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原作脱落組による「劇場版 呪術廻戦 0」レビュー “「呪術」初心者”でも楽しめるこの冬一番の話題作(1/3 ページ)

花澤香菜のヤンデレボイスもすごかった。

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 「劇場版 呪術廻戦 0」が12月24日から公開されている。「呪術廻戦」の原作はテレビアニメ版のハイクオリティーぶりもあって爆発的な人気を呼び、シリーズ累計発行部数が12月25日発売の18巻をもって6000万部を突破。「鬼滅の刃」に次ぐ社会現象として注目を集めており、シリーズの原点にして前日譚を描く本劇場版では、あらゆる興行記録を打ち破った「劇場版 鬼滅の刃」にどれほど迫れるかにも注目が集まっている。

「劇場版 呪術廻戦 0」予告編

 本作は予備知識がなくとも問題なく見られる内容になっており、「友達や家族に誘われたけどどうしよう?」と迷っている方にもおすすめだ。正直に申し上げると、筆者は後述する理由で「呪術廻戦」のマンガやテレビアニメ版にあまりハマれなかったのだが、今回の劇場版は楽しめた。

 少しだけ怖いシーンはあるものの、直接的な残酷描写は控えめで、映倫によるレーティングも「全年齢指定」。作中のテロップにも漢字ルビが振られており、よほど小さい子でなければお子さん連れで行ってもおそらく大丈夫だろう。また、エンドロール後におまけがあるので、気が早い方もぜひ最後まで席に座っておいてほしい。

 以下、原作をよく知らない方、「呪術初心者」にこそおすすめの理由を解説していこう。核心的なネタバレには触れていないつもりだが、あらすじ紹介に加えて軽微なネタバレをしている点はご容赦願いたい。

前日譚という初心者への親切設計

 まず「劇場版 呪術廻戦 0」はアニメ作品としてのクオリティーが高い。筆者は映画本編を見た後に原作を読んだのだが、とても丁寧な映像化に感服した。

 原作は現在連載中の『呪術廻戦』以前に、『東京都立呪術高等専門学校』として2017年に『ジャンプGIGA』紙上で掲載された、芥見下々の連載デビュー作。後に『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』として全1巻が発売。連載中の『呪術廻戦』を本編とするなら、その前日譚ともいえる内容だ。

 原作の『呪術廻戦 0』は全4話と短いため、少ないページ数で情報を詰め込んでいる印象があったのだが、今回の劇場版ではコマの前後に当たる行間部分にも細かい描写が追加されたり、シーンごとに独自の演出がされていたりする(筆者は特に乙骨の同級生・禪院真希が自らの過去を明かすシーンにグッと来た)。よく動くアニメーション、迫力のアクション描写、劇場でこそ映える音響、そして豪華声優陣の熱演により、テレビ版よりさらに「こってり」と楽しめるようになっていたのだ。

 もちろん、物語そのものは原作からはほとんど変わっていない。だが(だからこそ)、「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」がそうであったように、マンガで読んだ優れたエピソードを、ハイクオリティーのアニメで、余計な改変をする事なく「追想」できるのは、ファンにとって至福の体験だろう。

 もちろん、全1巻で完結している原作だけあって、1本の映画作品として起承転結もしっかりあるからこそ、一見さんにも入り込みやすい内容にもなっている。

少し明るい碇シンジがブラックなホグワーツに入学する話?

 あらためて本作のあらすじを見ていこう。「呪術廻戦」は「呪い」と戦う者たちの物語だ。今回の「劇場版 呪術廻戦 0」では、幼なじみの女の子の呪霊に取り憑かれた少年・乙骨憂太が、「呪術師」を育成する学校に入学し、その女の子の呪いを解くために奮闘する物語が紡がれていく。

 乱暴な言い方をすれば「ちょっとだけ社交的でポジティブ思考もあるシンジくんが、かなりブラックで実践を重視するホグワーツに入学する」ような話である。

 何しろ主人公の乙骨の声を演じるのは「エヴァンゲリオン」シリーズの碇シンジ役でおなじみの緒方恵美であり、内向的で自己の存在理由などを自問自答をする性格もかなり似ている。

 そして、呪われた宿命を負う少年が、宿舎付きの学校に入って修行を重ね、死の危険と隣合わせの試練をくぐり抜けながら友人らと力を合わせて強くなっていく様は「ハリー・ポッター」のようでもある。

 「劇場版 呪術廻戦 0」レビュー 「呪術初心者」にこそおすすめの理由がある 性格も声も碇シンジを連想する主人公の乙骨憂太/画像は予告編より

愛の確かさと危険性の両面を描く物語

 本作の設定でユニークなのは、なんといっても乙骨に取り付いている呪霊の存在だろう。幼い頃に交通事故で命を落とした女の子・祈本里香(通称リカちゃん)は、いつ暴走するか分からない時限爆弾のようだ。

 見た目は恐ろしい化け物のようなのだが、そんな彼女であっても主人公の乙骨は優しく慈しむように接していく。この「愛」の関係性は、担任の五条先生の「愛ほど歪んだ愛情はないよ」というセリフが示唆する通り、大きな危うさをはらんでいる。

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