世代交代を成功させた新時代の「メガテン」 仕事の連絡を絶って遊び続けた歴年のファンが「真・女神転生V」をガチでオススメ(3/3 ページ)
過去作への敬意も挑戦も兼ね備え、新たな境地も描いたシリーズ最高傑作!
メガテンシリーズのこれからを真っ向から描いたストーリー
※ここからは、公式のガイドラインの規制範囲である●●●●●の攻略後(ゲーム中のスクリーンショット撮影機能で撮影できる範囲)までのストーリーや思想に関するネタバレがあります
さて、ここからは気持ち悪いメガテンファン(私)が大歓喜。一般的には賛否もあるであろうストーリーについて語らせていただきたいと思います。最初に言ってしまうと、今回のゲームは廃墟の探索とサブクエスト。悪魔の育成を楽しむ方向性に大きく振られたゲームとなっており、メインのストーリーに関しては従来のシリーズと比べても描写が淡泊。周回すると、最初の方のどうでもいい日常会話に伏線が仕込んであったり、想像で補える部分はあるのですが、基本は魔界(ダアト)と化したトウキョウを駆け巡るのが大半です。合間、合間に人間同士の会話があるものの、描写としては少な目。いきなり廃墟にぶち込まれて「探索を楽しめ!」という作りで御座います。細かいことはいいんだ!
これは、作品ごとに人間の描き方が大きく異なるメガテンシリーズの特徴でもあります。ファンはどうしても初代「真・女神転生」のような(当時のハードで頑張って表現された)人間同士の友情やドラマを求めてしまうものですが、続編の「真・女神転生II」では友情よりもロウ社会での役割をこなす同僚ですし、「真・女神転生III」では、親友と呼べるほどではない友人たちとの冷たい関係が描かれていました。ナンバリングで最も人間同士のドラマが濃い「真4」「真4F」は、作品のテーマであるニュートラル(中立)から人間を描く必要があり、そのためにメガテンとしては異質なほど濃く描かれています。
では、今回のシナリオはどうかといわれると、人間自体はあくまでも舞台装置。より大枠の「既に最終戦争が終結した状態」から続くロウとカオスの戦いを描く中で、さらに従来のロウ、ニュートラル、カオス(LNC)3属性とは異なる、多様性や新自由主義的な価値観、全ての人間に宗教から離脱したうえでの善性と強さを求める無神論など、さまざまな示唆に富んだテーマを根底に置きつつ、探索することで考えられる作りになっているのです。それゆえに、サブクエストも従来のLNC(ロウ・ニュートラル・カオス)的な発想だけでは判断できない内容があり、ムリにLNCで考えると混乱しちゃうかも。まだ攻略本が出ていないので、どのような表記になるのかは分からないですし、便宜上はいつものアイコンくるくる(※6)があるので、恐らくLNCの属性で振り分けても問題なさそうですが……。大筋はLNCの最終戦争(から先の話)でありつつも、従来の属性だけでは捉えにくい節があるように感じています。
※6アイコンくるくる:メガテンシリーズでは、大マップでアイコンが回転する伝統が受け継がれている。回転する方向が固定された作品と変わる作品があり、変わる場合は回転の方向でLNCの属性が判別可能。外伝系の「デビルサバイバー」でも、ルート分岐後に回転の方向が変わる
公式Twitterでの悪魔解説や雑誌のコメントなど、関係者の発言を見ると長期開発でシナリオが変わっているようなのですが、恐らくコンセプトとしては最初から人の掘り下げはあまり考えていないように見えます。本来、メインでやるべき内容をサブクエストとして選べる仕様にしていたり、ストーリーの見せ方はバッサリと割り切られたもの。開発の事情もあるのでしょうが、これは探索に重きを置いた本作特有の意図的なスタイルなのでしょう。
割り切りが良すぎるのと、恐らくシナリオ変更の余波を受けたキャラもいることにはいるのですが……。無印(真シリーズ)のメガテンとして考えると大枠のテーマ自体は問題なく描かれていますし、弱い悪魔から大物まで生き生きと描かれた悪魔たちと、彼らがサブクエストなどで語る背景は大変私好みです。ちょっと、レトロゲーム的なスッキリ感。人間よりも悪魔(仲魔)に愛着を持たせる方向性なのが、メガテンらしいかも。むしろ、メガテンらしさに捕らわれ過ぎているかな? 「真3」から「真4」の中間くらいの描写でもいいのですよ?
とはいえ、これまでのメガテンからさらに踏み込んだ世界設定と、「真4F」での総括からの新たなメガテンをギャグや照れ、謎の少女へ逃げずに正面から描いてきたのは素直に評価できます。サブクエストやDLCですらだいぶクール(クエスト名でふざけたりはする)。人間をガッツリ描かなければならない「ペルソナ」シリーズと違って、冗舌なストーリーよりもゲームとしての体験に振る真シリーズの方向性はアリでしょう。「真3」との関連を思わせる要素(考察すると直接つながっているようにも見えて、逆につながっていないようにも見える)も、新規ユーザーが問題なく遊べるにおわせ程度。想像できる余地は与えつつ、過去作や神話の単語を好きな人が調べて「そういうことかな」と類推できる程度の使い方です。
メインストーリーはあえてアッサリと流し、その代わりに神話の登場人物や悪魔たちの悩みを聞くサブクエストや、ミマンのテキストで世界観を補完する。悪魔を中心に描きつつ、「アトラスは、過去の作品や精神性を覚えているのか?」と心配するファンに対して真摯な解答を見せ、新たな神話の再構築を逃げずにやってきたことが古参ファンとして素直にうれしいです。逆に、真面目すぎるくらい。
完全版や大型DLCでの掘り下げにも期待したくなる下地の良さ
個人的には100点中1000点くらいの無印で、前回の「真III」レビュー形式で1億点加点していくと10億点くらいなのですが、これはバカの点数付けなので置いておくとして……。メガテンシリーズの無印としても、最新のJ・RPGとしても下地はしっかり完成していて非常に面白い作品です。もうガチでオススメ。
ただ、完全版や続編で拡張できる要素があるのも事実ではあります。私としては十分ですが、一般的には少し薄いストーリーと思われてしまうかもしれません。キャラクターの掘り下げが物足りないと思う人や、人間ドラマに期待する人には思い入れが生まれにくいところも。ゲーム自体の挑戦的な作風に、今の時代に即したテーマと大枠の物語はとても好みなので、キャラクターの面で物足りないと思われてしまうのは少々もったいないですね。
しかし、このゲームの場合は「真4F」のように、終盤から分岐する続編は作りにくい形式にも見えます。どちらかと言えば、完全版というよりも今はやりの大型拡張DLCが良さそう。新たなエリアやミッションでキャラクターを補完すれば、より万人が受け入れやすいメガテンになるのではないでしょうか。万人に受けることが必ずしも正解かどうかは分かりませんが、商売ではあるので。アトラスの完全版は、割と“謎の少女”が出てきてストーリーをごっつく上書きしていく(そして上書きされたストーリーが、のちのスピンオフにおいての基準となる)ことが多いのですが、必要があるのなら出してもいいですからね。そうです。謎の少女が出ること自体は悪くないのです。最近は、だいぶ使われ方もうまくなりました。まれに、ドラゴンボールで例えると「心臓病の悟空にトドメを刺そうとしてくるアホなトランクス」みたいなズレ方をするときもあるのですが、まあ、アホな子もかわいいよね……。追加エンディング自体は、どれも悪くなかったから……。でも、追加BGMはちゃんと売ってください。追加BGMを! 作るなら! 配信で! ファンに! 売れ! 売れよぉぉぉ!!
私が抱く完全版への恐怖はともかく、本作はベースがとても好みでシナリオ自体も好きな描き方。ですが、今のままだとめっちゃくちゃドライなのも確かです。ベースは生かしつつ、エリアを増やして人間たちと一緒にミッションに挑むとか、ユヅル君を使って新たなエリアを探索するとか、ミヤズちゃんとユヅル君のエピソードが増えるとか、そういう方向性で拡張されると良いのかも。土居さんのコメントでオミットされていることが判明した、ハヤタロウの背中に乗って地形ギミックをぶっ飛ばすのもやってみたいかな。オソタロウじゃなくて、ハヤタロウなところを見せて!
もっとも、実は「真5」の展開に関しては全く心配していません。アトラスはユーザーの評判に敏感。「真4F」のように、完全版ではなく前作の不満点をつぶした続編を作ってくるところでもあるので、無印を遊びながら続編(もしくはDLC)を楽しみに待てるのですよ。アップデート自体も、割とかゆいところに手が届くので心配無用。かつて「真4」でカオスの重要拠点(※7)を木造アパートや長屋みたいな構造にして突っ込まれたせいか、続編の「真4F」ではもうバカみたいに広すぎるダンジョンを創り上げてしまい、迷子になったアトラスファンたちからやたらめったら言われていたのですが、それもすぐにアップデートされました。大幅にショートカットが増え、ていねいなガイドが入り、ユーザーフレンドリーに。まず、そんな広すぎるダンジョンを作らなければいいのでは……と思うかもしれませんが、アップデート前でも楽しかったですよ。とはいえ、極端から極端に走りがち。私は、そんなアトラスゲーが大好きです。
※7カオスの重要拠点:ネタバレなので具体名は避けるが、施設名と狭い空間を存分に生かした構造で、安いアパート感が出たダンジョン。ユーザーからいじられすぎたのか、「真4F」では名前が変わっていた。2階建てで塔を名乗る、バリアフリーな塔などもあった
最近出た「真・女神転生III NOCTURNE HD REMASTER」では、邪教の館やメニュー関連の動作が遅かったもののアップデートで改善。ユーザーの反応に対して敏感かつ的確な対処をしたので、心配ないと思います。「4(死)段階」だけはいまだに意味不明なのですが、アレは一体なんだったんだ……。
海外で大ヒットしてしまった究極最強J・RPGの「ペルソナ5」ですらも、無印の時点では(アトラスにも)納得がいっていないのだろうと思われる部分があり、そうした要素の掘り下げや道中の細かいテキストの変更。システムの改善と追加シナリオを付けた完全版「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」が出て、究極銀河無敵最強J・RPGとなりました。アトラスじゃなくてメサイヤみたいな褒め方になってきたな。個人的には、無印のシナリオ後半で「もう少しマトモな使い方ができたのでは……?」というキャラクターが、マトモではない使い方としての方向性を掘り下げてより面白くなっていたので、感心しながらバームクーヘン、じゃなくてアウフヘーベン……じゃなくて、パンケーキを食べつつ遊んだ記憶があります。
「真5」もキャラクターを重視する人たちのために、より詳しい掘り下げや解説があるといいかもしれません。わずかな情報をもとに、そういうことかと想像できるのも良い部分ではあるのですが。それから、アクションの軟化(個人的には問題ないので、パズルイージーやアクションセーフティーみたいな選択制が望ましい)などもあると良さそう。ダアトだけじゃなく、東京のほうもロケーションが増えるといいなー。そんな感じの拡張型DLCで補完してくれたら、一般的な90点が100点。個人的な1000点が1200点になると思います。そう、現時点でも客観的に見れば90点以上のRPG。私は、客観的に見る気などまったくないので100億点です(バカの点数)。もっと、みんなも好きなゲームの新作が出て、それが好みだったら軽率に500億点くらい付けて欲しい。私は、みんなの「好き」が見たいのです。
もちろん、これは今後の要望に過ぎません。現時点でも悪魔を育成して探索を楽しむ作品としては十分に魅力的。シビアなバランスのバトルに挑む現代的なRPGとして、新規ユーザーにも遊んでほしいタイトルです。メガテンファンとしても新しさと過去作への敬意、そして、今のアトラスとしてのチャレンジ精神を感じ、久々に良い物を堪能させていただきました。初週の売上は、日本だけでもファミ通によると14万本のようですが、全人類……とは言わなくても、70億人が私のようにパッケージとDL版の2本ずつ買って140億本売れるべきゲームなので、みなさん遊んでください。そして、アトラスさん。「真5」ベースの拡張版や、「真5」の素材を使った新作もお願いします! それから、過去の良質なIPも復活してくれるとうれしいかなって……。このシステムやグラフィックで、リメークや新作を遊んでみたいですよね。例えば、ラストバイブルとデビルチルドレンと葛葉ライドウとデビルサバイバーとアバタールチューナーと魔剣Xと(キリがないので省略)。
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