11:ぶりっ子的セリフすらかわいい土屋太鳳
もちろん女性キャラクターも最高に魅力的である。そのエントリーNo.1は女子高生AIの「シオン」。まるで子どものような無邪気さがあり、「いいわいいわピンチっぽい」といったぶりっ子なセリフもかわいいので反則である。
土屋太鳳によるAIっぽい無機質さと、普通の女の子としてのキュートさの両方を感じさせる演技はもはや神がかり。その見事という言葉でも足りない歌声も含めて、過去最高の土屋太鳳が爆誕していた。
12:健気な女の子の苦しみが胸に迫る
超魅力的な女の子のエントリーNo.2は「サトミ」。彼女は夜遅くまで仕事をしている母を気遣い、学校でいじめられているロボットを助け、その他にも周りのために自分なりの「最善」を探そうとしている、しっかりもので健気な女の子だ。
だからこそ、彼女がひとりぼっちになってしまっている現状、その理由が明かされる様が胸に迫ってくるし、心から彼女の幸せを願いたくなる。福原遥のおとなしそうな普段の声、それとギャップのある絶望をダイレクトに表現した演技も素晴らしい。
13:気が強い女の子好き勢の心を鷲掴み
超魅力的な女の子のエントリーNo.3は「アヤ」。彼女は初めこそ、サトミに辛くあたるイジワルな女の子として登場するのだが、実際は「本音を言いすぎてしまう」だけで、本質的には友だち想いで優しい性格。だからこそ、キツい言い方を反省するような面も見えてきて、そこがまた愛おしくてたまらない。 小松未可子の演技も、気の強い女の子好き勢の心を鷲掴みにする。
加えて、本作は前述してきた超魅力的なキャラたちの「関係性萌え」も半端ないため、それぞれの掛け合いやちょっとしたセリフにも「あっ好き大好きお前らもう結婚すればいいのに」と尊さが五臓六腑に染み渡ることだろう。
14:ディズニーファンへの祝福
本作はディズニー作品、その中でも「アナと雪の女王」などのミュージカル部分が好きだった方にも是が非でも見てほしいと願う。詳しくはネタバレになるので控えておくが、本作はディズニー作品へのリスペクトが多大に込められているだけでなく、「ディズニーが好きな人」への祝福とも取れる構造があるのだ。
15:「幸せ」をめぐる寓話
本作は「幸せとは何か?」という究極的かつ難しいテーマを多面的に描き切っている。それは「AIは幸せを理解できるのか?」というSF的な問いかけにも絡んでおり、「寓話」「教訓を与える物語」としての説得力も担保しているのだ。
16:明るい未来を描いたSF
本作がSFとして優れている理由が、もうひとつ。それは「AIのポジティブな可能性」を見つめた作品であるためだ。人間との対立や反乱などを通してAIをネガティブに描く作品ももちろん良いのだが、本作では(前述したホラー描写も交えつつ)あくまでAIが今後かけがえのない存在となっていく、その未来を見据えたような内容もあったのだ。
17:2回目からが本番
本作には「物語を知った上で見返すと、初めから泣けて仕方がない」という物語の構造がある。筆者は1回目を見た時は「年間ベスト候補のただの大傑作だな」という感想だったが、2回目は前述の通りオープニングから号泣し、4回目の鑑賞ではすでに「世界で一番好きな映画。オールタイムベスト更新。全人類見てないとおかしい。まだ対象者の100万分の1くらいしか見られてないぞ」となっていた。
レンタルでこれから見られる方は幸福だ。すぐに2回目を立て続けに鑑賞できるのだから。
18:何度も見ても新しい発見がある
本作はディテールの作り込みも半端ではない。初見で「あれってどういうこと?」と思ったツッコミどころでさえ、再見することで「なるほどこういうことかもしれない」と補完できるようにもなっており、ファンによる考察も盛んに行われている。
筆者もまた5回目、6回目でやっと気付き、涙してしまうシーンがあった。複数回見ることはもはや義務教育である。
19:全ての要素が見事に融合したからこその大傑作
この「アイの歌声を聴かせて」が大傑作である理由、それは青春群像劇やミュージカルやコメディーやホラーといった要素がお互いを補うように絡み合い、全てを「必然」と思わせる手腕が何よりも大きい。
「イヴの時間」で「人間とAIが当たり前に暮らす世界」を描いた吉浦康裕監督。「SK∞ エスケーエイト」「プリンセス・プリンシパル」などで構成力やキャラクターの関係性描写に定評のある脚本家の大河内一楼。高橋諒作曲・編曲×松井洋平作詞の何度でも聴きたくなる楽曲の数々。J.C.STAFFによる繊細で時にダイナミックな作画……などなど、作り手が並々ならぬ労力を注ぎ、それぞれの作家性も最大限にプラスに働いているからこそ、最高クラスのクオリティーの作品が生まれたのだろう。
20:魅力が伝わりにくいから、いいからもう見てくれ
「アイの歌声を聴かせて」のたった1つの欠点は「魅力を伝えにくい」ことだ。先ほどは導入部から面白いと書いたが、俯瞰してみると極めて小さな範囲で起こる物語ではあるし、劇中のいちばんの感動はネタバレ厳禁なので伝えることができなかったりもする。公開当初の観客動員で苦戦してしまったのも、本質的な作品の素晴らしさを多くの人に訴求できなかったためだろう。
だからこそ、もういいから、まずは見てほしい。初めこそ「ポンコツに思えるAI」を筆頭に「えっ?」と思うところもあるかもしれないが、最後まで見れば「全てにおいてまったく無駄がない」ことが、きっと分かるだろうから。
これで見てくれなかったら、いったいどうしたらいいんだ。ここまで老若男女におすすめできる、笑って泣けて何度でも楽しめる映画は、他にないというのに。だからこそ、もう一度言います。今すぐ、各種配信サービスでのレンタル配信情報を確認して、見てください! お願いします!
なお、川崎の映画館「チネチッタ」では岩浪美和音響監督が監修を務めた、特別音響システム「LIVEZOUND」による「アイの歌声が良く聴こえるかも音」再上映が3月17日(木)まで行われている。こちらは再調整により、昨年上映時とは異なる新音響になっているとのこと。劇場で見れば、さらなる感動があることは言うまでもない。
舞台のモチーフになった佐渡島、そこでの唯一の映画館「ガシマシネマ」でも4月1日まで上映中だ(月曜日と火曜日は定休日)。「聖地巡礼」がてら行ってみてもいいだろう。
さらに、3月14日20時からは、本作の同時視聴イベントも行われる。筆者もナビゲーターとして、イベント中もっと楽しむための考察やトリビアをTwitterでつぶやいていく予定だ。
まだ足りなかった? いや、きっと伝わったはずだ。しつこいようだが、今すぐ「アイの歌声を聴かせて」をレンタルして見ましょう。何度も言うように、伝えたいことはそれで全てだ。
複数回の鑑賞を推奨してきたが、1回見ただけで、高い満足感が得られる可能性は極めて高い。今までに類を見ないほどに、愛されている作品であることはもう証明済みなのだから。あなたの生涯にわたっての、宝物のような映画になることを、心から願っている。見た人が、幸せになれますように。
(ヒナタカ)
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