオススメ(2/3 ページ)

過去作への敬意も挑戦も兼ね備え、新たな境地も描いたシリーズ最高傑作!

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過去作のネタをにおわせる程度に留めつつ、マジメすぎるくらいに真面目なメガテン

 今回のメガテンで、個人的に一番感動したのは「マジメさ」。ゲームの作りもそうなのですが、アトラス作品の中でも恐ろしいほどに真剣な内容です。まず、メインストーリーの部分でおふざけがありません。どこまでもドライで、ストイックに話が展開します。ギャグやクスッとくる部分も、バトル中の悪魔会話(交渉)や特殊会話、ちょっとしたサブクエストにあるだけ。基本的にはどこまでも真面目です。その分、悪魔会話の選択肢や特殊会話は思いっきりギャグ方面に振り切れているのですが、通常戦闘の箸休めになっているので嫌いじゃないです。シナリオ部分は常にシリアス寄りなので、ふざけていい場面をわきまえた弾け方。ちゃ、ちゃんと……している……!

 “神と悪魔と人間の物語”としてニュートラル(中立)をテーマにしていた「真・女神転生IV(真4)」や、“絆か皆殺しか”をコンセプトに人間とニュートラルをより深く掘り下げた「真・女神転生IV FINAL(真4F)」の前2部作は、作品の内容的に人間のお話。ギャグやおふざけ的なイベントが道中にいくつもあったのですが、今回は全くといっていいほどありません。遺物(道中で拾える売却アイテム)のコメントも、前作の山井Pが書いていたキレッキレなギャグではなくなり、逆に硬すぎて寂しいかも。作風が全然違います。アトラスさんは、昔から放っておくと親父ギャグを入れすぎる傾向にあったのですが、今回はむしろ悪魔会話以外で怖いくらい見掛けません。同じナンバリングでも、ここまでガラッと変わるのはすごくないですか? でも、そこが好きなんですよ。前作は、仲魔だけではなく仲間とも一緒に行動する「にぎやかであることに意味があって楽しいメガテン」だったのですが、今回のドライなメガテンも最高です。

真・女神転生V

 サブクエストの形式すらも、前作とは全く違います。前2部作はガントレットやスマホを通して(主に)人間から受注。人間のために、問題を解決していくサブクエストでした。本作は、悪魔から受注して神話のネタを捻ったような話を解決したり、本作のテーマに即した現代的な寓話(ぐうわ)っぽいイベントをこなす形式。作品が違うので見せ方が違うのです。

 それでいて、過去作に対するリスペクトや敬意もしっかり入っています。「真4」はニヤリシステムやミノタウロス、メデューサと戦う流れなどにファミコン時代の「女神転生」。ゲーム全体の構造は「真・女神転生」&「真・女神転生II」を現代的に解釈し直した原点回帰的な作風でしたが、今回は小説のデジタルデビルストーリー的な薄暗い雰囲気から神や悪魔の関係を見せつつ、「真・女神転生III」からの正統な進化を感じさせる大枠。そこに、さまざまなアトラス作品の要素が気付く人には気付く程度に盛り込まれています。もちろん、過去作を知らないと遊べないような設定はないので、新規ファンでも大丈夫。

真・女神転生V 「ペルソナ5」ファンがニヤリと(もしくは戦慄)しそうな会話。とはいえ、バレー部と明言してはいないので、全然関係ない人かもしれないし……くらいのあんばいが良いですね

 例えば日常会話で、メダリストの顧問がいる強豪校の話が出てくるのですが、この学校はもしかして……。いやいや、ちょっとおびえなくてもいいんですよ! これは「ペルソナ5」の世界と同じではありません(むしろ、真5とは絶対つながらない)。あくまでも、メガテン世界にもペルソナのキャラがいるカモシダーマンかもしれないし、逆にペルソナではメガテンのキャラが平和に暮らしているかもしれない、くらいのお遊び。想像の余地を与えてくれるフレーバー。過去のアトラスがよくやっていたファンサービスですね。アトラスのゲームは並行世界。なんとか宇宙とか、なんたら回廊から見えるくらいの別物です。つながらない。

 先ほど語った遺物のコメントも、よく読むと「これは小説版のクォンタムデビルサーガのことでは?」「これはあの作品か?」などなど、過去作ネタが分かる人にだけ分かる形でサラッと入れられています。今回、こうした過去ネタの拾い方がとても上品。DLCすらもギャグじゃないんですよ。例えば、アルテミスの格好やスキルが明らかにパロディーなのですが、それを前面には押してこない。当然のように、新規のいち悪魔として語られています。DLC「人修羅と九人の魔人」も過去作キャラの使い方として「真4F」の経験が生きていますね。自分は「真4F」の最終DLCに出てきた、一人称が「俺」で総理大臣にも容赦しない人修羅も好きだったのですが、1人だけ無関係のオッサンと戦って浮いてたから……。周りが盛り上がってるので、車椅子の知らない人と戦ってみた。スティーブンとは一切面識ないでしょ、あなた。全く知らん人でしょ。それに対して、今回は作品的にも出る意味があります。無口なキャラに戻っていて、プレイヤーごとのイメージを大切にしている配慮もあり、世界観の補完としても良いDLC。なくても問題ない立ち位置です。

真・女神転生V マタドールも「4(死)段階」じゃありません。今回のカジャ系が4段階じゃないから? なんにせよ、駄じゃれを辞めて真剣に戦ってくれたのがうれしい

 ここからは、最初の大ボス撃破後までに分かるネタバレを交えて語らせていただきます。2020年のティーザームービーで「汝らの崇める神は死んだ」と宣言した大魔王ルシファーの姿に、衝撃を受けたファンも多いのではないでしょうか。本作は、シリーズの中でもさらに先。唯一神が既に失われた世界で、最終戦争すら終わった後の物語が描かれていきます。歴代のメガテンシリーズ……特に壮大な方向に舵を切るタイトルでは、最終的な目標として唯一神の打倒を掲げられることが多かったのですが、本作はそれよりもさらに先の視点。これまでのメガテンシリーズの次を見据えた、神なき世界を描いたメガテンなのです。

 メタ的に言えば、これは旧シリーズこそを至高としているわれわれ古参ファンの置かれている立場にも重なります。既に、旧DDSの西谷史氏も上田和敏氏も鈴木一也氏も伊藤龍太郎氏もいなければ、初代「真・女神転生」以降の顔であった岡田耕治氏もいませんし、辛うじて「真4」で原案を務めていた金子一馬氏ですらも、もはや原案ではないのです。「デビルサマナー ソウルハッカーズ」以降のメインライターとして本家メガテン系列を支えた礒貝正吾氏もおらず、旧メガテンの顔と言えた有名スタッフは一切参加していません。

 「真4F」のプロデューサーであり、本作の製作途中まではプロデューサーとして名前が出ていた山井一千氏も、製品版では原案(original concept)になっています。大きくスタッフが変わって、世代交代が成されたメガテンなのです。だからこそ、あえてふざけすぎる要素は切り、シリアスにまとめつつ真剣に作られたのでしょう。そして、私はこの世代交代を歓迎します。現代に合わせたメガテンとして良くできているのです。ちなみに、旧スタッフである鈴木一也氏らが参加した作品としては、フリューさんから「モナーク」公式サイト)という「真・女神転生if」リスペクトの精神もあるRPGが出ています。なんと、旧スタッフの味わいも今の時代に堪能できるのです! ぜひ、そちらも遊んでみてください。あと、フリューさんの方には「カリギュラ2」公式サイト)という名作RPGもあって、いけない、いけない。話が違うメーカーのほうにズレてきたので戻しましょう。つい、好きなゲームの話を始めてしまう……。

 顔となるスタッフこそ変わりましたが、全く新規のスタッフというわけではありません。「女神異聞録デビルサバイバー」や「デビルサバイバー2」「幻影異聞録#FE」「真・女神転生III」「世界樹の迷宮」などに携わっていた方々などのお名前も見掛けるのですが、「真5」はいわゆる“メガテン的なイメージ”の顔役が完全に抜けた新世代のメガテン。「真4」と「真4F」が、過去作(真1&真2)の再構成という原点回帰の形を取ったうえで、「真5」では過去作のリスペクトを入れつつも新たなメガテンを構築しています。全体的に本気でゲーム作りをする気合が伝わってきたので、「真・女神転生VI」も今のアトラスなら絶対に作れると確信しました。

 悪魔絵師を継ぐ次代のイラストレーターである土居政之氏の悪魔デザインも、「真4F」でこちらを驚かせてくれたメガテン的リスペクトなデザインから、さらに今の時代に踏み込んだものとなっており、音楽、イラスト、ゲーム部分含めて世代交代が成功しているメガテンだと、古参のファンとしても太鼓判を押せます。私は「真4」での異形感あるゲスト絵師の悪魔デザインも大好きなのですが、3D化したあたりからの金子絵の系譜を再解釈して継いだ「真4F」のデザインは本当に驚いたんですよ。「真4」のゲスト悪魔は、まだ金子氏のタッチが今とは違ったFCの「女神転生II」や、「偽典」のように複雑で立体映えするデザインが美しいので、いつか3D化して欲しいですね。「D×2 真・女神転生リベレーション」で、コウガサブロウが3D化したのも超うれしかったのでガチャを回しまくって手に入れましたよ。「真4」ゲスト悪魔は3Dでものすごく映える! 土居さんのリファインでもいいのですが、元のデザインの良さもいつか再評価されるとうれしいです(当時のユーザー評価は承知の上で、自分は真4でのチャレンジも嫌いじゃないです)。欲を言うと初代「女神転生」デザインの悪魔や「魔神転生」シリーズの悪魔なども、いつか3Dでみたいですね。お、お前は合体でよく出てくる変な色のドリアード……!

 いかん、いかん。話がまたズレてしまった。少々メガテンらしさにとらわれ過ぎているドライなストーリーとキャラ描写は賛否が分かれる部分ではありますが、それは後述。「真5」のスタッフなら「死段階」とか言い出したりせずに、過去作も大事に扱ってくれるのではないかと安心しました。「そもそも、真3の時点でなぜあんな改変をした! 言え! 言えぇぇ!!」と「真3」のリマスター版が出た時は思ったのですが、まあ、うん。新作では悪ふざけを止められるようになった、という証だと思うので忘れましょう。ぼく忘れた。


 あと、個人的に「世界樹の迷宮」の展開にも期待を持てたのが大きいですね。そりゃ、これを作ってたらなかなか胎動しないわけですよ。うれしい。メチャクチャうれしい! ペルソナの第二プロダクションだけじゃなく、今のアトラス第一プロダクション(も)期待できるぞ!! ペルソナ25周年バンザーイ! 真・女神転生29周年バンザーイ! 「PROJECT Re FANTASY」は、いつ出るんですかスタジオ・ゼロさん! 話がまたまたズレてしまった。


アトラス作品とプレスターンの集大成的なバトル

 戦闘は「真・女神転生III(真3)」から始まった“プレスターンバトル”。これは、相手の弱点を突くことでプレスアイコンが光り、行動回数が1回増えるというルールを採用した特殊なターン制バトルです。「真3」以降のアトラス作品では、さまざまな形でアレンジされながら採用され続けている革命的なシステム。本作は、そんな歴代のプレスターンバトルを吸収しつつ、その他のアトラスゲーで培われてきた要素の集大成となっています。

真・女神転生V 光っているアイコンの消費タイミングも従来から変更。“次に回す”を使っても点滅アイコンが先に消費されなくなりました。基本の戦略も大きく変わっています

 「幻影異聞録♯FE」のように、属性アイテムを惜しまず使うことでスキルを持っていなくても弱点を突ける自由度。「デジタルデビルサーガ アバタールチューナー」で採用されていた、相手のターンを奪うのに役立つ各属性のブレイク(本作ではブロック)スキルの復活。ワンモアプレスの「ペルソナ」シリーズから弱点やクリティカルを防ぐ“ガード”の概念を導入。「真4F」からスキルの適正が入り、「世界樹の迷宮」のような状態異常の手ごわさやMPがカツカツなバランス。他にも、さまざまなアトラス作品のパッチワークのようなバトルシステムが美しくまとまり、歴代の強力なスキルやインチキじみた仕様をゲージがたまったときだけ使える新要素“マガツヒスキル”も良い感じ。

真・女神転生V 敵がマガツヒを集めると死の合図。アイテムでもガードでもなんでもいいので、なんとしてでも防ぐのです! ボスもザコも関係なくヤバイぞ

 敵が強力な技を使う前に「マガツヒを集める」という行動予告があるので、それが分かったうえでどう動くかという楽しみも増えました。プレスターンを生かせるように、大抵のボスに弱点が用意されているのも分かってますねー。プレスターンでもボスに弱点がなくて、プレイヤーだけが不利になるシリーズも結構あるんですよ。プレスターンは弱点を突いてナンボなので、ちゃんと用意されていて対策できる今回のバランスは絶妙。敵に弱点があっても、事前に対策しておかないとズタボロになります。でも理不尽じゃないのです。考えれば勝てる! はず。

 さらに、今回はレベル補正による救済も強めです。自分はHardでプレイしたあとにNormalでもバランスを確認したところ、よっぽど離れてるとまた別ですが、敵とのレベル差が少しあるくらいなら戦略次第でなんとかなるバランス。敵と同レベルになるかならないかくらいが一番楽しく、レベルが上回れば(アトラスファン的には)余裕です。このシリーズは戦闘中に会話で仲魔に加えた悪魔同士を合体し、より強い悪魔を作って対抗していくのが醍醐味(だいごみ)ですが、悪魔たちのレベル帯もバランスが取れています。ボスと同レベルか1つくらいレベルを上げるだけで、相手にムチャクチャ刺さる仲魔が作れるようになっているのです。頑張ってレベルを上げるか、戦略を練り直すか。それが苦手なら経験値をくれる御霊を狩りましょう。DLCがなくても大丈夫ですが、DLCを導入すればたくさん沸きます。ちょっとバランスが崩れてしまうので使いすぎには注意したいですが、バランスを練ったうえで最後はユーザーに委ねているのです。

真・女神転生V シンボルエンカウント&序盤から対策が用意されていることもあり、「真3」のDLCと違って御霊(経験値アイテムなどを落とす)が逃げだしても納得できました。いや、やっぱり逃げるな! 「アバチュ」のオモイカネよりはマシだとオモイカネ

 先ほど語った真面目さに通ずる部分でもあるのですが、本作では「真IV」「真IVF」であった面白会話スキルがなくなり、ボス戦中の会話は基本的に発生しません。戦闘が始まったら戦いに集中できます。昔のRPGみたいな割り切り方なのですが、これはこれで良いですね。もちろん、必殺の霊的国防兵器にカツアゲしたり、ボス戦の最中にスカウトしようとしたり、文句を言われたりするのも、それはそれで楽しかったけど。

 前作では敵からカツアゲする会話(脅し)を堪能できましたし、ボス戦の最中に突如始まる3択悪口合戦に打ち勝つと相手のプレスターンアイコンがパリーン! こちらにバフがかかって超有利! みたいな楽しさがありました。今回は、逆に敵から奇襲されるとカツアゲされます。因果応報だねチミ。マッカビーム(※2)されないだけマシだと思うしかないね。われわれは「真IV」でカツアゲしすぎたのだ。マッカを払うか、バックアタックか選ばされるのが、こんなに悩ましいなんて……! 

 このままだと延々とバトルの楽しさを語ってしまうのでやめておきますが、決して難しすぎるだけのゲームではありません。難易度選択はいつでもできます。Hardだけは下げると戻せませんが、それは歴代アトラスゲーで鍛えたわれわれ変態的メガテンファン向け。普通は、ノーマルかそれ以下でも大丈夫です。長年パズルのような隠しボス(※3)と戦い続け、種族がEVILで狂人になったわれわれは「なんでアナーキーのピアス(※4)がねえんだ!」「難易度、終末(※5)はないのか!」と今回のバランスでも物足りなくてもだえちゃうのですが、こっちまで来なくても大丈夫です。好きなように遊びましょう。個人的にはバトルの試行錯誤を楽しんでほしいのでNormalがいいかな。Casualでもいいですし、初めてのメガテンでも楽しく遊べます。この記事、初めて遊ぶ人読んでるのかな。

※2マッカビーム:ユーザーの努力とマッカを無に帰すスキル。南極の地に封印して、二度と復活しなくていい技、ナンバー1(当社調べ)。実際は印象ほどの被害はないが、不快感がすごいので考えた人のボーナス没収(マッカビーム)

※3パズルのような隠しボス:電卓で計算しないとす全て灰じんと化すような行動をしてきたり、あえて耐性に穴を用意しないと戦う土俵にすら立てなかったり、一時期のアトラスには恐ろしい隠しボスがいた。今もいる

※4アナーキーのピアス:「真4F」の先着購入特典として用意されていたDLC。装備すると主人公の属性が全て弱点に変わる超重度のアトラスマニア向けアイテム。今から冷静に振り返ってみると、これが特典なのか!?

※5難易度終末:「真4F」のアップデートで追加された超高難易度。アトラスファンの中には、この難易度+アナーキーのピアスで地獄みたいな旅に出るバトルジャンキーも平然といるのが恐ろしい


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