“マックス”は死んでも“メタル”は死なず 「メタルマックス ワイルドウェスト」の開発中止と「メタルサーガ 〜叛逆ノ狼火〜」への期待(3/6 ページ)
30周年を迎えた直後に開発中止となった「メタルマックス」最新作をしのんで。
沈黙を破って最高傑作を創造し、炎上も経験したナンバリング
このシリーズは、もう二度と家庭用機に戻ってこないかもしれないな……とガッカリしていた2010年。商標の問題を解決し、ついにあの「メタルマックス」シリーズが奇跡の復活を遂げました! なんと、ナンバリング最新作「メタルマックス3」が17年ぶりに発売!!
パッケージやキャラクターデザインは、それまでの山本貴嗣氏から新たに廣岡政樹氏が手掛けており、新世代のメタルマックスを感じさせる仕上がりになっていました。正直に書くと「鋼の季節」でやらかしたフルタッチオペレーションで不安もあったのですが、蓋を開けて見れば名作と言って差し支えない作品。高めなエンカウント率や、一度改造したら戻せない不可逆式の改造(鋼と同じだったはず)といった細かい問題点は抱えていたものの、気にならないレベル。自由度が高く、絶望的な状況下でとぼけた人々が暮らす世界の雰囲気もあり、某竜退治RPGのメタル的なパロディーとしてもパーティ編成の自由度にもつながったルイ……ヌッカの酒場の導入など、時代的な進化もバッチリ。まさに「メタルマックス」そのものだったんですよ。ここで、ついにシリーズは復活したのです! 個人的にも、ここからの「メタルマックス2 リローデッド」の流れは黄金期の時代と言っていいでしょう。
その黄金期のなかの黄金と呼べるタイトルが「メタルマックス2 リローデッド」。SFCの「メタルマックス2」をDSでリメイクした「メタルマックス2 リローデッド」は、新要素の多さと集大成と言うべきシステムの洗練度。これを最高傑作として挙げる人もいまだに多く、シリーズとしてもRPGとして見ても傑作です。DSのRPG史に残るレベルのタイトルなのは間違いない出来でした。宣伝が不十分だったのか、それとも出した時期が悪かったのか。公表されている数字よりも、もっと売れるべき傑作でした。
しかし、問題はここから。恐らくゲームの出来不出来と無関係の方向で荒れてしまったのが次のナンバリング「メタルマックス4 月光のディーヴァ」です。この作品、RPGとして客観的な目線で見れば、シリーズのなかでも1、2を争う名作だと思います。メインストーリーにも力が入っており、戦車の改造や仲間編成の自由度も比較的高め。システムもストーリーも「メタルマックス」としても、そもそも3DSのRPGとしても文句の付けどころがありません。ミニゲームの削除など、「メタルマックス2 リローデッド」のほうにしかない要素もあるので、2本合わせて現状の最高傑作メタルマックスとしてオススメできます。
そう、内容自体は問題なかったんですよ……。問題は、当時炎上してしまったゲーム中のアニメ絵やパッケージデザインといった見栄えと宣伝。キャラクターデザインが再び山本貴嗣氏に戻り、往年のファンに応えるものとなっていたのですが、ファン以外には衝撃が強いパッケージデザインは賛否を呼びました。「人間バイクに変形した女性キャラに、上からまたがる主人公」という斬新すぎるパッケージデザインと、シュールとしか言えないバイクで移動するアニメのインパクトは、あまりにも強烈だったのです。まず、初報でイメージイラストとしてこの絵がドンとお出しされて、ファン以外はドン引き。なぜ、コレを通してしまったのか……。自分は過去の「メタルマックス」から山本氏のデザインも好きなのですが、この強烈すぎるパッケージデザインでOKが出てしまうのは今のメタルシリーズが抱える問題点でもあり、「3」「2R」、後述する「ゼノ」に「リボーン」と、素晴らしいキャラクターデザインをしてもらってもすぐに変えてしまう(変えるべきところではない)ところも、やはり客観視ができていない部分だと思っています。山本貴嗣氏のデザインが悪いのではなく、「4」の場合はリバーシブルジャケットの戦車を全面に出した絵か、限定版のパッケージをまず見せるべきだったのではないでしょうか。
実際にゲームを遊ぶと人間バイクのアニメが入るシーンは序盤も序盤。ほぼ思い出せないくらいなのですが……。しかしながら、悪いインパクトが絶大すぎたためか、発表時からしばらく賛否両論の議論が巻き起こりました。というか、遊んでもいないのに否定意見ばかり。自分は「メタルマックスらしいな〜」と苦笑いしながらも、初報のファミ通の記事をのんきに読んでいたので、そこからの荒れ方には心底驚いた記憶があります。
実際に遊んでみると文句なしの傑作といえるのですが、当時は受け入れられにくかったDLC多めの展開も相まって悪い印象を持たれてしまったのは確かです。「メタルマックス4」は最高傑作と言って良い内容でありながらも、そうした外部の事情でなかなか正統な評価をされないナンバリングになっていました。実際に遊んでみれば面白いゲームなので、今では高評価になってプレミア化。ただし、これが売れなかった理由を当時遊んでもらえなかったユーザーに求めてしまうのだとしたら、それは大きな間違いだと書いておきます。ここから始まる売る側と遊ぶ側のボタンの掛け違いこそが、現在に至る状況を生み出してしまっていると1ユーザーとしては感じていました。作品そのものは本当に良かったのです。それでも「作品の良さだけでは売れない」。宣伝と露出の難しさを感じたタイトルでした。
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